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殿下に声をかけられた!
しおりを挟むなんだかしっくりこない……アレクに学園は別々で行く? と言われてう、うん。と答えた。私はそれを望んでいたんだよね……一人で行く学園は寂しい。
「お嬢様、どうかされたのですか? 元気がないようですが……」
一人と言いながらメイドがついて来てくれるんだけどね。アレクと通っている時にメイドはいなかった。仕事を増やしてしまってごめんなさい……
「アレクがおかしいの。何かこれ。という理由は分からないけれど、妙に物分かりが良いというか……怒られないの」
アレクが怒ってこないの。子息にお手紙の返事を返したくらいからおかしいんだよね。昨日のお昼にお菓子を食べすぎて夕飯を残した時も怒らなかったし……お母様はまたなの! お菓子を禁止にしますよ! と怒っていたけれどアレクは口を挟まなかったし、お父様はお菓子禁止は可哀想だから少し減らしてみてはどうだ? とお母様を宥めていた。アレクが私に注意してお父様とお母様はまた始まった。って日常だったのに。
「寂しいのですか?」
「……分からない。でもアレクが変なのには変わらないから」
「アレク様にお聞きすればよろしいのでは?」
「そうだけど……いつもアレクは学園には一緒に行かないと皆に迷惑がかかるから一緒に行かないとダメだって言っていたのに別に行こうっていうし、食事を残しても怒らないし、アレクはきっと私のこと嫌いになっちゃったの」
殿下に対する気持ちがすっと消えたようにアレクも面倒な私なんて嫌いになったんだ。
「アレックス様がお嬢様を……それはあり得ませんがアレックス様の気持ちに胡座をかくようなら嫌われても仕方がないですよね? きちんとご自分の気持ちに向き合って答えを出せばよろしいと思いますよ」
「考えているの」
「……うじうじしていないでしゃんとなさってください」
「だって、」
「はいはい、学園に着きましたよ! ちゃんとカバンを持って、いってらっしゃいませ」
すぐに馬車が引き返していく。仕事を増やしてしまったわね。ごめんなさいね、って最近みんな雑じゃない?
「はぁっ」
「はぁっ……」
ん? ため息が重なった。だれだろ、こんな朝から……って。
「殿下……」
「キャサリン、久しぶりだね」
「どうかされたのですか? ため息を吐いておられたのは殿下ですよね?」
自分のことは棚に置いておく。
「……あぁ。人生について考えていたんだ」
「人生ですか?」
「あぁ。人生とは長いからね」
「そうですね。私もまだ十六年しか生きておりませんし、大したことは言えません。人生の先輩達のお話を聞くのもよろしいかと思います」
人生か……私も人生について考えている最中だ。
「そう簡単にはいかないから困っているんだ。キャサリン嬢良かったら相談に乗ってくれないか?」
あんなに殿下とお話をしたいと思っていた時にはお話をさせてもらうことが難しかったのに、殿下に対しての気持ちがなくなった今このように話ができる事が不思議だわ。あの時の私は殿下に憧れていて一言でも言葉を交わすだけでも嬉しかった。武装を解いた私は今や無防備で裸同然……
「申し訳ございません。私のような者に相談だなんて畏れ多いですわ……それに殿下は婚約が内定されたとお聞きしています。私の様な者とこのようにお話などしては……周りの目もありますから失礼します」
「え、キャサリン嬢待ってくれ」
小走りで校舎の中へと入っていく。久しぶりに殿下とお話をしたわね。いつぶりかしら……もう遠い昔の事のように思えるわ。殿下ってあんな線が細かったかしら? 身長もクビが痛くならないくらいの高さだったのね。憧れていた時はもっとこう、キラキラってしていて輝いていて目が合っただけできゃぁーって胸が高鳴っていたのに……殿下のご尊顔をまじまじと見たのは今回が初めてだったわ。殿下はセリアさんという恋人がいて、私なんて敵扱いで……頑張って巻いていた縦ロールもバカにされていて、似合わない青色やシルバーのドレスを身に付けて……殿下の隣に立つ為に勉強を頑張って、自分の周囲にも気を遣ってアレクを義兄様なんて呼んでいた。見向きもされていなかったのに、今の私なら良いとか気持ちの悪い事を言われたのよね。不敬だけど心の中でなら良いよね。殿下なんて、
「顔だけじゃない……」
「誰が?」
「きゃぁぁっ!」
「おはよーキャサリン。珍しいね、一人?」
「ルヴィ……びっくりするじゃないの」
「何かあった? って声をかけたくなるような顔だよ」
「後で相談に乗ってくれる?」
ルヴィと一緒に教室に入った。アレクはまだ教室にいない。私より先に家を出たのにな……
「もちろん。ところでキャサリン、この前知り合った方達からアプローチされたのに断ったんだって?」
「私ね大人の異性は怖くて萎縮しちゃってお話とか出来ないし」
「そっか。断るなら早めの方が良いからキャサリンがそう思ったのならそれで良いと思うわよ。でもあの方達皆高位貴族だったのに勿体無いわね」
「私には勿体無い縁のない方達だったんだよ」
高位貴族か……確かにそうだったけれど何も知らなかった幼き私は王族に嫁ごうとしていた黒歴史があるわね。
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ちょっと間が空いてしまいました。元旦の地震やら仕事の都合です。遅くなりましたが、本年もよろしくお願い致します( ›‹)՞
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