私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの

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久しぶりの再会

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「ただいま戻りました……」

 宝物庫の鍵を閉めたところで、リアンさんが帰ってきた。急いで振り向く!


「リアン様、お帰りになるのをお待ちしていました。お会いできてとても嬉しいです」

 と言って挨拶をした。本当はリアンさーん! 会いたかったよ! って言って飛びつきたいところを抑えた。勉強の成果をお見せするのだ。

 シンプルなワンピースだけど品よく見えるように。髪の毛もサラサラのストレートのハーフアップ。苦手なヒールの靴も履きこなしている。さぁ! どうだ!

 ……なんか言ってよ。



「あら……マリーちゃんの美しさに無言になったわ。情けない」

「木偶の棒とはこの事を言うのか……わしらは邪魔だな、退散するとしよう」

 そう言ってお二人は笑いながら、いそいそと去っていった。

「……リアンさん? どうしたの? なんか変?」


 目を瞑って天井を見上げるリアンさん。

「……すごく美しくなったな。驚いてなんと声をかければ良いか一瞬悩んだくらいだ」

「まぁ。ありがとう存じます。リアンさんの言葉が一番嬉しいです。リアンさん私に会えて嬉しい?」

 リアンさんに近づき腕を組んだ。



「言わせたいのか……」

「えぇ。勿論。わたくしはこの日を来るのを待ち侘びていました。まだ学生の身分ですから親の承諾なしに来られませんもの」

「会いに行ければ良かったのだが、今が正念場で逃げ出すわけには行かないからな。マリア、よく来てくれた俺も会いたかったよ」

「はい」


 私の部屋に行くことになった。

「驚きました。まさかお部屋が用意されているなんて」

「せっかくだからここにいる間はゆっくり過ごしてほしいと思った。ゲストルームじゃ落ち着かないだろう。部屋が近い方が何かと便利だと思った」

 ここはちゃんと大人しく対面に腰をかけた。本当は隣に座りたいんだけど……先生に夫婦の営みについての授業を聞いてから恥ずかしくなってしまった。もう誘惑作戦はしない事にした。子供の話をしていたけれど子供の作り方って……

 知らなかったんだもん。パパやママは教えてくれなかったし、もちろん先生も。愛し合っていたら出来る訳では無いんだよね。行為自体は愛し合う。って言うらしいんだけど……それは一緒に寝る。と言ったら怒られる訳だ。


「はい。お気遣い頂きありがとうございます」

 妙に他人行儀になってしまった。



「どうかしたのか? いつもと様子が違う。旅の疲れか? それとも熱があるのか?」

 リアンさんが立ち上がり私の横に腰掛けおでこに手をやった。

「ひゃあ……」

「……なんだよ、びっくりするじゃないか」


 ……今更ながらリアンさんの手って大きくてゴツゴツしてて優しくて男の人の手なんだ。そう思うと一気に緊張してきた。

「だって……リアンさんが私に触れたから」

 顔が赤くなり緊張のあまり涙目になる。それを見てリアンさんは目を大きく見開きパッと視線を逸らし手を退かした。

「そ、そうか……元気なら良い」

 席を離れようとするリアンさんの腕を引っ張る。

「ち、違うの。リアンさん。離れちゃ嫌」

「お、おいっ」

 不意にリアンさんの腕を引っ張ったものだからリアンさんが体制を崩した。

 力が入らなかったのかどさっとソファに押し倒されてしまった。

「きゃっ」

 目が合うとリアンさんは気まずそうに

「悪い、どこも打ってないか?」

「うん。私こそごめんなさい。急に引っ張ったから」

 ……間近でリアンさんを見ることって今までもあったけれど、こんなに男らしかったのか……と思うと胸がドキドキして止まらない。緊張して離れたいけれど、離れられない。そんな感じだ。

「いや、」

 気まずそうに体を起こし、私の事も起こしてくれた。

 しばらく無言だったけれど……

「……マリアにおかえりと言われるのは悪くないな。弟が言っていた事がよくわかるよ」

「デビッド様がどうかしたの?」

 デビッド様とはリアンさんの実弟で騎士団に所属している。早くに結婚されてお子様は八歳と六歳の男の子と、五歳の女の子の父親だ。王位継承権は一応あるらしいけれど、結婚して家から出たのでその時に永久に放棄する。と言ったらしい。それが認められていて、リアンさんも放棄したかったのだが、王家に何かあった時にと言われ議会が許さなかったとか? そんな事があってリアンさんが戻ってきて、王太子に子供ができたら放棄。と言う事になり、やっと放棄出来たみたい。争いごとはもうごめんだそうです。

「デビッドは早くに結婚しただろう? 家族仲もいいから疲れて帰ってきた時に妻と子供の顔を見たらまた明日も頑張ろうと言う気持ちになるそうだ。マリアの顔見たら明日も頑張れそうだと言う気持ちが芽生えてきた……どうやら思っていた以上にマリアに会いたかったみたいだな」

 きゃぁぁっ! 嬉しいよ。でもメイド達がいるから我慢している。

「それは……私も一緒。待っていたらリアンさんが帰ってきてくれるでしょう? 当たり前じゃないのにそれが当然だと思ってしまうの」

 昔はリアンさんが待っている間は本を読んだりして待っていたけれど待つ時間は嫌いじゃない。待った時間だけ会う喜びがあるって知っているから。

「半年間会えなかったけれど、今日会える日の為だったんだね。長かったけどリアンさんの顔を見るとあっという間だったって思えるから不思議だね」


 そういうと、抱きしめられてしまった。
 

 

 
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