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リアン陥落
しおりを挟む~リアン視点~
「マリアが……好きだ。ちゃんと一人の女性として……」
マリアベルは溢れてしまうんじゃないかというほど目を大きく見開いていた。
「マリア? どうした?」
マリアの頬に手を当てたら、ぼんっと音がしそうなくらい急に真っ赤な顔になった。
「あ、え、っと。夢かもしれない……起きたらリアンさんがいなかったらどうしよう……都合の良い夢見ちゃったのかも、」
ボソボソと妙なことを口走るマリアベル
「現実だぞ。人の告白を聞き流すなよ」
マリアベルは頬に当てられたリアンの手をつねる。
「痛っ! 何するんだよ……そういう時は自分の頬をつねるものだろ!」
手を引っ込め痛そうにつねられた箇所をさする。
「現実……なの?」
「あぁ、」
「もう一回言って!」
そう言ってリアンの両手をぎゅっと握るマリアベル。緊張した眼差しで深呼吸をするリアン。
「フロリアン・フォン・オットーはマリアベル・ロマーニ嬢を愛しています」
先ほどの告白よりもちゃんとした言葉にマリアベルは嬉しくて何も言えないようだ。
「……おい、何か言ってくれよ」
マリアベルはようやくはっと我にかえった。
「フロリアン・フォン・オットー様……わたくしもお慕いしています」
ちゃんと返事を返すマリアベル。いつもの軽い感じではなかった。
「……約束通り? 本当の家族になるか!」
マリアベルはぱぁっーと明るい笑顔を見せた。
「うん! なる! 子供も最低二人は欲しいね」
「……あ、あぁ。そうだな。マリアに似た明るい子だと助かるな」
子供か……。出来れば楽しくなりそうだな。あの小さかったマリアと結婚をすることになるとはな……
「長期戦かと思ってたのに……リアンさんありがとう。マリア頑張って勉強してリアンさんの隣に居ても恥ずかしくないようになるからね! お邸の皆にも認めてもらえるように努力するから、もう少し大人になるまで待ってて」
「俺も頑張るよ……」
目線が合わさりお互い笑顔になる。
恥ずかしさのあまり目を瞑るマリアベル。その様子を見てリアンは顔を近づけおでこに軽くキスをした。
「そこは口じゃないんだ……」
「結婚式まで……取っておくよ」
「むぅ……」
「膨れた顔も可愛いぞ」
なんとなくではなくちゃんと甘酸っぱい雰囲気の二人だった。
使用人達は遠目でそっと見守っていた。大公家の使用人達は眩しいものでも見るような眼差しだ。結婚をしないと思っていたリアンが他国へ行き帰ってきたかと思ったら、会わせたい人がいる。将来一緒になりたいと思っている。家を継ぐ。と言いリアンの両親は大層喜んだ。相手はリアンが逃亡していた時に保護した女の子。
女の子の家族が見つけ出さなければ、この家に迎え入れられていたはずだった。
その女の子は隣の国の侯爵家の令嬢で身分的にも問題ない。リアンの両親はすぐに行動に移す。
『この機会を逃したら、もう結婚するなんて言わないぞ。兄上に連絡だ、いや。直接話し合ってくる!』
リアンの父は臣下に降り兄である国王陛下を兄上と呼ぶことは無くなった。焦りのあまり
『兄上! 話がある!』と王宮に駆け込んだ。
貴族の結婚には国王陛下の承認が必要で、忙しい陛下の承認を得るために長くて数ヶ月待つような事も稀にあるが、そんなに待てない。書類も面倒……まずは口頭でオッケーを貰いに言ったのだ。
『おぉ! フロリアンが結婚か! 隣国の侯爵令嬢? ロマーニ家と言えば隣国の王家からの信頼が厚い家ではないか。わしもあった事がある。承認するぞ』
本人達の思いよりも光のスピードでとんとん拍子に話は進む。
そして今日を迎えた。どんなお嬢様なんでしょうね。可愛らしい方だと良いですね。とメイド達は楽しみにしていた。ロマーニ侯爵一家を迎えてその家族の美しさに皆が無言になった。
そしてリアンの相手のマリアベルを見ると、あどけなさが残る美しい少女だった。
リアンを見る目が本当に嬉しそうで、見ているだけで幸せになれるような雰囲気を持つマリアベルに使用人達は既に心を掴まれた。
そしてあのフロリアンがマリアベルに膝枕をされ照れている様子や話は聞こえないが甘い雰囲気の二人に、にやにやが止まらないのだ。
「あら? リアンとマリーちゃんは?」
お茶の準備をさせていたメイド達にリアンの母が声を掛ける。
「奥様、今お声をかけますとお邪魔かと……」
そっとリアンとマリアベルを見るリアン母。
「あら! 思っていた以上に仲が良いのね。これはお式が楽しみね。夫人とお式についてお話をしてくるわね」
息子と義娘の様子を見て足取りが軽くなる。
リアン母とマリアベル母によって結婚式の話も進められる事になる。
明日は教会での婚約式。ついにリアンとマリアベルが正式に婚約をした。
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