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謹慎があけた
しおりを挟むいつもなら部屋から出たらダメとかお菓子禁止なんて言われても軽く受け流していたし結局みんな甘いから“口だけだよね~”なんて思っていたけれど、今回は重く受け止めたのよ。危ないところを助けてもらったマイヤーさんには感謝しかない。マイヤーさんはうちで働くことになったみたいだし顔を合わせる事もあるよね。色々考えることはあるけれど、殿下に連れていかれそうになった時アレクの顔を思い出した。いつもならさっと助けに来てくれるのにって。なんでいないの? なんて。はぁ。アレク今頃何してるんだろう。アレクが謹慎だなんて初めてのこと。お父様もお母様も大変よね、こんな面倒な娘に育ってしまってごめんなさい。今回の件で猛省していたら一週間はあっという間だった。部屋から出ていいと許可を貰えたんだけど、元気が出ないのよ。
「お父様、お母様……心配かけてしまってごめんなさい。本当にごめん」
考えたのよ、すごく。殿下の事早く忘れたい……
「キャシー、分かったのならもう良いわ。反省した事は目に見えて分かるから。食欲が無かったみたいだけどちゃんと食事は取らなきゃダメよ。今日はキャシーの好きなものを用意させるから」
「こんなに痩せて! おい。今すぐに街へ行ってキャシーの好きな菓子を買って来てくれ!」
お母様もお父様も相変わらず優しかった。その後マイヤーさんを紹介されて庭師として働きながら出歩く時は護衛もしてくれるんだって。ガタイが良いのは前職では騎士をしていたから! あ、確かに剣帯の記憶があるわ……あの時私は小さかったからすっごく大きく思っていたわ。声も大きいし怖かったけれど今は全然違うし怖くない。詳しくは分からないけれど、マイヤーさんは色んな仕事が出来るようでなんでも相談に乗ってくれるらしいの。食事までの間にマイヤーさんと話をしていた。
「なんでも相談して良いんですか?」
「えぇ、どうぞ。守秘義務はしっかりとしている方ですよ」
守秘義務。堅いわ……
「……人を好きになるってどんな感じですか、よく分からなくて」
アレクの事好きだけど私の好きとアレクの好きは同じなのかな……
「成程……それは厄介な問題です」
「ですよね」
「お嬢様が難しく考えているから厄介なんですよ。現時点で好きかそうじゃないかで分類してみては?」
もうしてるって! 好きなのよ。
「不服そうな顔ですね。好きなんでしょうね、その相手の方を。その方とずっと一緒にいたいと思うなら簡潔でしょう? どういう形であれ一緒にいたいと思うならそれが答えじゃないですか? 嫌な事を思い出しますが殿下に連れて行かれた時は嫌な顔をしていましたよ? その時誰の顔を思い出しましたか? 誰に助けを求めたかったですか?」
……アレクの顔を思い出した。
「思い当たる節がありそうですね? 一番会いたい人の顔を思い浮かべたんですよ。それが答えだと私は思います」
そうなのかな……そうかも。
「まさかお嬢様の恋愛相談まで受けることになるとは思いませんでしたが、私も新しい生活が始まります。これからよろしくお願いしますね、お嬢様」
「はい。こちらこそよろしくお願い致します」
マイヤーさんと話しているとミルクがとことことやって来た。
「お嬢様の猫ちゃんですか?」
「はい。ミルクといいます。ミルクマイヤーさんにご挨拶は?」
ミルクを抱っこしてマイヤーさんに見せた。するとにゃあ。と鳴いた。ミルクが素直に返事をするなんて! アレクにはふんっ。ってするのに。
「ミルク様どうぞよろしくお願い致します」
「ミルク様って……マイヤーさん、ミルクが恐縮してしまいますよ。気軽に声かけて下さいね。私の事も名前で呼んでください」
マイヤーさんは強面なのに物腰は柔らかい。
「お嬢様の事はお嬢様と呼ばせてもらいます。理由は名前で呼ぶとクセになり、外で呼んでしまっては困ります。お嬢様の名前を聞かせるわけにはいきません」
どういうことかというと、全く知らない第三者に名前を知られて知り合いのように声をかけられたら困るし、良い意味でも悪い意味でも知らないところで勝手に名前を使われたら困るから。呼んで良い場所とそうじゃない場所がある。
「マイヤーさんは子供の頃に見た時は大きくて怖い印象でしたが今は違いますね。あの時は泣いてしまってすみませんでした」
「あぁ。いえいえこちらこそ。大きな声を出してすみませんでした。まさかあの時のお嬢さんにお仕えすることになるとは思いませんでした。あの時は騎士をしていていつも神経を尖らせていたので怖がらせてしまいましたね」
助けてくれた人に感謝しなきゃいけないのに泣いて困らせて勝手に男性が苦手になった。これも黒歴史ね! 誤解は解けたからこれから良い関係が築ければ良いな。
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