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真っ直ぐすぎて
しおりを挟む「やっと帰ってくれたね。リアンさん行こう」
立ち上がって腕を掴むが動かない。
「話がある」
沈んだ表情に声を聞く限り真面目な話をするようだ。
「なに?」
渋々ソファに腰をかけるマリアベル。
「さっきも言った通りだ。俺の親族が誘拐事件に関わっている。治安を悪くさせていたのもそうだ」
深刻な顔で真面目な口調。この話終わったんじゃないの? そう思い困った顔をしてリアンを見るマリアベル。
「それはさっき聞いたよ。もうしないでしょ? それにその後も面倒見るんでしょう? 私も手伝わせて欲しいよ」
「お前の国にも報告をするつもりで、大使として俺が行く事になっている。そこでロマーニ侯爵と話をするつもりだった。ロマーニ侯爵には報告をしていたから既にご存じなんだ」
呆れてものが言えないと言っていた。一国の王子がアレだ……ダメである事は知っていたが犯罪までとは……とお叱りを受けた。
「そう」
「だから俺はお前にふさわしくない、そう思いながら手放したくなくて、先日はひどい事をした」
思いっきり唇を奪ってしまった……反省をせざるおえない。
「なんで? マリアはリアンさんが好きだから嬉しかったよ」
「一度婚約は保留しようかと思っている」
「……!」
「考えてみろ、」
「考えない! リアンさんって後ろめたいとか良いながらあんなキスをしてきたり、優しい言葉で期待持たせるようなこと言ったりして何がしたいの! マリアと結婚するんでしょう! リアンさんは優しすぎるんだよ! せっかく思いが通じ合ったのに……リアンさんのバカ! マリアはリアンさんとじゃないと結婚しないの! リアンさんが悪い人でも、極悪人でも良いけど、マリアのことが好きなのにそんな事ばっかり言うリアンさんは嫌い」
「……………………」
「そうやって黙るのは悪い癖だよ! 大人の嫌なところ!」
「……………………」
「マリアと結婚したくないのなら嫌いになった。って言ってよ! お前のことは嫌いだって突き放してよ! 中途半端にやさしくしないでよ!」
「……それは出来ない」
「だったら今までのダメだったところを良くしていってよ! もしパパに結婚を反対されても抗ってよ! リアンさん出来るでしょう! 出来ないのなら今ここで嫌いって言って!」
「マリアはそれで良いのか?」
「マリアのことはどうでも良いの! リアンさんはいつも私の事ばっかり優先するけれど、リアンさんの意見を聞きたいの! マリアの事好きなの、嫌いなの? どっち!」
「それは好きだ」
「じゃあもう迷わないで、愛してるって言って抱きしめてよ……不安になるよ」
泣きそうな顔で俺を見てくる。悲痛な顔に胸を打たれる。なんて情けないのだろうか……マリアを愛しているのに。こんな年下の子でもわかる簡単な事が大人になったらわからなくなるんだ。答えはシンプルなのに。
「……悪かった。マリアの事愛しているよ。こんな俺でも変わらず愛してくれてありがとう。マリアの提案はとても嬉しい……これからの俺を見ていてくれ。そして手伝って欲しい。心が揺れてしまった、情けないな……」
優しく抱きしめる。
「もう二度と言わないからね」
あぁ、温かい……
「あぁ、道を間違えそうになったらまた怒ってくれ……」
「寄り道なんてさせないから、リアンさんはマリアのところに真っ直ぐに帰ってきて!」
浮気はするなと言うことか? 悪の道に足を踏み入れるなと言う事か? なんでも良い。
「もう尻に敷かれている気分だ、さすが押しかけ女房だな。降参だ」
「きっとリアンさんは降参し続ける事になるんだから、変な気は起こさない方が良いよ。リアンさんはリアンさんが思っている以上にマリアの事すきだから」
! すごいことを言ってくるな……まぁ間違いではない。
「そうだな、やっぱりマリアは凄いよ」
努力家で真っ直ぐで可愛くて美しくて、心が綺麗で尚且つ気高い……俺には勿体ない。だから……
「ずっと俺のそばにいてくれ……」
マリアをこれでもかと言うくらいぎゅっと抱きしめた。
最後の外食になったかも知れないので記念日に国の最高峰のホテルのスイートルームで食事をとった。もちろん帰るつもりだったがマリアが泊まりたいと言ったので、泊まる事になった……マリアのリクエストで一緒に眠る事になり軽く頬にキスをしてベッドに入った。
「うで枕してくれないの?」
遠いところを一生懸命見て耐えた。頑張れ自分。どう考えてももう手放せやしない……バカだな、本当に。
腕の中で眠る愛しくて強くて可愛いマリア。もう迷いは捨てた。
朝が来てマリアが目覚める。目覚めてすぐにその瞳に俺の顔を映してくれるのが嬉しくて堪らなかった。
「おはよう、リアンさん」
「あぁ、おはようマリア」
チュっとおでこにキスをすると目を細めて喜ぶマリア。こんな事で素直に喜んでくれるんだな……はぁっ。可愛い。
我慢だ。
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