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ジルベルト様の邸
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「やぁ、カルメル伯爵令嬢ようこそ」
ジルベルト様とロワール伯爵自ら迎えてくださった。
「始めましてオフィーリア・カルメルです。本日はお世話になります」
サツマイモを譲って欲しいと言うと快く受けてくださった。ロワール伯爵領で食べたサツマイモが美味しくて家でも食べたいと、私のわがままから始まったのだけど……サツマイモはこれから国でも備蓄として栽培されるようになるそう。ロワール伯爵領ではいち早く食料として栽培されていた。
「花まつりも楽しんでくれたようだね。良かったらまたおいで。歓迎するよ」
「ありがとうございます。本当に素敵な町ですね。領民から聞きましたが領主様自ら領民と共に活動をすると……」
「キレイな町の方が犯罪は減る。キレイな町は領民の心の余裕にもつながるからね。それに私が町に行くことにより喜んでくれる領民もいるから。護衛は大変だとボヤいているけどな」
「素晴らしいです! 伯爵様を尊敬しますわ」
噂通り素晴らしい領主様です。
「ははっ。君は素直な令嬢だね。ジルベルトとはクラスが違うらしいが、仲良くしてやってくれ」
「こちらこそよろしくお願いいたします」
その後、備蓄庫に案内された。先生と庭師の方がとっても盛り上がっていた。ついていけないわ。
その様子を見ていたらジルベル様が声を掛けてきた。
「……お茶でもする? フローリア嬢の邸に比べると立派な庭ではないけれど後で庭も案内するよ」
「わぁ。嬉しいです」
ロワール領は美しい町だったので王都の邸もとてもキレイにされている。シンプルだけど見せるところは見せるという感じかな。庭の見渡せる応接室に案内された。
「このクッキーはオフィーリアが持ってきてくれたもの?」
「はい。ナッツが沢山入ってるんですよ。それとこのクッキーの上にはジャムが乗っていて私のお気に入りです」
「いただくよ。うん、美味い」
手土産にクッキーを持ってきた。ジルベルト様もお茶請けを用意してくれていたみたい。
「ジルベルト様、このレモンケーキすごく美味しいですね!」
甘酸っぱいケーキの中にレモンの皮が入っていてほろ苦で上にはレモン風味のお砂糖? がかかっている。
「庭で育てているレモンだよ。ほらあそこに」
たわわに実るレモン達。
「わぁ。素晴らしいお庭ですね」
レモンケーキはすでに二個目に手が伸びた。
「……本当に美味しそうに食べるね。どんどん与えたくなるというフローリア嬢の気持ちが分かる。これだけ喜んでくれたらうちのシェフも喜ぶよ」
またやってしまった。お母様に控えるように言われていたのにっ。お茶を飲みまったりしてから庭に案内してくれるというので、言葉に甘える。先生はまだ庭師と話をしているようだし……
ジルベルト様の邸は可愛らしいお花が多い。どれもこれも長く楽しめてエコだし低木が多くて見晴らしが良いわ。
「疲れない? 結構歩いただろう」
広いお庭だから結構歩いたけれどこれくらいは問題ない。
「全く問題ありません。食べたらその分お散歩をさせられますから、慣れています」
庭を散策するくらの脚力はある。持久力は無いけれど。
「させられる? 誰に?」
「弟です。昔は可愛かったのですが最近は口うるさくて……食べすぎだの、勉強しろだのと。しっかりした弟を持つと大変です。先日は弟と先生と三人で王都へ行ったのですがカフェで少し食べすぎただけで、馬車ではなく歩いて邸まで帰らされましたから、歩くのには慣れています」
「はははっ。しっかりした弟さんだね。足腰がしっかりして良いんじゃない?」
「もう! 笑いすぎですわ……」
ふんと。顔を背ける。
「ん? すまない、気分を害したとか」
……ジルベルト様とどこかでお会いしたことあるのかな。何か懐かしいような。でもこんな特徴的なメガネだと記憶にありそうだしな。気のせい?
