10 / 61
王都に戻る日
しおりを挟む
お父様が迎えに来た。学園に入学する為王都の邸に戻る事になった。
「えー。帰りたくない。王都の学校じゃなきゃダメ?」
「貴族の学園は王都にしかない」
「やっぱりダメか……リューはどうする?」
身体は丈夫になっているけどたまに咳をする事もある。本人は隠しているけれど知っている。
「一緒に行くよ。領地に来たければいつでも来れるからね」
病弱だったリューの口からそんな事が聞ける日が来るなんて。領地についてきて良かった。私の入学と共に家族で王都へ戻る事になった。帰りはルート変更をして豪華なホテルに家族で泊まったりして旅行気分だった。
「わぁ。久しぶりに王都に来たけれど変わったようで変わってないね」
工事は続いていて、いまだ埃っぽい。お父様はリューに手洗いうがいの徹底と週に一度お医者様に診てもらうことなどを約束させていた。リューも返事をしていたし、埃を吸わないように出かける時は口を覆うようにと徹底していた。
弱っているリューを見たくないし、リュー自身が嫌だろうし、皆に気を遣われたくないだろうから、この件に関して口出しをしてはいけないと思った。
さっそく明日は出来上がった制服の確認をするようだし、教科書とか筆記用具を揃えるために商人が家に来るんだって。王都に戻る旨を友人達にも伝えてあるから、近々近況報告を兼ねてのお茶会をする予定もある。学園の情報も聞いておきたい。
翌日制服を合わせていると、お母様の友人が来ていてお茶会をするとの事。学生時代からの友人達で今も仲が良い。後で挨拶にくるようにと言われて制服や必要なものを揃えた後、挨拶へと行く。
「あら、オフィーリアちゃん、しばらく見ないうちになんて可愛いらしいレディになったのかしら」
ハリーのお母様だわ。久しぶりに会った。領地での暮らしが楽しくてすっかり忘れていた……
「おばさ、」
っと。お母様の友人とはいえ、おばさまというのも失礼よね。久しぶりにお会いしたのだから
「失礼致しました。子爵夫人お久しぶりです。お会いできて嬉しいです。お元気でしたか?」
「まぁ、オフィーリアちゃん。今まで通りおばさまで良いのよ。他人行儀な呼び方はよして頂戴な」
他人です。
「勿体無いお言葉ですわ。子爵様やハリー様も元気にしておられますか?」
「もう、オフィーリアちゃんったら。今まで通りで良いのに。主人もハリーも元気よ。良かったらまたハリーと仲良くしてあげてね。オフィーリアちゃんが領地へ行ってしまって寂しがっていたのよ」
気楽に話せる相手がいなくなったとかそんなレベルでしょう。学園ではきっとモテているでしょうから(顔が良い分)私のことを思い出す暇なんてないはず。本当に寂しいと思っているなら手紙の一つでもよこしてくるだろうから。それもなかった。故にどうでも良いとか思っていたんだろうと、想像がついた。
「私たちも年頃ですから以前のように……というわけにはいかなさそうですが、機会があればご挨拶したいと思います」
にこりと笑い、他にも来ていたお母様のお友達に挨拶をした。中には息子と一度会ってみない? といったお誘いもあった。
「機会があれば? その、是非……」
会いたいとは思わないのだけど断るのも失礼なのかもしれないし、しどろもどろになって答えた。
「……なんで疑問系なのよ。ごめんなさいね。王都に戻ってきたばかりで学園の準備もバタバタとしていてまだ余裕がないっていうのは本当なのよ。アンドリューも向こうで療養して元気になってきたものだから、この子達どこへ行くかとかそんな話ばかりしていて……」
新しいお店がたくさん出来ているんだもの。行かなきゃ勿体無いでしょ! 正直流行りとか分からないから、付いてかなきゃバカにされるよね?
