上 下
28 / 46

内緒で

しおりを挟む
「行ってきます」

「今日……何かおかしくないか?」

 アレクに言われた。

 姿見で確認したけれどおかしいところはないと思う。お母様と相談して決めたドレスだった。水色と白で爽やかさを出したつもりなんだけど?

「その髪型、どうした?」

 メイド達にゆるふわ系? に結って貰ったの。可愛らしいと思うんだけど? メイド達を見ると“うちのお嬢様が一番可愛いです”と言った。するとアレクの眉がぴくっと動いた。

って何?」

「アレク何をごちゃごちゃ言っているの! キャシー従者をどれだけ待たせるの! 早く行きなさいっ!」

 お母様がその様子を見て声を上げた。お母様は私の味方だもん。お母様は分かってくれたもん。

「はぁい」
「ちょっと待て!」

 アレクが言うとお母様がアレクの首を捕まえてくれた。

「アレクも用事があるんでしょう?」
「ちっ」

 あ、舌打ちした! お母様に怒られると良いわ! そもそもなんでアレクに行き先を言わなきゃいけないのよ。自分だってどこに行くか言わないくせに!

 ******

「キャサリン! 本当に来たのね! よく来れたね」

 声を掛けてきたのはルビィだった。

「そりゃ来るわよ。約束したもの」

 今日のお茶会の衣装のカラーは男女共にブルーだった。過ごしやすくなってきた季節だから涼しい色が良いということで、爽やかなブルーが今日のお茶会のイメージカラーなんですって。ブルーなら薄くても濃くてもなんでもオッケー。もちろんブルーが入っていれば単色じゃなくても良いという緩いルールなんですって。

「今日は男性の比率が多いみたいね」
「今日はって、ルビィは初めてじゃないのね?」
「あら、言ったでしょう? お茶会に参加している。って」
「聞いてたけど、こういうお茶会だと思わなかったから……ごめんね」
「いいって。キャサリンには本来なら関係ないお茶会だものね。お話を楽しむだけでも良いから、行きましょうか?」

 今日のお茶会は貴族街の一角にあるレストランでのガーデンパーティだった。◯◯邸だと気を遣うからこういったお茶会はお店ですることもあるんですって! たまに◯◯家主催などもあるみたい。自分の開いたパーティで出会って結婚した。となると家同士の縁ができるからなんですって! ルビィは物知りね。ルビィと話をしていると、声を掛けられた。

「初めて見る顔だね。良かったら話をしない?」
「はい、勿論です」

 ルビィが返事をしてくれた。ここにいる子息、令嬢の身元はバッチリ検査済みなんですって。だから安心して話をして良いそうな。

 
「私は、アンディ・ブラッドリーと言います。君の名前を聞いても良い?」
「私はキャサリン・ウエストウッドと申します」

 ブラッドリー家といえば侯爵家の? 確か私より五つほど上の子息がいたはずだから二十一歳くらい?

「あぁ、ウエストウッド伯爵家の令嬢か! こんなに可愛らしかったのか」

 ……む。レディに向かって可愛いとは!

「あ、ごめんごめん。伯爵が可愛い娘と豪語しているところに居合わせたことがあって……親からしたら娘はいつでも可愛い存在だろう。という意味だよ」

「お父様ったら……一体どのような状況で。恥ずかしいですわ」
「あれだよ。その、殿下の婚約者候補が次々に辞退した時?」
「あの時ですか……」
「娘が可愛いから家に一生居ても良いと。確か親戚筋から引き取った義息子の出来が良いから義息子に任せて……とかなんとか言っていたんだ」

 お父様ったら……恥ずかしいわね。

「そうでしたか。お恥ずかしい限りです」
「このような場でキャサリン嬢と会えて嬉しいよ。友人に誘われて来たんだけど、来てみるものだね。うちの親もそろそろ相手をと五月蝿くてさ。ところで伯爵は今日ここに来ていると知っているの?」
「母には伝えてきましたが、父は……あれ? 私からは言ってません。朝も何も言ってこなかったので」

 お母様に内緒にして! って言ったから知らないのかも。ま、いっか。お母様からオッケーを貰っているもん。

「そうか。それは困ったな」
「どうしてですか?」
「デートに誘う時は伯爵を通さないといけないだろう?」
「え? デート……私とですか?」
「……伯爵家の令嬢は君一人だと思うのだけど」
「そうですが……まだ会ったばかりですし、私なんて面白くないですよ? 気の利いたことも言えませんし」

