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デートの後

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 リアンの侍従は仕事が早い。早速かの令嬢達の家に抗議文を出した。すると早速謝罪の手紙が送られてきた。対応の速さは素晴らしい。

 もちろんロマーニ家の当主も謝罪を受ける事になる。

 令嬢達はしばらくの間謹慎させることになったらしい。

 三人の親が今を下げそう言ったから。

「君たちがしっかりと管理してくれるならそれで良いよ。事を大きくするのは嫌いなんだ」

 なんでもないように侯爵がサラリと言う。


「謹慎するならその間に礼儀作法を学んだほうがいい。この国は身分が関係無いのだろうか? 男爵家・子爵家・伯爵家令嬢が侯爵家の令嬢に無礼を働いても許されるんだな。その前に人間としてどうかと言う話になるのだが……」

「……申し訳ございませんっ!」

 と、まぁこんな感じで萎縮するそれぞれの当主達。学園でもいつもマリアベルを見ると一言二言聞こえる様に何やらを言っていたらしい。

 侯爵達は言わせておけば良い。と思っていたらしいが色々とマリアのまわりを調べていた様だった。

 マリアもまた何か言ってる。と気にしていないようだった。妙に肝が据わっている。


「時にライリー伯爵の領地内では不審な目撃情報が多々あるようだが……」

 侯爵がそう言うだけで伯爵はひぃっ……ッと声を上げた。わかりやすい男だ。

「あ、あれはその、」

「他国から働き手を安く買い漁っているとか? 伯爵に限って夜間に船で大量に不法移民なんて連れてきていないよな? 私は。きちんと調べて事実を知らなければ納得しないタチなんだ」

 足を組みにこりと笑う侯爵。噂ではなく事実であることが確定しているのだろう。


「こ、このことはしっかりと対処した上で税金もしっかり納め、国に報告をして……」

「うん。出来るよね?」


 面会は伯爵家、子爵家・男爵家と順にしたのだが……この男の情報網の凄さ……

「侯爵家の諜報員は凄いですね……」


 呆気に取られてしまった。

「そうなんだよ……それなのに中々マリアベルが見つからなくて、最悪のことまで考えていたんだよ。それに卿の事も中々分からなくて、ここまで粘らせた卿も凄いですよね」

 笑うしかなかった。否定しないんだな。




 翌日からマリアは誘拐された時にひどく頭を打ってしまいその時の記憶がなくなり隣国の王弟の息子が保護していたという話が伝わった。

 その時はこれで良かったのだと胸を撫で下ろしたのだが……




******

 

「はぁっ。困ったことになりました」

 侯爵の執務室で今後のことを話そうと訪れた時だった。

「何かありましたか?」

 はぁ。とか、ふぅ。とかのため息が多いな。机の上に山積みになっている手紙。


「これですよ」

 山積みになっている手紙を指差す。そして一通の手紙を摘んでヒラヒラと振る侯爵。

「手紙ですか?」

 豪華に宝飾された手紙達。

「……えぇ。釣書……求婚ですね。こっちの手紙の山は夜会やら茶会の招待状ですよ」


 デビューを迎えたのだから求婚の話の一つや二つあってもおかしくは無い……何十通もの手紙が山積みになっていた。これでマリアも釣り合いの取れた家と婚約することになるだろう。


「そうですか。さすが侯爵家と言うか……ですね」

 なんとなく胸が痛むのは気のせいだ。



「今更ですよ。全て断るつもりです」

 キッパリと言う侯爵。娘の将来をどう考えているだろうか……

「当然ですよ。ですから」

 と言う言葉に力を感じる。

 ……もしかして


「マリアが私に保護されていたと知って? なんて奴らだ……」

「その通りですよ。保護してくれた相手は隣国の王弟の甥。高位貴族に保護されていた。マリーと結婚すると侯爵家と妻の実家のペルソナ公爵家、ラストはオットー卿とも縁を結ぶことが出来る。社交界を牛耳るのも夢じゃ無いんですよ。私たちは娘に甘いのは有名ですから味方に引き入れるのならこんな良い話はないですからねぇ。本当にマリーと結婚したいと言うのならもっと早く求婚しとけば良かったんですよ。世間の噂がどうのこうのなんて気にせずにね」


 
 餌を蒔いたつもりはないのだが、餌を撒く形になってしまった……

 一際豪華な手紙に目がいく。

「侯爵殿、この手紙は」

「あぁ、コレですか? お察しの通りですよ」

 王家からの手紙か……


「それでは正式にジェラール殿下との婚約を? それこそ今更な気がしますね。私が保護していたと言う事が分かって求婚してくるなんて……貴族院も許可したのでしょうね」

「そうなりますね。王妃からは卿とマリーへの招待もありますよ?」

 すっと封筒が出された。上質な紙だ。

「マリアはこのことを知っているんですか?」


「求婚の話ですか?」

「えぇ」

「妻が話をしたようですが…………貴方と結婚すると言っているようですよ」

 表情は柔らかいが目は笑っていない。

「……マリアはまだ若いので年頃の子息との縁談を、」


「貴方はそれで良いのですか? 年齢だけを気にしているようですね。マリーには好きな人と結婚するようにと言い聞かせてありますから、アレが本気なら諦めないと思います。貴方も断るのならとっとと断ってくれ。中途半端な気持ちでマリーに期待を持たせるのはやめてくださいね」

「そんな事は……いや、可愛いとは思います。しかしコレがどう言った感情か分からないのですよ」

 正直に答えた。本当に分からない。可愛いと言う気持ちはある。慕ってくれるのも嬉しい。


「それならコレお茶会の招待を受けたらどうですか?」

 王妃の茶会で何かが起こるのだろうか……
 
 





 
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