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ハンター?
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「どちらから来たのですか? 初めての来店ですよね? お客さん美男だから一度みたら覚えているはずだもの」
直接的過ぎて回答に困る。下町の女性が全員こうだとは思わないけれど、若干引いている自分がいる。
「ははっ。ありがとうございます、良かったらお姉さんも飲みませんか? お目付け役がいるだけで愛想もありませんので、一杯付き合ってください」
酒を飲ませ、情報を引き出す作戦。
「えー。いいんですか!」
「もちろんです。何がお好きですか?」
「えっと、私あまりお酒は強くないけれど同じ赤ワインをいただいてもいい?」
さらにボトルを追加して一緒に飲むことにした。僕はあまり飲まずに酒はマイヤー卿が引き受けてくれた。僕は酒にもこういう場所にも慣れてはいない。
「見れば見るほど美男ね。もう惚れちゃうわ。ううん、惚れたかも」
トロン。とした目つきに見せかけて、獲物を狙う目をしていた。一気に鳥肌が立った。
「坊ちゃん、隅に置けませんね。きれいな女性から一目惚れをされるなんて!」
「社交辞令でしょうけれど嬉しいものですね。直接女性から褒められることなんてありませんから」
嬉しいことは1つもないのだけど、ここはそう言っておこう。いい感じにワインが回ってきたようで、他愛もない話をしていたら聞いてもいない事を話してくれた。
「お兄さんたち貴族に知り合いがいる? お店の常連さんが貴族の屋敷で勤めていたんだけど、ちょっとしたことでクビになっちゃったんだって!」
「貴族に知り合いはいますがいろんなタイプがいますし、何があったかは分かりませんが罰を受けなかっただけましだったのでは? 中には鞭打ちをするような過激派もいますよ」
ちょっとした事で使用人に鞭を打つ家だってある。うちはしないし、キャシーが聞いたら怖がるだろう。
「でもクビってひどくない? 給料も良かったみたいだし、ボーナスを貰った時にプレゼントをしてくれたり、高いボトルを入れてくれたりしたのよ。その常連さんが言うには自分は重宝されているから給料もいいって言ってたの。謝ったのに虫のいどころが悪くて首にされた。みたいなことを言っていたわ」
自分のいいように解釈しているのか、見栄なのか。確かにサムには悪くない給料を支払っていた。しかしボーナスとなると話は別だ。給料が良い代わりにボーナスの支給はしない契約になっていた。となるとそのボーナスはどこから捻出されたものなのか。また問題が出てきた。
「それは災難でしたね。その人はいま何をしているのですか?」
「喧嘩をしたとかで牢屋にいるんじゃないかしら。金払いが良かったから残念がっている店の子もいるわ。色んな子に手を出していたみたいだし!」
語尾を強めて、ぐびっとワインを飲み干した。
「それよりお兄さん今フリーなの? 良かったらまた飲みに来てほしいな」
暑いと言って上着を脱ぎ、胸の谷間を強調してくるが、心は無。早く帰りたいとさえ思ってきた。
「そうですね。こうやって飲みに出るのも悪くないですね。素敵な出会いも……その、ありそうですし?」
「そうでしょ! また来てよ! 料理も美味しいでしょう? 人気があるのよ。食材を仕入れている店は貴族の邸にも出入りをしているの」
「貴族の邸と同じ食材を使っているのですか? このムール貝、新鮮で美味しいです」
うちでは貝の料理が出てくることはあまりない。キャシーは貝を食べると調子が悪くなる。でもたまに食べたいというから皆が頭を悩ませる。
「貴族の邸に御用聞きに行って買ってもらうって言っていたわ」
「顔の広い方なんですね」
「金に弱いところがあるのは良くないところだけど良い人よ。ちょっとお願いしたら聞いてくれる時もあるもの。それよりこの後二人で飲みに行かない? 私の部屋……なんてどう?」
ウィンクをして手を握られた。
「お酒が入ってない時の方が僕としては嬉しいですね」
金に釣られるところがあるとは悪くない情報だ。それにしても部屋で二人……考えただけでゾワっとした。獲物を狙うハンターの目だ! 多めのチップを渡してまた来ます。と伝え店を出た。
「ウブな坊ちゃん感が出ていて良かったですよ」
ウブというか、苦手なタイプの女性だから引いていただけだけど、こちらから近付いているのだから、あからさまに避けるわけにもいかない。店を出た事にホッと胸を撫で下ろし本題に入る。
「この店に食品を卸している業者と我が家の業者が同じという事ですね?」
「そうです。どうしますか、坊ちゃん?」
調べがついていたのか。
「金に釣られるところがある。と証言がありますから金で釣るのが良いでしょうが、話を聞く限り業者の男は女好きなのではないですか? 彼女のお願いを聞くくらいですし、彼女がそんなに金を払うとは思えないんですよね……」
「そうだと思いますよ。坊ちゃんは中々筋がいいです。所々にヒントが隠されているのです。お酒を飲むとつい口が軽くなってしまいますからね。何か感じ取れる事もあったと思いますが、単独行動はダメですよ? 次はどうしますか?」
飲み屋に通って彼女と付き合って口を割らすのが一番の近道……絶対しないけど!