「あら。変わらず仲が良いのね。アンドリュー君はお姉様っ子だったものね」
ハリーの母、子爵夫人が懐かしそうに言った。
「オフィーリア、忙しいのに挨拶に来てくれてありがとうね。戻って良いわよ」
礼をして邸に入った。商人は学用品以外にも品物を持ってきてくれていて、気に入ったものは購入してもいいとお父様が言ってくれた。アンドリューはまだ本を選んでいたので、私もその様子を眺めていた。
イラストが多い本って見ていて楽しいわよね。そう思い何冊か手に取った。するとなぜか先生も参加し始めていた。先生は領地にいる間だけではなく王都に戻ってきても私達の先生をしてくれることになった。
「給料も申し分なく、寝食にもありつける。研究費まで援助してくださるのだから、お嬢様には上の下と言わず上の中くらいの成績をお約束します」
先生はお父様に宣言していた。ガリ勉反対! 普通で良い! と私が言っても、先生がやる気になっているのだから期待に応えなさい。と言われた!
リューはすでにトップクラスに入れるくらい優秀だし、先生は研究者なのにリューの剣術の相手までしているからお父様やお母様からも気に入られて信頼があるのよね。
一体何冊選んでいるよの、先生ったら。うちの図書館に置く本も選んでいる? あ、そうですか。楽しそうで何よりですね。
「えー。帰りたくない。王都の学校じゃなきゃダメ?」
「貴族の学園は王都にしかない」
「やっぱりダメか……リューはどうする?」
身体は丈夫になっているけどたまに咳をする事もある。本人は隠しているけれど知っている。
「一緒に行くよ。領地に来たければいつでも来れるからね」
病弱だったリューの口からそんな事が聞ける日が来るなんて。領地についてきて良かった。私の入学と共に家族で王都へ戻る事になった。帰りはルート変更をして豪華なホテルに家族で泊まったりして旅行気分だった。
「わぁ。久しぶりに王都に来たけれど変わったようで変わってないね」
工事は続いていて、いまだ埃っぽい。お父様はリューに手洗いうがいの徹底と週に一度お医者様に診てもらうことなどを約束させていた。リューも返事をしていたし、埃を吸わないように出かける時は口を覆うようにと徹底していた。
弱っているリューを見たくないし、リュー自身が嫌だろうし、皆に気を遣われたくないだろうから、この件に関して口出しをしてはいけないと思った。
さっそく明日は出来上がった制服の確認をするようだし、教科書とか筆記用具を揃えるために商人が家に来るんだって。王都に戻る旨を友人達にも伝えてあるから、近々近況報告を兼ねてのお茶会をする予定もある。学園の情報も聞いておきたい。
翌日制服を合わせていると、お母様の友人が来ていてお茶会をするとの事。学生時代からの友人達で今も仲が良い。後で挨拶にくるようにと言われて制服や必要なものを揃えた後、挨拶へと行く。
「あら、オフィーリアちゃん、しばらく見ないうちになんて可愛いらしいレディになったのかしら」
ハリーのお母様だわ。久しぶりに会った。領地での暮らしが楽しくてすっかり忘れていた……
「おばさ、」
っと。お母様の友人とはいえ、おばさまというのも失礼よね。久しぶりにお会いしたのだから
「失礼致しました。子爵夫人お久しぶりです。お会いできて嬉しいです。お元気でしたか?」
「まぁ、オフィーリアちゃん。今まで通りおばさまで良いのよ。他人行儀な呼び方はよして頂戴な」
他人です。
「勿体無いお言葉ですわ。子爵様やハリー様も元気にしておられますか?」
「もう、オフィーリアちゃんったら。今まで通りで良いのに。主人もハリーも元気よ。良かったらまたハリーと仲良くしてあげてね。オフィーリアちゃんが領地へ行ってしまって寂しがっていたのよ」
気楽に話せる相手がいなくなったとかそんなレベルでしょう。学園ではきっとモテているでしょうから(顔が良い分)私のことを思い出す暇なんてないはず。本当に寂しいと思っているなら手紙の一つでもよこしてくるだろうから。それもなかった。故にどうでも良いとか思っていたんだろうと、想像がついた。
「私たちも年頃ですから以前のように……というわけにはいかなさそうですが、機会があればご挨拶したいと思います」
にこりと笑い、他にも来ていたお母様のお友達に挨拶をした。中には息子と一度会ってみない? といったお誘いもあった。
「機会があれば? その、是非……」
会いたいとは思わないのだけど断るのも失礼なのかもしれないし、しどろもどろになって答えた。
「……なんで疑問系なのよ。ごめんなさいね。王都に戻ってきたばかりで学園の準備もバタバタとしていてまだ余裕がないっていうのは本当なのよ。アンドリューも向こうで療養して元気になってきたものだから、この子達どこへ行くかとかそんな話ばかりしていて……」
新しいお店がたくさん出来ているんだもの。行かなきゃ勿体無いでしょ! 正直流行りとか分からないから、付いてかなきゃバカにされるよね?
