63 / 81
リアン陥落
しおりを挟む~リアン視点~
「マリアが……好きだ。ちゃんと一人の女性として……」
マリアベルは溢れてしまうんじゃないかというほど目を大きく見開いていた。
「マリア? どうした?」
マリアの頬に手を当てたら、ぼんっと音がしそうなくらい急に真っ赤な顔になった。
「あ、え、っと。夢かもしれない……起きたらリアンさんがいなかったらどうしよう……都合の良い夢見ちゃったのかも、」
ボソボソと妙なことを口走るマリアベル
「現実だぞ。人の告白を聞き流すなよ」
マリアベルは頬に当てられたリアンの手をつねる。
「痛っ! 何するんだよ……そういう時は自分の頬をつねるものだろ!」
手を引っ込め痛そうにつねられた箇所をさする。
「現実……なの?」
「あぁ、」
「もう一回言って!」
そう言ってリアンの両手をぎゅっと握るマリアベル。緊張した眼差しで深呼吸をするリアン。
「フロリアン・フォン・オットーはマリアベル・ロマーニ嬢を愛しています」
先ほどの告白よりもちゃんとした言葉にマリアベルは嬉しくて何も言えないようだ。
「……おい、何か言ってくれよ」
マリアベルはようやくはっと我にかえった。
「フロリアン・フォン・オットー様……わたくしもお慕いしています」
ちゃんと返事を返すマリアベル。いつもの軽い感じではなかった。
「……約束通り? 本当の家族になるか!」
マリアベルはぱぁっーと明るい笑顔を見せた。
「うん! なる! 子供も最低二人は欲しいね」
「……あ、あぁ。そうだな。マリアに似た明るい子だと助かるな」
子供か……。出来れば楽しくなりそうだな。あの小さかったマリアと結婚をすることになるとはな……
「長期戦かと思ってたのに……リアンさんありがとう。マリア頑張って勉強してリアンさんの隣に居ても恥ずかしくないようになるからね! お邸の皆にも認めてもらえるように努力するから、もう少し大人になるまで待ってて」
「俺も頑張るよ……」
目線が合わさりお互い笑顔になる。
恥ずかしさのあまり目を瞑るマリアベル。その様子を見てリアンは顔を近づけおでこに軽くキスをした。
「そこは口じゃないんだ……」
「結婚式まで……取っておくよ」
「むぅ……」
「膨れた顔も可愛いぞ」
なんとなくではなくちゃんと甘酸っぱい雰囲気の二人だった。
使用人達は遠目でそっと見守っていた。大公家の使用人達は眩しいものでも見るような眼差しだ。結婚をしないと思っていたリアンが他国へ行き帰ってきたかと思ったら、会わせたい人がいる。将来一緒になりたいと思っている。家を継ぐ。と言いリアンの両親は大層喜んだ。相手はリアンが逃亡していた時に保護した女の子。
女の子の家族が見つけ出さなければ、この家に迎え入れられていたはずだった。
その女の子は隣の国の侯爵家の令嬢で身分的にも問題ない。リアンの両親はすぐに行動に移す。
『この機会を逃したら、もう結婚するなんて言わないぞ。兄上に連絡だ、いや。直接話し合ってくる!』
リアンの父は臣下に降り兄である国王陛下を兄上と呼ぶことは無くなった。焦りのあまり
『兄上! 話がある!』と王宮に駆け込んだ。
貴族の結婚には国王陛下の承認が必要で、忙しい陛下の承認を得るために長くて数ヶ月待つような事も稀にあるが、そんなに待てない。書類も面倒……まずは口頭でオッケーを貰いに言ったのだ。
『おぉ! フロリアンが結婚か! 隣国の侯爵令嬢? ロマーニ家と言えば隣国の王家からの信頼が厚い家ではないか。わしもあった事がある。承認するぞ』
本人達の思いよりも光のスピードでとんとん拍子に話は進む。
そして今日を迎えた。どんなお嬢様なんでしょうね。可愛らしい方だと良いですね。とメイド達は楽しみにしていた。ロマーニ侯爵一家を迎えてその家族の美しさに皆が無言になった。
そしてリアンの相手のマリアベルを見ると、あどけなさが残る美しい少女だった。
リアンを見る目が本当に嬉しそうで、見ているだけで幸せになれるような雰囲気を持つマリアベルに使用人達は既に心を掴まれた。
そしてあのフロリアンがマリアベルに膝枕をされ照れている様子や話は聞こえないが甘い雰囲気の二人に、にやにやが止まらないのだ。
「あら? リアンとマリーちゃんは?」
お茶の準備をさせていたメイド達にリアンの母が声を掛ける。
「奥様、今お声をかけますとお邪魔かと……」
そっとリアンとマリアベルを見るリアン母。
「あら! 思っていた以上に仲が良いのね。これはお式が楽しみね。夫人とお式についてお話をしてくるわね」
息子と義娘の様子を見て足取りが軽くなる。
リアン母とマリアベル母によって結婚式の話も進められる事になる。
明日は教会での婚約式。ついにリアンとマリアベルが正式に婚約をした。
86
お気に入りに追加
4,239
あなたにおすすめの小説
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