「業者に金を渡しますか……貴族の家の話になるので口を割らないような気もしますし脅す行為も視野に入れないといけませんね」
直接的過ぎて回答に困る。下町の女性が全員こうだとは思わないけれど、若干引いている自分がいる。
「ははっ。ありがとうございます、良かったらお姉さんも飲みませんか? お目付け役がいるだけで愛想もありませんので、一杯付き合ってください」
酒を飲ませ、情報を引き出す作戦。
「えー。いいんですか!」
「もちろんです。何がお好きですか?」
「えっと、私あまりお酒は強くないけれど同じ赤ワインをいただいてもいい?」
さらにボトルを追加して一緒に飲むことにした。僕はあまり飲まずに酒はマイヤー卿が引き受けてくれた。僕は酒にもこういう場所にも慣れてはいない。
「見れば見るほど美男ね。もう惚れちゃうわ。ううん、惚れたかも」
トロン。とした目つきに見せかけて、獲物を狙う目をしていた。一気に鳥肌が立った。
「坊ちゃん、隅に置けませんね。きれいな女性から一目惚れをされるなんて!」
「社交辞令でしょうけれど嬉しいものですね。直接女性から褒められることなんてありませんから」
嬉しいことは1つもないのだけど、ここはそう言っておこう。いい感じにワインが回ってきたようで、他愛もない話をしていたら聞いてもいない事を話してくれた。
「お兄さんたち貴族に知り合いがいる? お店の常連さんが貴族の屋敷で勤めていたんだけど、ちょっとしたことでクビになっちゃったんだって!」
「貴族に知り合いはいますがいろんなタイプがいますし、何があったかは分かりませんが罰を受けなかっただけましだったのでは? 中には鞭打ちをするような過激派もいますよ」
ちょっとした事で使用人に鞭を打つ家だってある。うちはしないし、キャシーが聞いたら怖がるだろう。
「でもクビってひどくない? 給料も良かったみたいだし、ボーナスを貰った時にプレゼントをしてくれたり、高いボトルを入れてくれたりしたのよ。その常連さんが言うには自分は重宝されているから給料もいいって言ってたの。謝ったのに虫のいどころが悪くて首にされた。みたいなことを言っていたわ」
自分のいいように解釈しているのか、見栄なのか。確かにサムには悪くない給料を支払っていた。しかしボーナスとなると話は別だ。給料が良い代わりにボーナスの支給はしない契約になっていた。となるとそのボーナスはどこから捻出されたものなのか。また問題が出てきた。
「それは災難でしたね。その人はいま何をしているのですか?」
「喧嘩をしたとかで牢屋にいるんじゃないかしら。金払いが良かったから残念がっている店の子もいるわ。色んな子に手を出していたみたいだし!」
語尾を強めて、ぐびっとワインを飲み干した。
「それよりお兄さん今フリーなの? 良かったらまた飲みに来てほしいな」
暑いと言って上着を脱ぎ、胸の谷間を強調してくるが、心は無。早く帰りたいとさえ思ってきた。
「そうですね。こうやって飲みに出るのも悪くないですね。素敵な出会いも……その、ありそうですし?」
「そうでしょ! また来てよ! 料理も美味しいでしょう? 人気があるのよ。食材を仕入れている店は貴族の邸にも出入りをしているの」
「貴族の邸と同じ食材を使っているのですか? このムール貝、新鮮で美味しいです」
うちでは貝の料理が出てくることはあまりない。キャシーは貝を食べると調子が悪くなる。でもたまに食べたいというから皆が頭を悩ませる。
「貴族の邸に御用聞きに行って買ってもらうって言っていたわ」
「顔の広い方なんですね」
「金に弱いところがあるのは良くないところだけど良い人よ。ちょっとお願いしたら聞いてくれる時もあるもの。それよりこの後二人で飲みに行かない? 私の部屋……なんてどう?」
ウィンクをして手を握られた。
「お酒が入ってない時の方が僕としては嬉しいですね」
金に釣られるところがあるとは悪くない情報だ。それにしても部屋で二人……考えただけでゾワっとした。獲物を狙うハンターの目だ! 多めのチップを渡してまた来ます。と伝え店を出た。
「ウブな坊ちゃん感が出ていて良かったですよ」
ウブというか、苦手なタイプの女性だから引いていただけだけど、こちらから近付いているのだから、あからさまに避けるわけにもいかない。店を出た事にホッと胸を撫で下ろし本題に入る。
「この店に食品を卸している業者と我が家の業者が同じという事ですね?」
「そうです。どうしますか、坊ちゃん?」
調べがついていたのか。
「金に釣られるところがある。と証言がありますから金で釣るのが良いでしょうが、話を聞く限り業者の男は女好きなのではないですか? 彼女のお願いを聞くくらいですし、彼女がそんなに金を払うとは思えないんですよね……」
「そうだと思いますよ。坊ちゃんは中々筋がいいです。所々にヒントが隠されているのです。お酒を飲むとつい口が軽くなってしまいますからね。何か感じ取れる事もあったと思いますが、単独行動はダメですよ? 次はどうしますか?」
飲み屋に通って彼女と付き合って口を割らすのが一番の近道……絶対しないけど!
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