34 / 46
ローハン殿下の変化
しおりを挟む「キャサリン嬢、私と婚約しないか?!」
……はい?
「今のキャサリン嬢なら私の相手として相応しく望ましい。キャサリン嬢と婚約したら私は婿に行かなくて済むんだ。もし婚約が出来なくとも僕のそばにいて欲しい」
「……あの、婚約は出来ませんよ? 殿下にはお相手がいると聞いていますので相手の家に申し訳ありませんもの」
「キャサリン嬢の慎ましい性格は変わってないね。お茶会を開催すると私と会話をするために必ず順番を守っていたよね」
「あの、それは当然のことなので性格は関係ないと思いますよ? 他の候補の方達もそうでしたもの」
「そうだね、他の令嬢達も控えめで私を取り囲んでいても強引に話をしたりはしなかった」
殿下が言っている意味が分からないわ……そろそろお暇させて貰わなきゃ……
「何がありましたかは存じ上げませんが、お話がないようなら、」
「話の途中だよ。婚約は出来ないのなら私の側にいて欲しい。だめかい?」
婚約はダメ、側にいる? 意味が分からないわ。
「意味が分かりかねますの。婚約がダメなのにお側にいる……」
「そうだ。僕の恋人として側にいて欲しい!」
「? 恋人ですか? 殿下にはすでにセリアさんという恋人がいますよね?」
セリアさんとは別れたなどと聞いているけれど好きになった人とそう簡単に別れられるわけがないもの。きっと心の奥では繋がっているわよ。あんなに仲睦まじかったのだもの。
「セリアか……もう過去の話だよ。セリアは平民だよ? 私の相手に相応しくなかったんだ。それに仲良くはしていたけれど恋人という関係ではなかった。学園に入り平民との交流を深め市民の生活を知ろうとしていただけなのに周りが騒ぎ出しただけだよ。貴族が多い学園だから仲間はずれになってはいけないと思っての行動だったが浅はかに見えてしまったようだ。そこは反省せざるを得ないね」
嘘だと分かる。自分の都合の良いように考えている。こう言えば私が殿下を信用すると思っているのだわ。やっぱりバカにしているのだわ。前までの私なら殿下の意見に逆らう事はしなかった。
「殿下は学園でセリアさんといた時に敵を作らない方が賢明だと言ってきました。私は殿下の敵なのだと思って悲しくなりました。セリアさんと仲睦まじくされていたのでその姿を見て邪魔をしてはいけないと思いましたの。私のような者が殿下の周りを彷徨いては殿下の迷惑になってしまいますもの。殿下とセリアさんが二人でいる姿を見た時に殿下はとてもリラックスされているように感じました。私達ではあのような殿下の姿を拝見することができませんでした……だから殿下にはセリアさんとうまく行って欲しいと身を引きましたのに、殿下がセリアさんをそのように思っていたなんて胸が苦しいです」
ローハン殿下があんなに自然な笑顔をするなんて見たことがなかった。それに自分の事を俺と言っていることも知らなかった。私たちには外向きの笑顔を見せていただけだったとあの姿を見て感じた。殿下の事を長い間? お慕いしていたけれど私には引き出せない笑顔だったもの……だから負けた。と素直に思った。その想いがあるからこそ殿下の告白は聞きたくなかった。
「セリアは平民だから堅苦しいマナーなどは必要ないからだよ。僕は王子で貴族社会でしか生きていけないから、セリアとは住む世界が違うんだ。君にも分かるだろう?」
「殿下、お話とは一体何でしょうか? 私はこのような事をお話しするのならそろそろお暇させていただきます」
王宮のメイドと目が合うとすっと頭を下げたられた。馬車の準備をしてくれるのかな?
「私の、いや。俺の本当の笑顔? それならキャサリンも隠していたよな? アレックスの事を義兄と呼び距離を取っていたのに、今では仲睦まじくまるで恋人のような振る舞いだ。アレックスに笑いかけているキャサリンの顔やゴテゴテとした縦巻きロールに似合わない化粧をして俺の前にいたじゃないか。身を引いた? 何だそれは? 人にはセリアとの恋を成就しろ。というのならキャサリンも諦めずに成就させるべきではないか? 自分勝手に俺を諦めるな」
「私は殿下の事を思って、」
殿下の事を思って身を引いたの。殿下がセリアさんと笑っていたから……私の事も笑っていたけれど。
「……反論しないのなら行動に移そうか、キャサリン、私の部屋に招待する」
席を立ち手首を握られ歩き出す。
「きゃぁ、殿下、どこに、」
「言っただろう? 今のキャサリンは俺の相手に相応しい。いくら金があろうと子爵家に婿入りするつもりはない」
な、何のこと……怖いよ。腕も強引に掴まれて痛いし……どうなるの私……殿下が庭を突っ切ってぐんぐんと歩く。あ、お花を踏んでいる。可哀想だわ……制服のスカートも枝に引っかかって破れた……殿下の住んでいる棟が見えてきた! メイド達は慌ててついてきているけれど、何もしてくれない。うちのメイド達なら私が粗相をしたら確実にその場で注意するのに……
「待ちなさい!」
いろんなことを頭の中でぐるぐると考えていたら、大きな野太い声が聞こえてきた。
20
お気に入りに追加
475
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる