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犯人の行き先
しおりを挟む「ナイスタイミングだな、ルヴィ」
絶妙なタイミングだった。右に行かれていたらどうなっていたやら……
「ふふっ。犯人? ってのは左右に分かれ道があると左に逃げるという習性があるのよ、ご存知ありませんの?」
得意顔でセリアの足を押さえ拘束していた。犯人って……推理小説の読みすぎだろ。
「勉強になったよ。ところであなたはこのハンカチが自分で刺繍した物だと言ったが残念ながらそれはあり得ないんだ」
「はぁ? なんであんたにそんなことわかるのよ!」
口が悪いな……態度もだけど。
「分かるさ。この糸はウエストウッド家で染色された糸で、ガーベラも単なるガーベラではなくて、ウエストウッド家でしか咲かない貴重な品種のガーベラなんだよね。言っちゃなんだけど貴族でもないあなたが知っているとは思えないから」
ウエストウッド家の土でしかなぜか咲かないという。切り花にしてプレゼントするととても喜ばれるのだそうだ(義母談)
「……ちっ」
舌打ちとは……! 可愛いとか賢いと言われているけれど演技なのか?! 僕たちの周りにはいないタイプだ!
「このノートに見覚えある?」
無視して聞くとフィっと視線を逸らした。
「……ないわ」
「あるのね。やましい事があるから人の目を見られないのよ。それならノートの足跡が一致した件は?」
追い詰めるルヴィ。
「足跡なんて、どうでもなるわよ! 同じ靴を履いている人他にもいるって!」
名案が浮かんだと言わんばかりの顔だな。僕でも分かった。
「貴族が多い学園で、大量生産の靴を履く人なんていないわよ! 23センチでしょ!」
「! 私の靴を使った犯行かもしれないじゃない! 私を犯人に見せかけた犯行よ!」
……ないな。
「誰が好き好んで、あなたの靴を盗むのよ! その間あなたは裸足だったの? あなたの歩き方は癖があるから右の靴底が減っているのよ! ノートの足跡も右だからよく分かるわ。それにこの髪の毛はどう説明するの!」
……凄いなルヴィ。追い詰め上手だな。ノートの間に髪を挟むなんて……さっき肩に付いていたセリアの髪の毛を取っていたのを僕は見た!
「だから私じゃないってば! そんな髪の毛を見て私だって分かるわけないじゃない! 訴えてやる!」
セリアはルヴィに向かって指を差した。
「どうぞ、どうぞ。それなら私達はこの髪の毛と足跡を鑑識にかけてやるわよ!」
言いたい放題だな……鑑識なんて重犯罪でもない限り回せないだろう……ハッタリだ、
「……それだけは、家族に迷惑は掛けられないわ」
ん? 認める系……早い! 早すぎる!!
「初めからそう言えば良かったのよ! アレックス連行して話を聞くわよっ」
「ラジャ」
ルヴィのアシスタントに成り下がった瞬間だった。
******
「だから、ローハンがあの子を婚約者にするっていうから、少しだけシメとこうって思ったのよ。食堂で場所取りしていたから、座る場所がなくて立ちすくむ姿を見たら、ざまぁないなって……ちょっとした嫌がらせじゃない!」
「ハンカチを盗んでおいてよくいうな……しかも盗んだハンカチを普段から使うってあり得ないんだけど……短絡的すぎないか?」
「……返すわよ!」
返されても困る! しかし持たせておくのもトラブルの元。
「ノートもどうやって盗んだ? まさかカバンを漁ったりしてないだろうな」
「するわけないじゃない! 失礼な! 職員室へ行った時に見つけたからそっと手に取っただけよ」
「……窃盗ね」
ん? 間違いはないけど、大袈裟っちゃ大袈裟なんだよなルヴィ。
「足を引っ掛けたよな? キャシーは家で療養している。食堂で足を引っ掛けた件もある。これについては?」
「……傷害罪ね」
ん? 間違いはないけど、大袈裟っちゃ大袈裟なんだよなルヴィ。
「ちょっと転んだだけで一ヶ月も休むなんて、貴族の骨ってどうなっているのよ! 舐めときゃ治るでしょ。自然治癒って知らないの?」
捻挫したところを舐めるのか? どういう効果があるんだ?! 驚いて止まってしまった。ルヴィがこそっと。言ってくる。
「流石にそれはないって! 舐めたとしても紙で指を切って血が出たとかそういうレベルだと思うわよ」
え! それはそれで大丈夫なのか! 綺麗な水で洗い流すとかしないと雑菌やらばい菌やら……というと世間知らずと言われそうだが……ルヴィは……聞かないでおこう。
「話を戻そうか……キャシーに怪我させたのはあなたという事だけど、嫉妬という事なんだよな?」
「そうよ! ずっとあのダサいモサい髪形にしておけば良かったのに! ローハンと婚約だなんて許せないわっ」
「侮辱罪よ。全く……」
ルヴィと目が合い溜め息を吐く。
「「はぁっっ」」
「なによっ、二人して!」
「キャシーは婚約者候補を辞退したんだ。だから婚約する事はない。本人が否定しているし、両親も断っている。あなたの思い違いだ」
そんなくだらない事でケガさせられたのかよ……
「はぁっ。あなたねぇ、学園でも故意で人にケガをさせたり、物を盗んだりすると退学になるわよ! 学園の外だったら平民が貴族に怪我させたらどうなると思う! あなた成績はいいはずなのにバカじゃないの! 違うわ、大バカね!」
「ローハンは王子だもの! あの子より身分が高いんだからなんとかしてくれるでしょっ!」
「はぁっ。だからバカだというのよ! 殿下が個人的な理由でそんなことをすると他の貴族が黙っていないわよ! 貴族社会はそんなに甘くないのよ」
ルヴィの言う通り、一つ失敗すると回復までは相当な時間が必要だからな……となるとローハン殿下は?
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