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番外編
フローリア
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小さい頃から公爵家の令嬢として育ってきた。公爵家という貴族界で最高峰の娘として生まれ育ってきたからにはそれなりの義務がある。王族と並んで国の顔になる事もある。
王家とは親戚だしよく王宮に行く事もあるし、王子様も王女様とも小さい頃から遊んでいた。私達の周りには友達が存在しない。太鼓持ちの貴族の子供たちが甘い汁を吸いたくて集ってくる。
友達が欲しいなぁ。
ルシアンとは王宮のお茶会で知り合った。侯爵家の嫡男だし育ちもよく頭もいい。だから会う度に話すようになった。
お互い家は王族派だったから会う機会も増えた。ルシアンとは初めから仲が良かったわけではないけれど、お茶会でお互い孤独なのは嫌だからという理由だった。
ルシアンには親戚がいてすごくキレイな顔をした男の子だった。ルシアンはその子とだけは仲が良かった。私も一緒になることが増えて仲良くなった。伯爵家の嫡男で名前はジルベルトといった。
なんとなく三人でいることが増えた。その頃にはルシアンの事を好きになっていたのかもしれないわね。ルシアンはあまり人に興味がないらしく、対面的には人当たりがいいけれどそれ以上もそれ以下もなかった。
ルシアンと婚約の話が出た。
「僕じゃダメ? 頼りないかもしれないけれど、頼りになる男になると誓うよ」
と言われた。その頃にはルシアン私に惚れていたのね!
「ふふっ。私と釣り合うようになるためには学年で一位になる成績を取らなきゃ婚約してあげないわよ」
「え、そんな事でいいのか?!」
多分ルシアンにとっては“そんな事”だと思うけれど分からないじゃない?
ルシアンは有言実行で一位を取った。学園では一年の間は成績に関わらずクラス分けがある。二年生からは成績順。成績が悪くても私とルシアンは高位貴族、Aクラスに間違いはないけれど実力でAクラスにならないと世間体が悪い。
一年生の成績優秀者によるお茶会があった。二年生になるとAクラスに入る予備軍ってところ。私の隣には“癒し系令嬢”と言われる令嬢がいた。
実は気になっていたのよね。どんな子なんだろ。
声をかけると凄い硬くて緊張をしていたけれど、話を進めるうちに素直な子だと思った。だってお兄様に興味がないって口に出しちゃうのよ? これがもし演技で私の気を引く為だとしたら魔性ね!
もっとこの令嬢のことを知りたいと思い、思い切ってお茶会に招待してみた。
ルシアンは面白くないだろうけれど、どんな子か見極めてほしいと思って……
お茶会に持ってきてくれたお土産はサツマイモを使ったお菓子で、驚いた。
だってサツマイモが美味しいと知っている貴族はまだまだごく僅かで、家畜の餌だと思っている家族が多いのに公爵家に持ってくるんだもの。
その後の衝撃は忘れられないわ。何このサツマイモ! サツマイモが美味しいことは知っていたけれどさらにその上をいく美味しさ……何この子! 面白い。
可愛い顔をしてよく食べるし、話をしていても嫌味がないし緊張すると言いながらも、次のお菓子に手を進める。
ルシアンは害がないと思ったのか初めてあったオフィーリアと友達になったの! しかも名前で呼ぶほどよ?!
私やルシアンに取り入ろうという気もないみたいだし、後から来た変なメガネをかけてボサボサ頭のジルベルトに対しても、普通に接するし……
お兄様も悪い印象はなかったみたいだし、寧ろその逆? だって王太子殿下にまで会わせたんだもの。いくらサツマイモを備蓄として育てるにしてもだよ。
その後オフィーリアと交流を進めるうちに、もっと仲良くなりたいと思っていたら、ジルの初恋相手がオフィーリアで三年も前から好きだったって……え! ジルの想い人がオフィーリア!?
「応援するからっ!」
ジルがオフィーリアとくっついてくれたらこんなに嬉しいことはないわ! ずっと友達でいられるなんて!
「何もしないで見守っていてほしい」
なんて言われてもねぇ。ランチに誘ったり、ダンスパーティーのパートナをさせたり、お泊まり会の次の日はダブルデートをさせてあげたの私達だから! 感謝しなさいよね!
ジルはヘタレだと思っていたら、ちゃんと告白をしてオフィーリアを捕まえたし、後から聞く話によると決闘まで?!
ジルが強いということを知っているのはごく僅かだし、楽勝で勝ったのだそう。久しぶりに剣を振る姿、見たかった~!
婚約者になってからのジルはもう見ていられないくらいオフィーリアを甘やかしていた。まぁ気持ちは分からないでもない。
私も頑張ってオフィーリアの衣装を一から作ったのにジルが全部持っていっちゃったわ! まったく、もう!
