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変な髪型はやめたらしい

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 ~アレックス~
 
 あの変なこだわりの縦巻きロール(通称ドリル)をやめた事にホッとした。キャサリンはそのままで可愛いからだ。化粧なんかしなくても良いのに大人っぽいでしょう? って言ってくるからいつも僕は無言だった。似合わない。と言えば機嫌が悪くなるのが目に見えている。

 そんな中、婚約者候補から辞退するって言った。まさかローハン殿下が平民の女の子と仲良くなるなんて意外だったし誰も思わなかっただろう。

 我が家にもプライドと言うものがあるから、あっちからうちのキャサリンより平民の女の子が良いなどと言われる前に辞退を申し出た方が良い。

 平民女に負けただなんて言われるとキャサリンも(他の候補の令嬢も)傷つくだろうしキャサリンの事を大事にしている両親も僕もこれ以上は黙っていられない。

 キャサリンの次の婚約者候補のアテはある。あとはキャサリンの気持ち次第……

 馬車の中でもまだ元気のないキャサリン。あの変な髪型と化粧をとっただけでこうも変わるのか……とみんな思うだろう。いや。気付かれない可能性もある。家での姿を知っている僕ですら驚いた。変な虫がつかないようにガードしなきゃまずい。

 あの変な髪型縦巻きは令嬢の中では人気があったのだが、子息の中では不人気だった。男女の感覚というのはこうも違いがあるんだな。


「キャシーついたよ」

「……はぁ。アレクの側から私は離れないわ。ローハン殿下と名前は知らないけれど平民の子が仲良くしている姿を見たくない……アレクの側にいたら隠れられるわよね……」

 僕を盾にするつもりか……? まぁそれでいいや。

「隠してあげるよ。キャシーはずっと僕にくっついていればいいよ。僕は身長が高いからよく見渡せる。殿下達の姿が見えたら逆を向こう。ダンスもパートナーがいればパートナーとしか踊らなくて良いみたいだから、一曲踊って様子をみよう」

「パートナーって……大丈夫よ。私ダンスに誘われないわ。声をかけられたことないもん」

 それはローハン殿下の婚約者候補だったからだろうね。これからは違うだろうな……って今日はまだ知られていないからセーフか。

「これからは分からないよ? でも今日はダンスを踊ってから美味しいものでも食べようよ。立食だけど食べ物も出るようだし」

「今日は何も食べてないから嬉しいわ」

 昨日の夜も残していたし、今日は今日でベッドの上で行きたくない。と駄々を捏ねていて、それから舞踏会の準備を急ピッチで始めたから食事をする暇なんてなかったもんな。お腹減った……というキャサリンと腕を組んで会場入りした。するとルヴィの姿が見えたので早速キャサリンは声をかけた。

「ルヴィー」

「……キャサリン?」

「うんっ」

「アレックスといるからそうかな? とも思ったんだけど、アレ縦巻きやめたの?」

「……やめた。それとローハン殿下の婚約者候補も辞退する」

 驚くルヴィ。

「えっ! 私も辞退するのよ。昨日お父様にそう言ったの。聞いた話によると辞退する家が多いみたいね。キャシーも辞退するなら逆に誰が残っているのか……って感じよ。ローハン殿下と同じ年齢の令嬢達も皆辞退したから」

「皆さん、あの平民の女性をといる姿を見て辞められたの?」

 こそっとルヴィに聞くアレックス。

「そうね。ショックを受けるわよね。二年も婚約者候補をしていたんだもの。バカにされた気分よ!」

 なるほど。これは反感を買っている。間違いなく問題になるやつだ。

「私も諦めるわ。潮時ってあるものね。ドリルと共にローハン殿下への気持ちは葬ったのよ……」

「大人になるってそう言うことよね! 大丈夫よ。キャサリンにはアレックスがいるじゃない!」

「そうね。アレクに任せるわ」

 ……どういう意味で? と苦虫を噛んでいたら殿下が平民の女の子をパートナーにして登場したようだ。学園とはいえ平民の女の子をパートナーにするとは……ここまで考えなしだとは思わなかった。

 
 まぁ殿下の相手は平民の……陛下はご存じなのかしら? 王妃様は頻繁にお茶会を開いてらしたのに、まさか殿下のお相手が平民とは……貴族達は怪訝な顔でヒソヒソと話している。平民の生徒達はそそっと端へと逃げていく。この学園にいる平民達は優秀だから分かる。立場を弁えたようだった。殿下は何を考えているのだろうか? いや。考えてないからこうなったんだろう。
 

 学園は身分関係ないよ! 
 単なる学園行事だぞ!

 と思っていたら大間違い。平民がいても居なくてもちっちゃな社交界の縮図がここ学園にはあるから。噂好きな貴族達だから学園の噂も何かしらの役に立つから、学園だからオッケーなんて事は通用しない。殿下のパートナーとしてドヤ顔で隣にいるけれど、殿下の側近達は青い顔をしていた。恐らく、側近達はパートナーを変更するようにと言ったが殿下が聞く耳を持たなかったんだろう。

「殿下のあの顔は恋をしていると言った感じだよね……」

「……そうね」

「……みっともないわ。なんで殿下の事を慕っていたのかしら……?」

 キャサリンもルヴィも慕っていた気持ちが冷めるくらいの締まりのないデレデレした顔。そんな事を露知らず殿下と平民の女性は機嫌良くみんなに挨拶をして回っているようだった。さて、どうなるかな……

******

 1日1~2回更新予定です。よろしくお願いします。





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