「ふふっ。冗談ですよ」
ジルベルト様はホッとしたようで笑っていた。うーん。どこかで……
「お嬢様~」
「あ、先生だ」
手を振るとこちらに来た。
「来年はきっと栄養たっぷりのサツマイモが育ちますよ! 今度領地に帰る時にロワール伯爵領に立ち寄りましょう! いやぁ、楽しみですねぇ」
先生最近楽しそうだなぁ。
「楽しい先生だね。何を教えてもらっているの?」
「勉強全般ですけど……最近は一緒に遊んでいます……研究がうまくいかないから息抜きしているんですよ。忙しい時は部屋から出てきませんしその間は自習なんですから」
「そうなの? 勉強ならルシアンに教えて貰えば良い。僕もそうしているし、テストの山を張るのが得意だから」
「すごい方とお友達になりました……」
「友達になったからには使えるものは使えば良い。勉強を教えるのに一人も二人も変わらないさ。しかも教え上手だ」
ジルベルト様もとても楽しい方だった。
「え! お役御免は困りますよ」
先生の顔色が変わったのも楽しかった。最近は宿題以外の勉強してないからね。
ジルベルト様とロワール伯爵自ら迎えてくださった。
「始めましてオフィーリア・カルメルです。本日はお世話になります」
サツマイモを譲って欲しいと言うと快く受けてくださった。ロワール伯爵領で食べたサツマイモが美味しくて家でも食べたいと、私のわがままから始まったのだけど……サツマイモはこれから国でも備蓄として栽培されるようになるそう。ロワール伯爵領ではいち早く食料として栽培されていた。
「花まつりも楽しんでくれたようだね。良かったらまたおいで。歓迎するよ」
「ありがとうございます。本当に素敵な町ですね。領民から聞きましたが領主様自ら領民と共に活動をすると……」
「キレイな町の方が犯罪は減る。キレイな町は領民の心の余裕にもつながるからね。それに私が町に行くことにより喜んでくれる領民もいるから。護衛は大変だとボヤいているけどな」
「素晴らしいです! 伯爵様を尊敬しますわ」
噂通り素晴らしい領主様です。
「ははっ。君は素直な令嬢だね。ジルベルトとはクラスが違うらしいが、仲良くしてやってくれ」
「こちらこそよろしくお願いいたします」
その後、備蓄庫に案内された。先生と庭師の方がとっても盛り上がっていた。ついていけないわ。
その様子を見ていたらジルベル様が声を掛けてきた。
「……お茶でもする? フローリア嬢の邸に比べると立派な庭ではないけれど後で庭も案内するよ」
「わぁ。嬉しいです」
ロワール領は美しい町だったので王都の邸もとてもキレイにされている。シンプルだけど見せるところは見せるという感じかな。庭の見渡せる応接室に案内された。
「このクッキーはオフィーリアが持ってきてくれたもの?」
「はい。ナッツが沢山入ってるんですよ。それとこのクッキーの上にはジャムが乗っていて私のお気に入りです」
「いただくよ。うん、美味い」
手土産にクッキーを持ってきた。ジルベルト様もお茶請けを用意してくれていたみたい。
「ジルベルト様、このレモンケーキすごく美味しいですね!」
甘酸っぱいケーキの中にレモンの皮が入っていてほろ苦で上にはレモン風味のお砂糖? がかかっている。
「庭で育てているレモンだよ。ほらあそこに」
たわわに実るレモン達。
「わぁ。素晴らしいお庭ですね」
レモンケーキはすでに二個目に手が伸びた。
「……本当に美味しそうに食べるね。どんどん与えたくなるというフローリア嬢の気持ちが分かる。これだけ喜んでくれたらうちのシェフも喜ぶよ」
またやってしまった。お母様に控えるように言われていたのにっ。お茶を飲みまったりしてから庭に案内してくれるというので、言葉に甘える。先生はまだ庭師と話をしているようだし……
ジルベルト様の邸は可愛らしいお花が多い。どれもこれも長く楽しめてエコだし低木が多くて見晴らしが良いわ。
「疲れない? 結構歩いただろう」
広いお庭だから結構歩いたけれどこれくらいは問題ない。
「全く問題ありません。食べたらその分お散歩をさせられますから、慣れています」
庭を散策するくらの脚力はある。持久力は無いけれど。
「させられる? 誰に?」
「弟です。昔は可愛かったのですが最近は口うるさくて……食べすぎだの、勉強しろだのと。しっかりした弟を持つと大変です。先日は弟と先生と三人で王都へ行ったのですがカフェで少し食べすぎただけで、馬車ではなく歩いて邸まで帰らされましたから、歩くのには慣れています」
「はははっ。しっかりした弟さんだね。足腰がしっかりして良いんじゃない?」
「もう! 笑いすぎですわ……」
ふんと。顔を背ける。
「ん? すまない、気分を害したとか」
……ジルベルト様とどこかでお会いしたことあるのかな。何か懐かしいような。でもこんな特徴的なメガネだと記憶にありそうだしな。気のせい?
「ふふっ。冗談ですよ」
ジルベルト様はホッとしたようで笑っていた。うーん。どこかで……
「お嬢様~」
「あ、先生だ」
手を振るとこちらに来た。
「来年はきっと栄養たっぷりのサツマイモが育ちますよ! 今度領地に帰る時にロワール伯爵領に立ち寄りましょう! いやぁ、楽しみですねぇ」
先生最近楽しそうだなぁ。
「楽しい先生だね。何を教えてもらっているの?」
「勉強全般ですけど……最近は一緒に遊んでいます……研究がうまくいかないから息抜きしているんですよ。忙しい時は部屋から出てきませんしその間は自習なんですから」
「そうなの? 勉強ならルシアンに教えて貰えば良い。僕もそうしているし、テストの山を張るのが得意だから」
「すごい方とお友達になりました……」
「友達になったからには使えるものは使えば良い。勉強を教えるのに一人も二人も変わらないさ。しかも教え上手だ」
ジルベルト様もとても楽しい方だった。
「え! お役御免は困りますよ」
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