「良いじゃないか。フローリアはよくやったよ。あんなにオフィーリアが感動しているんだ。ほら感極まって引くほどに泣いてるぞ」
パレードの最中に大泣きするオフィーリアに領民達は笑っていたけれど、みんな幸せそうだった。フラワーシャワーが舞い青空に映えている。
「きゃぁ。ジルが……オフィーリアに」
「……あのジルベルトがなぁ。見てみろ。満面の笑みのジルベルトと恥ずかしそうなオフィーリア」
領民の前で口付けをするなんて! 歓声が上がっているわ。盛り上がりは最高潮ね。オフィーリアの家族はどう思っているのかしら。そう思い家族の方を見る。
「あ、あら。夫人は笑顔だけど、伯爵と弟君は固まっているわ」
「そりゃそうだろうな。御愁傷様だな」
刺激的な1日だったわ。
王家とは親戚だしよく王宮に行く事もあるし、王子様も王女様とも小さい頃から遊んでいた。私達の周りには友達が存在しない。太鼓持ちの貴族の子供たちが甘い汁を吸いたくて集ってくる。
友達が欲しいなぁ。
ルシアンとは王宮のお茶会で知り合った。侯爵家の嫡男だし育ちもよく頭もいい。だから会う度に話すようになった。
お互い家は王族派だったから会う機会も増えた。ルシアンとは初めから仲が良かったわけではないけれど、お茶会でお互い孤独なのは嫌だからという理由だった。
ルシアンには親戚がいてすごくキレイな顔をした男の子だった。ルシアンはその子とだけは仲が良かった。私も一緒になることが増えて仲良くなった。伯爵家の嫡男で名前はジルベルトといった。
なんとなく三人でいることが増えた。その頃にはルシアンの事を好きになっていたのかもしれないわね。ルシアンはあまり人に興味がないらしく、対面的には人当たりがいいけれどそれ以上もそれ以下もなかった。
ルシアンと婚約の話が出た。
「僕じゃダメ? 頼りないかもしれないけれど、頼りになる男になると誓うよ」
と言われた。その頃にはルシアン私に惚れていたのね!
「ふふっ。私と釣り合うようになるためには学年で一位になる成績を取らなきゃ婚約してあげないわよ」
「え、そんな事でいいのか?!」
多分ルシアンにとっては“そんな事”だと思うけれど分からないじゃない?
ルシアンは有言実行で一位を取った。学園では一年の間は成績に関わらずクラス分けがある。二年生からは成績順。成績が悪くても私とルシアンは高位貴族、Aクラスに間違いはないけれど実力でAクラスにならないと世間体が悪い。
一年生の成績優秀者によるお茶会があった。二年生になるとAクラスに入る予備軍ってところ。私の隣には“癒し系令嬢”と言われる令嬢がいた。
実は気になっていたのよね。どんな子なんだろ。
声をかけると凄い硬くて緊張をしていたけれど、話を進めるうちに素直な子だと思った。だってお兄様に興味がないって口に出しちゃうのよ? これがもし演技で私の気を引く為だとしたら魔性ね!
もっとこの令嬢のことを知りたいと思い、思い切ってお茶会に招待してみた。
ルシアンは面白くないだろうけれど、どんな子か見極めてほしいと思って……
お茶会に持ってきてくれたお土産はサツマイモを使ったお菓子で、驚いた。
だってサツマイモが美味しいと知っている貴族はまだまだごく僅かで、家畜の餌だと思っている家族が多いのに公爵家に持ってくるんだもの。
その後の衝撃は忘れられないわ。何このサツマイモ! サツマイモが美味しいことは知っていたけれどさらにその上をいく美味しさ……何この子! 面白い。
可愛い顔をしてよく食べるし、話をしていても嫌味がないし緊張すると言いながらも、次のお菓子に手を進める。
ルシアンは害がないと思ったのか初めてあったオフィーリアと友達になったの! しかも名前で呼ぶほどよ?!
私やルシアンに取り入ろうという気もないみたいだし、後から来た変なメガネをかけてボサボサ頭のジルベルトに対しても、普通に接するし……
お兄様も悪い印象はなかったみたいだし、寧ろその逆? だって王太子殿下にまで会わせたんだもの。いくらサツマイモを備蓄として育てるにしてもだよ。
その後オフィーリアと交流を進めるうちに、もっと仲良くなりたいと思っていたら、ジルの初恋相手がオフィーリアで三年も前から好きだったって……え! ジルの想い人がオフィーリア!?
「応援するからっ!」
ジルがオフィーリアとくっついてくれたらこんなに嬉しいことはないわ! ずっと友達でいられるなんて!
「何もしないで見守っていてほしい」
なんて言われてもねぇ。ランチに誘ったり、ダンスパーティーのパートナをさせたり、お泊まり会の次の日はダブルデートをさせてあげたの私達だから! 感謝しなさいよね!
ジルはヘタレだと思っていたら、ちゃんと告白をしてオフィーリアを捕まえたし、後から聞く話によると決闘まで?!
ジルが強いということを知っているのはごく僅かだし、楽勝で勝ったのだそう。久しぶりに剣を振る姿、見たかった~!
婚約者になってからのジルはもう見ていられないくらいオフィーリアを甘やかしていた。まぁ気持ちは分からないでもない。
私も頑張ってオフィーリアの衣装を一から作ったのにジルが全部持っていっちゃったわ! まったく、もう!
「良いじゃないか。フローリアはよくやったよ。あんなにオフィーリアが感動しているんだ。ほら感極まって引くほどに泣いてるぞ」
パレードの最中に大泣きするオフィーリアに領民達は笑っていたけれど、みんな幸せそうだった。フラワーシャワーが舞い青空に映えている。
「きゃぁ。ジルが……オフィーリアに」
「……あのジルベルトがなぁ。見てみろ。満面の笑みのジルベルトと恥ずかしそうなオフィーリア」
領民の前で口付けをするなんて! 歓声が上がっているわ。盛り上がりは最高潮ね。オフィーリアの家族はどう思っているのかしら。そう思い家族の方を見る。
「あ、あら。夫人は笑顔だけど、伯爵と弟君は固まっているわ」
「そりゃそうだろうな。御愁傷様だな」
刺激的な1日だったわ。
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