突然決められた婚約者は人気者だそうです。押し付けられたに違いないので断ってもらおうと思います。
橘ハルシ
恋愛
ごくごく普通の伯爵令嬢リーディアに、突然、降って湧いた婚約話。相手は、騎士団長の叔父の部下。侍女に聞くと、どうやら社交界で超人気の男性らしい。こんな釣り合わない相手、絶対に叔父が権力を使って、無理強いしたに違いない!
リーディアは相手に遠慮なく断ってくれるよう頼みに騎士団へ乗り込むが、両親も叔父も相手のことを教えてくれなかったため、全く知らない相手を一人で探す羽目になる。
怪しい変装をして、騎士団内をうろついていたリーディアは一人の青年と出会い、そのまま一緒に婚約者候補を探すことに。
しかしその青年といるうちに、リーディアは彼に好意を抱いてしまう。
全21話(本編20話+番外編1話)です。

私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

婚約破棄されたので、隠していた力を解放します
ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」
豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。
周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。
私は、この状況をただ静かに見つめていた。
「……そうですか」
あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。
婚約破棄、大いに結構。
慰謝料でも請求してやりますか。
私には隠された力がある。
これからは自由に生きるとしよう。

政略結婚で「新興国の王女のくせに」と馬鹿にされたので反撃します
nanahi
恋愛
政略結婚により新興国クリューガーから因習漂う隣国に嫁いだ王女イーリス。王宮に上がったその日から「子爵上がりの王が作った新興国風情が」と揶揄される。さらに側妃の陰謀で王との夜も邪魔され続け、次第に身の危険を感じるようになる。
イーリスが邪険にされる理由は父が王と交わした婚姻の条件にあった。財政難で困窮している隣国の王は巨万の富を得たイーリスの父の財に目をつけ、婚姻を打診してきたのだ。資金援助と引き換えに父が提示した条件がこれだ。
「娘イーリスが王子を産んだ場合、その子を王太子とすること」
すでに二人の側妃の間にそれぞれ王子がいるにも関わらずだ。こうしてイーリスの輿入れは王宮に波乱をもたらすことになる。

夫に相手にされない侯爵夫人ですが、記憶を失ったので人生やり直します。
MIRICO
恋愛
第二章【記憶を失った侯爵夫人ですが、夫と人生やり直します。】完結です。
記憶を失った私は侯爵夫人だった。しかし、旦那様とは不仲でほとんど話すこともなく、パーティに連れて行かれたのは結婚して数回ほど。それを聞いても何も思い出せないので、とりあえず記憶を失ったことは旦那様に内緒にしておいた。
旦那様は美形で凛とした顔の見目の良い方。けれどお城に泊まってばかりで、お屋敷にいてもほとんど顔を合わせない。いいんですよ、その間私は自由にできますから。
屋敷の生活は楽しく旦那様がいなくても何の問題もなかったけれど、ある日突然パーティに同伴することに。
旦那様が「わたし」をどう思っているのか、記憶を失った私にはどうでもいい。けれど、旦那様のお相手たちがやけに私に噛み付いてくる。
記憶がないのだから、私は旦那様のことはどうでもいいのよ?
それなのに、旦那様までもが私にかまってくる。旦那様は一体何がしたいのかしら…?
小説家になろう様に掲載済みです。
辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~
紫月 由良
恋愛
辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。
魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。
※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる