憧れていた王子が一瞬でカエル化した!

さこの

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ローハン殿下の変化

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「キャサリン嬢、私と婚約しないか?!」

 ……はい?

「今のキャサリン嬢なら私の相手として相応しく望ましい。キャサリン嬢と婚約したら私は婿に行かなくて済むんだ。もし婚約が出来なくとも僕のそばにいて欲しい」

「……あの、婚約は出来ませんよ? 殿下にはお相手がいると聞いていますので相手の家に申し訳ありませんもの」

「キャサリン嬢の慎ましい性格は変わってないね。お茶会を開催すると私と会話をするために必ず順番を守っていたよね」

「あの、それは当然のことなので性格は関係ないと思いますよ? 他の候補の方達もそうでしたもの」

「そうだね、他の令嬢達も控えめで私を取り囲んでいても強引に話をしたりはしなかった」

 殿下が言っている意味が分からないわ……そろそろお暇させて貰わなきゃ……

「何がありましたかは存じ上げませんが、お話がないようなら、」
「話の途中だよ。婚約は出来ないのなら私の側にいて欲しい。だめかい?」

 婚約はダメ、側にいる? 意味が分からないわ。

「意味が分かりかねますの。婚約がダメなのにお側にいる……」
「そうだ。僕の恋人として側にいて欲しい!」
「? 恋人ですか? 殿下にはすでにセリアさんという恋人がいますよね?」

 セリアさんとは別れたなどと聞いているけれど好きになった人とそう簡単に別れられるわけがないもの。きっと心の奥では繋がっているわよ。あんなに仲睦まじかったのだもの。

「セリアか……もう過去の話だよ。セリアは平民だよ? 私の相手に相応しくなかったんだ。それに仲良くはしていたけれど恋人という関係ではなかった。学園に入り平民との交流を深め市民の生活を知ろうとしていただけなのに周りが騒ぎ出しただけだよ。貴族が多い学園だから仲間はずれになってはいけないと思っての行動だったが浅はかに見えてしまったようだ。そこは反省せざるを得ないね」

 嘘だと分かる。自分の都合の良いように考えている。こう言えば私が殿下を信用すると思っているのだわ。やっぱりバカにしているのだわ。前までの私なら殿下の意見に逆らう事はしなかった。

「殿下は学園でセリアさんといた時に敵を作らない方が賢明だと言ってきました。私は殿下の敵なのだと思って悲しくなりました。セリアさんと仲睦まじくされていたのでその姿を見て邪魔をしてはいけないと思いましたの。私のような者が殿下の周りを彷徨いては殿下の迷惑になってしまいますもの。殿下とセリアさんが二人でいる姿を見た時に殿下はとてもリラックスされているように感じました。私達ではあのような殿下の姿を拝見することができませんでした……だから殿下にはセリアさんとうまく行って欲しいと身を引きましたのに、殿下がセリアさんをそのように思っていたなんて胸が苦しいです」

 ローハン殿下があんなに自然な笑顔をするなんて見たことがなかった。それに自分の事を俺と言っていることも知らなかった。私たちには外向きの笑顔を見せていただけだったとあの姿を見て感じた。殿下の事を長い間? お慕いしていたけれど私には引き出せない笑顔だったもの……だから負けた。と素直に思った。その想いがあるからこそ殿下の告白は聞きたくなかった。

「セリアは平民だから堅苦しいマナーなどは必要ないからだよ。僕は王子で貴族社会でしか生きていけないから、セリアとは住む世界が違うんだ。君にも分かるだろう?」

「殿下、お話とは一体何でしょうか? 私はこのような事をお話しするのならそろそろお暇させていただきます」
 王宮のメイドと目が合うとすっと頭を下げたられた。馬車の準備をしてくれるのかな?

「私の、いや。俺の本当の笑顔? それならキャサリンも隠していたよな? アレックスの事を義兄と呼び距離を取っていたのに、今では仲睦まじくまるで恋人のような振る舞いだ。アレックスに笑いかけているキャサリンの顔やゴテゴテとした縦巻きロールに似合わない化粧をして俺の前にいたじゃないか。身を引いた? 何だそれは? 人にはセリアとの恋を成就しろ。というのならキャサリンも諦めずに成就させるべきではないか? 自分勝手に俺を諦めるな」

「私は殿下の事を思って、」

 殿下の事を思って身を引いたの。殿下がセリアさんと笑っていたから……私の事も笑っていたけれど。

「……反論しないのなら行動に移そうか、キャサリン、私の部屋に招待する」

 席を立ち手首を握られ歩き出す。

「きゃぁ、殿下、どこに、」

「言っただろう? 今のキャサリンは俺の相手に相応しい。いくら金があろうと子爵家に婿入りするつもりはない」

 な、何のこと……怖いよ。腕も強引に掴まれて痛いし……どうなるの私……殿下が庭を突っ切ってぐんぐんと歩く。あ、お花を踏んでいる。可哀想だわ……制服のスカートも枝に引っかかって破れた……殿下の住んでいる棟が見えてきた! メイド達は慌ててついてきているけれど、何もしてくれない。うちのメイド達なら私が粗相をしたら確実にその場で注意するのに……
 

「待ちなさい!」
 

 いろんなことを頭の中でぐるぐると考えていたら、大きな野太い声が聞こえてきた。
 

 

 

 

     


 
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