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昼休憩

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「あれ? 五月蝿いのがいないわ」

 ルヴィの言う五月蝿いはアレクの事なんだけど昼休憩になった途端にいなくなった。ルヴィと食堂でテイクアウトして外に行きベンチに座った。

「私避けられているかも……」
「……なんで? アレックスの作戦とかじゃなく?」

「学園だって別々に登校したし、お菓子を食べすぎて夕食を残しても怒らなかったし、きっと私に呆れて嫌いになっちゃったんだと思うの。アレクの事ちゃんと考えているのに、」
「ないでしょ。何年待ったと思っているのよ。男と女って違うんだって。女性は、あ!ダメだって思った瞬間その人のことをスパって気持ちが途切れることがあるのよ。私達も殿下への気持ちがスパって切れたでしょう? でも男性はネチネチと気持ちを拗らせるんだって。キャサリンが嫌だったらアレックスの事なんてスパって家族だもの。で終わらせるのに考えているって事はそう言う事なんだと思うよ」

「……そう言う事? 私アレクの事、」
「いた! キャサリン嬢」

 誰よ、せっかく考えが纏まりそうだったのに! ルヴィと振り向く。え?

「「殿下」」

「やぁ。ルヴィ嬢も一緒かい? 久しぶりだね」

「お久しぶりでございます。殿下はキャサリンに用事ですか?」
「あぁ。登校の際にキャサリン嬢と会って話をしていたんだけど話の途中だったから探しにきたんだ。いつもこの辺りでランチをしているのかい?」

「いえ、食堂だったり天気のいい日はこうやって外に出る時もあります」

 ルヴィが答えてくれた。殿下はランチを特別室で摂っていると聞いた事がある。わざわざ朝の話の続きをするためにこんなところに? もう終わったんじゃなかったっけ? ルヴィも昔は殿下とお話ができたわ! と喜んでいたのに今ではすんっ。と貼り付けた笑顔になっている。ルヴィが女性は気持ちがスパッと切れると言った意味がよく分かるわ。

「女の子二人でいる所を邪魔してしまったようだね。なんの話をしていたんだい?
「ふふふ、内緒話ですわ」
「それは邪魔をしてしまったようだね。すまない、それなら改めて放課後キャサリン嬢に時間をとって貰おうかな」

 ん? 私? なぜ?

「帰りは送らせるから王宮で話をしよう。それじゃあまた後で!」

 え、どうしてそうなった? 返事してないんだけど!

「あ……行っちゃった」
「断れなかったね。一緒に行けたら良かったんだけど、今日は用事があって早く帰らないと行けないから、アレックスに相談、」
「帰りも別々だし大丈夫よ。家に連絡してもらって学園への迎えは要らないって言っておくわ」

 アレクは言ってたもの。私の行動に制限をどうのって。好きにしろって事かな。アレクにも殿下にも悶々としてしまう。色々と腑に落ちないけれど、まっすぐ帰るのもなんだし久しぶりに王宮の庭園でも散策させてもらったりしようかな。

 午後の授業を受けて殿下の馬車に乗せてもらう事になった。目的地は同じだからと乗せてもらったのだ。へー、殿下の馬車はこんな感じなんだ。さすが王族が乗る馬車なだけあってゴージャスだ。

「こうやってキャサリン嬢と話をするのは初めてだね」
「そうですね……殿下と言葉を交わす時は王妃様が開催していたお茶会でしたもの。皆さん殿下とお話をしたくて順番を待っていたものですわ」

 必ず参加者全員とお話をしていたのよね……でも婚約者は決まらなかった。

「あの時は参加者が多くて一人に掛ける時間はものの数分だった。こうやってキャサリン嬢と話をしていると懐かしく思えるよ。髪型を変えて初めはわからなかったけれど、キャサリン嬢のピンクの瞳はやはり目を惹くね。服装の趣味も変わったよね、以前着ていたドレスよりも似合っているし今の方が素敵だと思う。もっと早く自分の魅力に気がつくべきだったね」

 ん?

「キャサリン嬢は成績も優秀だし、気立てもいい。僕の婚約者として不足はなかったのに……何故婚約者候補を辞退したんだい? 僕は最後までキャサリン嬢が残ってくれていると思っていたのに悲しかったよ」

 ん?

「僕は誠心誠意を込めて婚約者になる子を見極めていたのに、その途中で辞退されるものだからとても傷ついた」

 ん?

 コンコンとドアをノックされ、殿下のメイドがドアを開けて降り、私もその後に続く。馬車を降り王宮の庭園へと向かう。昔は良くここでお茶をしていたわね……懐かしいわ。すぐにお茶の準備がされるって凄いわ。お茶だけですけど……って。これは歓迎されていないという事よね? お茶も温くて美味しいとは決して言えない。

「あの……何故私を誘ったのですか? 相談というのは何でしょうか?」

 婚約者候補を辞めたという恨み言を聞かされて、温いお茶をだされて、居心地が悪いわ……
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