「あら。変わらず仲が良いのね。アンドリュー君はお姉様っ子だったものね」
ハリーの母、子爵夫人が懐かしそうに言った。
「オフィーリア、忙しいのに挨拶に来てくれてありがとうね。戻って良いわよ」
礼をして邸に入った。商人は学用品以外にも品物を持ってきてくれていて、気に入ったものは購入してもいいとお父様が言ってくれた。アンドリューはまだ本を選んでいたので、私もその様子を眺めていた。
イラストが多い本って見ていて楽しいわよね。そう思い何冊か手に取った。するとなぜか先生も参加し始めていた。先生は領地にいる間だけではなく王都に戻ってきても私達の先生をしてくれることになった。
「給料も申し分なく、寝食にもありつける。研究費まで援助してくださるのだから、お嬢様には上の下と言わず上の中くらいの成績をお約束します」
先生はお父様に宣言していた。ガリ勉反対! 普通で良い! と私が言っても、先生がやる気になっているのだから期待に応えなさい。と言われた!
リューはすでにトップクラスに入れるくらい優秀だし、先生は研究者なのにリューの剣術の相手までしているからお父様やお母様からも気に入られて信頼があるのよね。
一体何冊選んでいるよの、先生ったら。うちの図書館に置く本も選んでいる? あ、そうですか。楽しそうで何よりですね。
6
お気に入りに追加
1,070
あなたにおすすめの小説
【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
酒の席での戯言ですのよ。
ぽんぽこ狸
恋愛
成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。
何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。
そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。
【1/23取り下げ予定】あなたたちに捨てられた私はようやく幸せになれそうです
gacchi
恋愛
伯爵家の長女として生まれたアリアンヌは妹マーガレットが生まれたことで育児放棄され、伯父の公爵家の屋敷で暮らしていた。一緒に育った公爵令息リオネルと婚約の約束をしたが、父親にむりやり伯爵家に連れて帰られてしまう。しかも第二王子との婚約が決まったという。貴族令嬢として政略結婚を受け入れようと覚悟を決めるが、伯爵家にはアリアンヌの居場所はなく、婚約者の第二王子にもなぜか嫌われている。学園の二年目、婚約者や妹に虐げられながらも耐えていたが、ある日呼び出されて婚約破棄と伯爵家の籍から外されたことが告げられる。修道院に向かう前にリオ兄様にお別れするために公爵家を訪ねると…… 書籍化のため1/23に取り下げ予定です。
今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて
nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
はずれのわたしで、ごめんなさい。
ふまさ
恋愛
姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。
婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。
こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。
そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。
【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」
婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からくなっていました。
婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/01 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過
2022/07/29 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過
2022/02/15 小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位
2022/02/12 完結
2021/11/30 小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位
2021/11/29 アルファポリス HOT2位
2021/12/03 カクヨム 恋愛(週間)6位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる