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お返事を書く

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 ……疲れて寝ちゃったんだ。社交って大変だわね。つくづく思った。殿下の婚約者候補だった時は誰も声を掛けてこなかったし、モテなかったし……子息と話してみたいと思ったけどただ疲れただけだったな。

 今日は休みだしのんびりしよ。とメイドに着替えを手伝って貰って楽なワンピースに着替えた。朝食を摂るために食堂へ行く。

「おはようございます」

 おはようと声が帰ってきた。いつも通りの朝食が始まった。わぁ。パンケーキが用意されている。ご機嫌で食べすすめた。オレンジジュースを飲んで朝食を終えようとしたところ、お父様が執事に合図をしたら花束を渡された。

「花束? キレイですね。今日は何かの記念日ですか?」

 はて? バラらやユリやら豪華すぎる……

「送り主の名前に覚えがないのかい?」

 確認すると昨日の子息の名前だわね。

「礼儀正しいのですね。ただお話をしただけでお花を送ってくれるなんて」

「手紙の内容は?!」

「……デートのお誘い? 求婚? 文通から────ってあれ? ……社交辞令かと思ってた」

 しーん。と静まり返り残念な子を見るような呆れた顔をする両親と、なぜか笑顔のアレク。

「どうすんだい! なんでまた地位のある子息ばっかりなんだ……」

「どうするって……ただ興味があって行っただけなのにこんなことになるなんて思ってなかったもん。少しお話しただけだし、初めて会ったんだよ? それに子供だと揶揄っているのかも!」
「あっちから送られてきた見合い話は断れるんだけど、キャシー自ら出会いの場に行くと自分で断らなきゃいけないよ?」

「そうなの?」
「今までは伯爵家宛に届いていた手紙だったけど、今回はキャシー宛だし、手紙でもなんでも良いから返事をちゃんと返しなさい」

 そうなの! どうやってお返事すれば良いのかしら! 分かんないよ。お母様を見た。知ってたの?

「何事も経験ですからねぇ。もう一度お会いしても良いと思うならデートするのも良いんじゃない? ダメならお断りすれば良いだけよ。よーく考えてお返事なさいね」

 そんなぁ……こんな事になるなんて。

 ******

「ミルクぅっどうしよ。なんて、お返事を返せば良いのかしら……」

 嫌がるミルクを撫で回していたらミルクが逃げ出した!

 ふぎゃっ!

「ミルクにまで逃げられたわ……」

 床にしゃがみ込んでいたらノックの音が

「アレックス様です。どうしますか?」

 アレクか……怒られるのかなぁ。怒られるならとっとと怒られておこう。ってなんで怒られる事を受け入れるんだろ。

「どうぞ。と伝えて」

「入るよ、どうした? そんな変な顔をして」

 変な顔か……悩んでいるだけなんだけど。

「なんて返事をお返しすれば良いか分からないから、悩んでいるの」

 失礼にならないような断りかたって何? あー。分かんない。

「断る方向で考えているから悩んでいるんだよね?」
「うん。行かなきゃ良かった……」

 反省中……興味本位で行っては行けない場所だった。真剣に婚活している人にも失礼だもの。


「その手紙見せて」

「手紙?」

 内容はもう知っているから失礼を承知でアレクに渡した。

「キャシーの筆跡なんて分からないだろうし、僕が代筆する」

「え、でも……」

「なんて書けば良いか悩んでいるだろ? 断るにもちゃんとした理由がないとダメだし、キャシーは僕に反抗して例の集まりに行ったんだろう? そんなに僕と結婚するのは嫌?」

「……嫌じゃないよ。アレクの事は好きだけど、勝手に決められるのが嫌なの。最近のアレクなんでも勝手に決めるでしょっ、アレはダメこれもダメって! それはイヤなの」

「その件については僕が悪かった。キャシーがどこかに行ってしまいそうで心配……いや、怖かったんだ。キャシーの気持ちを考えていなかったね、ごめん」

 素直に謝るアレクを見てるとなんだかこっちが悪いことをした気分になる。

「……うん、でも行って良かったかも」

「……聞きたくないけど、それはなぜ?」

「私には向いてないって分かったから。お見合いを否定しているわけじゃないよ? 大事な出会いの場なんだから。でも私無理して出会わなくても恵まれてたって気がついたんだよね。殿下の時はなんだか浮かれていて、憧れの人? みんなで反省会したりきゃーきゃーしたりするのを楽しんでいたんだなって。だから夢から覚めるとスッと気持ちが冷めちゃった」

「そうなんだ」

 今考えると殿下は舞台俳優に憧れているみたいな感じだ。私は観客席にいる観客の一人にしか過ぎなかった。殿下の人生という物語で私は群衆の一人。舞台から下りた観客にすぎない。群衆の中の一人でも私には私の人生がある。

「うん。アレクの事はちゃんと考えているよ。一緒に住んでるのにアレクの事よく知らないから……教えてよ」

「え?! どういう事さ、それは少し寂しいんだけど……そんなに興味がなかったのか!」

 副音声をつけるのなら“がーん!”って感じで目を見開いている。

「だって、昨日だってアレク出かけていたでしょう? どこに行ってたの? 私ばかりどこに行ったか聞いといてアレク言わないもん」

 アレクにも事情があっての事かもしれないから聞きにくい。



 

 

 
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