私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの

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更に美しくなった

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「リアン様」

 そう言って花が咲いたような笑顔で駆けてくるマリア。

「誕生日おめでとう。当日に来られなくて申し訳なかった」

 誕生日から既に1週間経っていた。忙しくてなんとかパーティーには参加できたと言う感じだ。マリアの頬にキスをする。周りからの視線は刺さるように痛いがマリアが喜んでくれるし俺も触れたい。

「家族だけでマリアの誕生日を祝えたので逆に良かったよな? 今年で最後知れないし」

 夫人とヴェルナー殿の顔を見る侯爵……ってなんですか? とは言えない。なんかあったら別れさせる……とか? 恐ろしい。

「あなたったら、卿にそんなことを言ってはダメですよ! ヴェルナーも頷かないのっ! ごめんなさいね」

 夫人だよ。そんな優しい言葉をかけてくれるのは……

「リアン様、今日はデートしてくれるんでしょう? 行きたいカフェがあるの。連れて行って下さる?」

 侯爵とヴェルナー殿は各々腕を組んで笑顔で俺を睨み、夫人は帽子と日傘をマリアに渡していた……


「それでは……失礼します」



 侯爵家に世話になるのは俺の為にならないと思いホテルを取った。滞在期間は5日間。マリアはぶーぶー文句を言っていたが侯爵は仕事もあるんだから邪魔しちゃいけない。と言ってくれた。
 王宮に行き今回の誘拐事件の真相を話してこなくてはいけない。憂鬱だ……

「マリア、また綺麗になったな」

「えへへ。戻ってくるたびに言われるの。リアンさんに愛されているからだよね」

 言葉に語弊があるようだが間違いではない。

「そうだな、間違いない」
 
 マリアの髪を1束取りキスをした。

「パパとなんの話をしていたの? 怒られた?」

 ……殴られたなんて言えない。

「まぁ、想定の範囲内だよ……侯爵にはマリアの事を任せてくださいと話をしたよ。せっかく認めていただいたんだから侯爵にも安心してもらいたい」

 ……少し話を盛った。怖かったよなんて情けなくて言えない。

 馬車を降りてすぐにカフェへ向かった。取り敢えず甘いものを食べて落ち着こう。マリアは本当に幸せそうに食べるんだよな。屋敷のみんながこの顔を見て更に美味しいものを食べさせようと気合を入れるのが分かる。

「マリアには何をプレゼントしたら喜んでくれるのだろうか。物欲があまりないよな」

「え? あるよ」

「何が欲しいんだ?」

「リアンさんとの子供が欲しいよ」

 ぶっっ。お茶を口に含んでいるときにいうな! ゴホッゴホッ……

「……それは追々」

「約束ね!」

「きっとその言葉を後悔する日が来るからな」



 そんな日が来たら俺はもう我慢できない。抱き潰すだろう……

 マリアと歩いていると皆が振り向く。それだけ美しい令嬢なのだ。最近バルト殿下や侯爵に平凡だと言われ続けて身なりにも気をつけるようになった。

 
 そして自分の置かれている身分に胡座を書いてはいけない。マリアが熱烈に好きだと言ってくれる事は当たり前ではない。
 

「リアンさん、オシャレになったね。それ以上かっこよくなってどうするの? マリアの事めろめろにするの?」

 マリアは美的感覚がおかしいのではないだろうか? 俺は侯爵のようなイケメンではないし、バルト殿下やジェラール殿下のように若さも自信もないんだ。


「マリアにだけモテたいからマリアがカッコいいと言ってくれるだけで満足だよ。マリアが俺のことを恥ずかしく思わないように気をつけるようになったんだ」

 以前より鍛えているし身体には自信がある。腹が出るなんてもってのほかだ! 絶対に中年太りにはならない!
 
 酒も控えているし、バランスの取れた食事を取るように心がけている。健康第一だ!
 

 因みにデザイナー兼スタイリストと契約したのは内緒だ。



******

次回最終話となります。
 
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