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猫に媚を売る

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「アレクはやはり子爵に似ているな。将来は何か研究でもしたいのか?」

 研究……キャシーの研究は一生したいと思うけれど、口に出すと変態だと思われてしまうかもしれない!

「いえ。せっかく学年トップですから王宮で事務官をするのも悪くないと思っています」

 義父も王宮に勤めているし、既にスカウトもされている。なるべくなら早く帰れる部署希望。王宮で働くことは伯爵家的にも良いことだろう。

「そうなのか? アレクの人生だからゆっくり決めて良いんだ。まだ時間はあるからな」

「はい、ありがとうございます」

 義父は必ず僕たちの意見を聞いてくれる。今回は実父は改良した米を植えるにあたって、伯爵家の領地で実験したい。という話だった。これもうまく行くとお互いに利益が出るから了承していた。


 話は終わり帰ることになりキャシーが実父によろしく伝えて欲しいと言っていた。と伝える。

「アレックスはキャサリン嬢と、いや。やめておこう。余計なお節介だな。また会えるのを楽しみにしています。と伝えてくれ」

「はい」

 それくらいのお節介は問題ないけれど、義両親の手前実両親はしゃしゃり出てこない。僕から見ても控えめで良い人たちだと思う。義父はこのまま一度王宮へ資料を取りに行くというので、王都の街で降ろしてもらった。後で迎えがくる段取りだ。

「さて、と……」

 確かあの一画にペット洋品店が……あ、あった!

 キャシーに懐いている猫を僕にも懐かせれば、キャシーといることが出来る。あの猫、僕に威嚇したんだよな……

「いらっしゃいませ」
「こんにちは」
「何かお探しですか?」

「猫が懐くようなモノがあったら欲しいのですが」

 スタッフに答えるとおもちゃですかね。と言う。

 釣竿式の猫じゃらしと押すと音が鳴るぬいぐるみを勧められた。この二点を買うとして……って凄いな! ペット用の家具までがあったりするのか。家族の一員だから? そんなものなのか……知らない世界だった。

 迎えの馬車に乗り屋敷に戻る。出迎えにキャシーは居なかったのでキャシーの部屋へと行く。


「ただいま。お土産を買ってきたんだけど」

 と言うとしっ~と口に指を立てるキャシー。

「ミルクが寝ているから静かにして」

 キャシーの膝の上で寝る猫。

「身動きが取れなかったから、アレクが帰ってきたって気が付かなかったわ。おかえり」

「ただいま。これ猫のおもちゃなんだけど後で開いてみて」

 机の上におもちゃを置いておいた。

「ありがとう! 嬉しいねミルク」

 猫の体を撫でるキャシー。また猫に負けた……



 それから週が明け、キャシーは学園へ復帰することになった。同志の令嬢達に声をかけられ、きゃっきゃっとはしゃいでいる。ルヴィも合流し、話している様子を離れたところで見ているとセリアに声をかけられた。

「おはようございます、アレックス様」

「近づくなと言ったはずだけど?」
「はい。キャサリン様に近づいてはダメだと言われています。話しかけもしませんし近くにもよりませんよ。ちょっと良いですか?」
「なんだ?」

「ここではちょっと……」

 キャサリンはルヴィ達に任せておいて大丈夫だろう。セリアに言われて少し離れた場所へと行く。もちろん生徒がよく通る場所だ。

「グロウ伯爵家って知ってる?」
「もちろん」

 いい噂は聞かないけどな。

「王都のノース孤児院……そこまで言えばわかる?」

 ノース孤児院から子供が数人消えた。という事件があった。黒幕がグロウ伯爵という事か?

「なんでそんな重要な事をあなたが知っているんだ?」

 週末実家に帰って両親と過ごし、家族の大事さが身に染みたそうだ。キャサリンに対する嫉妬が消え、とにかく学園を卒業して王都の一流企業で働くという目的が出来たとか? 内定をもらうため王都の街をぶらついて、貴族が入るような店ではなく平民が好んで入るようなカフェでそんな話が耳に入ってきた。という。

「証拠はないけれど、あの店をよく利用しているみたいだったよ」

 特徴を聞いてみると貴族ではないようだから下っ端なのかもしれない。今は何も出来ないがまた子供がいなくなったら情報を噂として提供してみよう。セリアはこの話を殿下に提供したら立場が変わったんじゃないか? と思いセリアに言った。 

「心を入れ替えたの。家に帰ってよーーく考えたの。どうせ貴族にはなれないし、なったとしても生まれてから貴族の人達には下に見られる。愛人になるつもりはないし殿との関係もこれまでよ。今回のことで自分がいかにバカだったかと思い知らされたの。アレックス様とは契約したから情報として売ったの」

 へぇ。賢いじゃないか。誰につくのが有益だって事。この情報が本物ならセリアに情報料を支払うつもりだ。裏切ったなら、その時は……

 
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