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授業
しおりを挟むリアンさんの家から派遣された先生は厳しいけれど褒め上手! 王族に所縁のある大公家だから歴史を覚える事が最優先だった。なぜか私の家庭教師のモリス先生も一緒に授業を受けていた。
これは花嫁修行の一環でもあるから私しか受けられない内容もある。そこはちゃんとお互い分かっているから影響はない。
モリス先生は学会に発表したあとはちょっとした時の人になった。家庭教師に是非!と言う貴族の家からの申し出は全て断って私が学園を卒業したらパパが建築を急がせているラボで研究三昧予定なんだって。
貴族の家庭教師をする場合は何人もの家の子を掛け持ちする事が多いんだそうだけど、モリス先生はうちの居心地の良さと待遇に満足しているらしく、他の貴族の家に行く気はないそうだ。『そんな時間があったら研究しますよ』とパパに言っていた。
パパはモリス先生のパトロンになったみたい。兄さまとも話が合うみたいだから、モリス先生は将来安泰だね。
モリス先生は学ぶことが大好きだし、リアンさんの家から派遣された先生とも話が合うようで意見交換なども頻繁にしている。
そしてまた月日が経って、長期休暇に入ることになる。リアンさんが爵位を継ぐ日は結婚と同時になった。その為忙しくて私に会いに来れない。申し訳ない。と手紙を貰った。私がそっちに会いに行くから気にしないで下さい。と手紙を送ったら『待っている。会うのを楽しみにしているよ』って返事が返ってきた! もう恋人同士のやり取りだよね! ラブレターだよー。
それでさらにやる気がアップして、先生に褒められた。長期休暇でリアンさんの家にお世話になるんだけど、遊びに行くわけではなく、隣国特有のダンスの練習だとか隣国の貴族の名前と顔を覚えたりとか、親戚付き合いの為お茶会を開くと夫人に言われているので、やる事は盛り沢山なのだ。
私についてきてくれているメイドも先生も久しぶりの帰国だから喜んでいた。
******
大公家の屋敷に着くと以前は客室だったのに部屋が用意されていて、リアンさんの部屋の近くになっていた。結婚すると部屋を移動するみたいで現在改装中だと聞いた。改装中の棟へ行くと沢山の人たちが汗を流して頑張ってくれていたので、お礼を言った。
なんでも有名な建築家で屋敷の良さを生かして新しくデザインしてくれたようだ。どういう感じが良いかざっくりで良いから聞かせてくれ。とリアンさんに言われて、風通りが良くて明るい感じが良い。とだけ伝えた。
出来上がりが楽しみだ。来たは良いものの作業の邪魔になるので部屋に戻って、夫人とお茶をする為に簡単なドレスに着替えてサロンへ行くと、閣下もいらして三人でお茶をすることになった。
「マリーちゃん、どうか母と呼んでちょうだい。この人の事は父ね!」
夫人とか閣下とか他人行儀だからって言ってくれたのでありがたく呼ばせてもらうことにした。
「お義父様、お義母様ありがとうございます。至らぬ点もまだまだ沢山ありますがどうかよろしくお願い致します」
リアンさん曰くお義父様は元王族で厳しい方だと聞いていたけれど、すっごい優しくてお茶目で驚くことが多い。よくお義母様に怒られるんですって。お義母様は古くからある伯爵家出身で幼馴染のような関係で、お義父様を怒る事が出来る唯一の人なんだそう。
「マリーちゃん、定期報告では先生が褒めていましたよ。時間が足りないようで急ピッチで授業をしているにも関わらず予習・復習もしているんですって? 彼女は厳しくて王子達も逃げ回るくらいだったのよ」
笑いながらお義母様は言った。
「確かに先生は厳しいですが、すごく褒め上手で小さい頃のリアン様のお話もして下さいますし、楽しいです。素敵な先生を派遣していただいてありがとうございます」
先生は王子達やリアンさんの事も教えていたんだって! 小さい頃のリアンさんどんな感じだったんだろう……って思いながら話を聞くのが好き。
「マリーは本当にリアンの事が好きなんだなぁ」
お義父様は私のことをマリーと呼ぶ。お義母様も含め認めてくれているみたいで嬉しい。
「はい。大好きです」
お義父様もお義母様も、貴族と言うのは誰しも仮面を被って生活しているから家では仮面を外して自分らしく生活するようにと言われて驚いた! お義父様は元王族だし、お義母様も厳しいと思っていたのに……拍子抜けだ。お義父様もお義母様も屋敷の中くらいはしがらみがないように自由に暮らしたいんですって。そんな教育方針? のせいかリアンさんも屋敷内ではラフな感じなんだって。
王宮での仕事は肩が凝るって言ってたもんね。その事をママに伝えると、うちもそんな感じよ。パパも楽に考えているけれど外ではちゃんとしているし、マリーはペルソナ家と血縁関係があるのだから仮面をちゃんと被れるわよ。
ペルソナって仮面って意味もあるもんね。
伯父さん達ってきっといろんな顔を持っているのかもしれない。私には良い伯父さんなんだけど、ハビエルとアレックスは恐ろしいと言っていたから裏の顔もあるよね。大貴族だもん……あまり深く考えないでおこう。
「屋敷の使用人ともやっていけそうだな。執事が褒めていたぞ。マリーはやる気に満ち溢れていると聞いた」
若いからって手を抜くわけにはいけないもの。私には野望がある。可愛いお嫁さんで且つリアンさんを支える妻になるのだから、それくらいは大したことではない。
「まだまだです。若いと言うだけで見下されないように、オットー家の名前に恥じぬように致します」
と言うとお義父様は執事に目を配るとトレーに乗せた豪華な鍵を私の前に置いた。
「……これはなんでしょう?」
はて? 鍵だけど宝石が付いていてアクセサリーにもなりそうな見た目の鍵だった。恐れ多くて触れない。
「それはマリーの分で宝物庫の鍵だ。そこの中にあるものは好きに使って良い。鍵が二つあるだろう?」
「はい」
「小さい方の鍵はマリーの大事な物を入れておく用の鍵だ。宝物庫の中に気に入ったものが有ればよけておくと良い」
そう言われて連れて行かれた宝物庫は厳重で冷や汗が出た……中は勿論……言葉を失った。
「時間がある時ゆっくり見てまわれば良い。ここは限られた者しか入れん故、鍵は執事に預けておきなさい。因みに執事は鍵を預かるが、この鍵を使えるのはマリーだけだ。特殊な仕掛けになっておるから安心せよ」
特殊な仕掛け……恐ろしいから今は聞かないでおこう。
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