 ……これが男女の出会いというのなら私には無理かもしれないわ。知らない? 人とデートだなんて。

「これから知っていけば良いじゃないか。っとあまり君を独占していると周りから怒られそうだから、手紙を送るよ」
 
 ブラッドリー様は手にキスをして去っていった。初めて会った人にキスされた……大人の男の人って怖いよぉ。

 次に話しかけてきた人はとても大きな人で騎士団に入っている方で友人ときたそうだ。体を鍛えるのと仕事が忙しくて出会いが無かったそう。真面目そうな人なんだけど、壁みたいに大きくて圧が……縮こまってしまって会話が……

「まずは手紙のやり取りから始めませんか?」
「……え?」
「君があまりにも可憐で、会話が弾まない……相手を知るには文通からだと聞いたことがある」

 そうなの? よく分からないよぉ。

 次に話しかけてきた人は公爵家の三男の方。チャラチャラとしていて遊び人って感じがした。

「最後に落ち着くところは、年下の可愛い嫁さんだと聞くが、まさに君の事だ! 君に決めた」

 ビシッと! 指をさされた。人を指差したらダメだって習ってないのかな……?

「よし、伯爵に話をしに行こう」

 肩を抱かれた。ひぃっ。鳥肌が……

 咄嗟にスタッフの人が飛んできて、公爵家の三男の人を引き離してくれた。た、助かったわ……

 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

義母ですが、若返って15歳から人生やり直したらなぜか溺愛されてます

富士とまと
恋愛
25歳で行き遅れとして実家の伯爵家を追い出されるように、父親より3つ年上の辺境伯に後妻として嫁がされました。 5歳の義息子と3歳の義娘の面倒を見て12年が過ぎ、二人の子供も成人して義母としての役割も終わったときに、亡き夫の形見として「若返りの薬」を渡されました。 15歳からの人生やり直し?義娘と同級生として王立学園へ通うことに。 初めての学校、はじめての社交界、はじめての……。 よし、学園で義娘と義息子のよきパートナー探しのお手伝いをしますよ!お義母様に任せてください!

どうして私にこだわるんですか!?

風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。 それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから! 婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。 え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!? おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。 ※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。

【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。

airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。 どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。 2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。 ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。 あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて… あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?

本当は違うはずなのに

山本みんみ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢、アリス・マクナリーに転生してしまった主人公が……本来なら嫌われるはずの王太子に、何故か愛を告げられ続ける。

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

【本編完結】若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!

はづも
恋愛
本編完結済み。番外編がたまに投稿されたりされなかったりします。 伯爵家に生まれたカレン・アーネストは、20歳のとき、幼馴染でもある若き公爵、ジョンズワート・デュライトの妻となった。 しかし、ジョンズワートはカレンを愛しているわけではない。 当時12歳だったカレンの額に傷を負わせた彼は、その責任を取るためにカレンと結婚したのである。 ……本当に好きな人を、諦めてまで。 幼い頃からずっと好きだった彼のために、早く身を引かなければ。 そう思っていたのに、初夜の一度でカレンは懐妊。 このままでは、ジョンズワートが一生自分に縛られてしまう。 夫を想うが故に、カレンは妊娠したことを隠して姿を消した。 愛する人を縛りたくないヒロインと、死亡説が流れても好きな人を諦めることができないヒーローの、両片想い・幼馴染・すれ違い・ハッピーエンドなお話です。

悪役令嬢に転生したと思ったら悪役令嬢の母親でした~娘は私が責任もって育てて見せます~

平山和人
恋愛
平凡なOLの私は乙女ゲーム『聖と魔と乙女のレガリア』の世界に転生してしまう。 しかも、私が悪役令嬢の母となってしまい、ゲームをめちゃくちゃにする悪役令嬢「エレローラ」が生まれてしまった。 このままでは我が家は破滅だ。私はエレローラをまともに教育することを決心する。 教育方針を巡って夫と対立したり、他の貴族から嫌われたりと辛い日々が続くが、それでも私は母として、頑張ることを諦めない。必ず娘を真っ当な令嬢にしてみせる。これは娘が悪役令嬢になってしまうと知り、奮闘する母親を描いたお話である。

処理中です...