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軽いキスは挨拶(ローハン)
しおりを挟むキャサリンは紺色で白のレースがポイントとなっているワンピースを着ていた。アクセサリーは控えめだが上品に纏まっている。王宮に来るのだから落ち着いた感じの華やかさと言ったところだろうか。とても似合っていた。
「どうしたの?」
「あ、いやなんでも無い」
目の前の食事を楽しもうと、集中することにしたのだが、学園の食堂では感じられなかったがどうやらセリアはテーブルマナーがよろしく無い……ナイフやフォークの使い方、食べ方を見ていたら食欲が無くなってきた。口に物を入れたまま話すんじゃ無い……
学園では……そうか軽食しか食べてないよな。コースで出てくるわけではない。
「どうしたの? 食べないの?」
「寝不足で食欲があまり無いのかもしれない」
メインの肉を残してしまった。セリアは寮の食事より美味しいと言って平らげていた。そう言うところは可愛らしいところでもある。
食後のお茶とケーキは食べたのだが、茶器を置くときの音やケーキの食べ方が気になって仕方がなかった。学園では焼き菓子を食べる事が多いから気が付かなかったが、テーブルマナーがなっていないようだ。
途中でフォークを落とし拾おうとするなんて……食事中だぞ……給仕がする仕事だ。
フォークを落とした音で他の客から注目を浴びてしまったでは無いか!
アレックスが私に気がつき目があってしまった。それからしばらくしてアレックスがキャサリンの耳元で何かを言ったようで、二人とも席を立った。時計を見ていたことから時間が来たのか?
二人とも食事を終え出ていくようで、私たちの席の近くを通り過ぎる。パーテションがあるが会話は聞こえた。
『キャシー急ごう! 早くしないと義父上を待たせてしまう』
『アレク、待って。早いよ』
『今日ヒール高すぎない?』
『アレクがちびって言うからでしょう!』
『ほら、腕を貸すから早く行こう』
『うん』
腕を組んで出ていく二人……ん? キャシーにアレク? 確かアレックスの事は義兄さまと呼んでいたような? あれでは本当に仲のいいカップルにしか見えない。
「はぁ。美味しい。ローハンもう食べないの?」
「あ、あぁ食べるか?」
食べかけだけど……流石に断るか。
「いいの? ありがとう」
セリアは貴族の娘と違って飾らないところが良いんだよな? そうだよな? 明日……学園でキャサリンに会いに行こう。その後、俺たちもカフェを出た。
「ねぇ、ローハンの部屋はどこにあるの?」
……そうかここは見学コース。広い王宮内ではいろんな人が生活をし仕事をしているし、大小合わせて部屋だって何百とあるからなぁ。
「ここから東に向かった先にある棟だよ」
「へぇ。見てみたい!」
……部屋に? まぁ良いか。
「何にも面白いものは無いよ」
「行きたい」
それならと歩き出すが、どうやら城の中にはこの許可証では入れないようだ。城の近くに来ると貴族達が増えセリアといるところを見られてしまった……
「どうやらこの許可証では城の内部には入れないようだ」
「変なの! ローハンの家に行くだけなのに許可がいるなんて……可哀想」
……可哀想なのか? よく分からなくなってきた。取り敢えず入れないと言うなら、帰ってもらうしか無い。
「また来てもいい?」
「あぁ。許可証の取り方は分かるよね?」
季節によって見頃になる花があるから庭園を散策するのは良い事だ。
「面倒だよね……そこはいつでもきていいよ。俺がなんとか話を通す。って言えばかっこいいのに!」
「ははっ。言えれば良いけれど私的な事でそんなことをすると周りに迷惑がかかる。俺もセリアも悪く言われる。そんな事は出来ない」
この間の話は聞いていたのだろうか……不審者扱いされ牢屋へ入ることになる。不法侵入だぞ! 俺の評判が下がってしまう。
「分かったわ。また明日学園で。今日のローハンかっこよかったよ! 王子様って感じ」
セリアは私の頬に軽くチュッとキスをして帰って行った。
……誰にも見られてないよな? あたりを見渡すとそこには伯爵とアレックスとキャサリンが!
よりによってこんな場面を見られるとは!
「……伯爵こんにちは」
「殿下。ご機嫌よう。彼女が噂の……仲が良いようでなによりですな。それでは失礼、二人ともいくぞ!」
無言のキャサリンは目を大きく見開いていた。驚いているようで、アレックスに肩を抱かれて馬車に乗り込んだ。
……誤解なんだよ……挨拶なんだって!
信じないよな……
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