私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの

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マリアベルの恋?

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「マリー、結婚前のレディが男性にべたべたとするものではありませんよ!」

 べたべたじゃないもん。スキンシップ? って言うんでしょ!

「してないもん」


「はぁっ。側から見ているとべたべたしている様にしか見えないのよ。卿は優しいから断れないだけで本当は困っていらっしゃると思うわよ?」

「むぅ。だって……せっかく会えたんだもん。リアンさん結婚してないし婚約者もいないって言ってたし、困る人もいないもん」

 それに私と結婚してくれればいいもん。

「そのリアンさんという呼び方もおやめなさい。大公家の方に対して失礼です」

「じゃあ、なんて呼べば良いの? パパはリアンさんって言っていたもん。お母さんって呼んじゃダメでしょ?」

 リアンさんって名前だって聞いたし。ダメって言われてないし……

「名前でお呼びしても良いか許可を得てからになさい。それにフロリアン様という正式なお名前があるでしょう? 愛称で呼ぶと誤解を招くの」

 もうリアンさんで慣れちゃったのに……許可……そっか。名前で呼ぶのは許しを得てからなんだよね。

「……分かった」

「適度な距離感を持ってオットー卿と接してね」

「それは寂しいよ。せっかく会えたのに……パパにもママにも会わせてくれてありがとうって言ってなかった。伯父さんにもお礼を言わなきゃ……ありがとうママ。大好き」

 ママの首に抱きついた。パパとママも複雑だったんだろうけど会わせてくれたんだよね……


「マリーが嬉しいのは見ていて分かるのよ。そんな姿を見ていたらママも嬉しくなるもの」

 ぽんぽんと背中を撫でられた。

「でもね、お互いもう大人なのだから……マリーはあの時の幼い子供じゃないのよ。これからマリーに好きな人が出来て、」

「リアンさんが好きなの。ずっとずっと……でもパパもママも兄様も大好きなの。何不自由なく生活できるのはパパとママのおかげだって分かっているけど、心にポッカリ穴が空いてて、リアンさんと会えて埋まったの。でも怖いよ……また離れるのが」

 ぐすっと鼻を啜る音が聞こえた。

「マリーの気持ちは家族として好きという事? 一人の男性として好きっていう事? どっち?」

 マリアベルの背中を撫でて落ち着かせようとしていた。

「どっちも……リアンさんと一緒にいたいの。結婚したい、ダメ?」


「……あら……困ったわ。でも自分の気持ちを押し付けるのはママ違うと思うのよ。マリーが本当に卿の事が好きなら少しは抑えることも覚えなきゃね? 分かる?」

 押し付ける……そっか。嫌われたくない。

「多分、分かったと思う。押し付けない」

「あら……良い子ね。卿の気持ちも考えるのよ。マリーこんなことは言いたくないのだけど、マリーは十六歳で卿は二十八歳よ? 歳が離れているのよ。パパやママの方が卿と歳が近いくらい離れているの」


 ? ママは何を言ってるんだろう? 意味わかんない。

「リアンさんはリアンさんだから年齢は関係ないよ。だって生きている限り年の差は埋まらないもん。早く大人になりたくても時間は平等だって先生が言っていたよ! 私がリアンさんの歳を超えることはないもん。そんな時は……悲しい事があった時だもん」

 パパの両親はまだパパが若い時に事故で亡くなった。その歳をパパは超えたんだって言ってたもん。寂しそうな顔をしていた事を思い出した。

「あら。ママが思っているよりちゃんと考えていたのね……マリーの成長を目の当たりにしたわ……本気で卿のことを思っているのなら、頑張ってみたら? でも過度なスキンシップは自分の価値を下げることになるからやめなさい」


「ママ応援してくれるの?」

「……そうね。恋の相談はママにして頂戴ね。パパに相談したら倒れちゃうかもしれないわ……」

 パパは応援してくれないのかな……? 好きな人と結婚するんだよって言ってたよ。ママの言う通りにしよ。

「分かった。パパに内緒にしておいてね」

******

 困ったわ! 怒るつもりだったのに怒れなくなっちゃったわ! だってマリーったらちゃんと恋している乙女のような顔をしているんだもの!

 私が夫を想っていた時を思い出してしまったわ!

 卿はどう反応するのかしら……年齢差は気にしていそうよね。マリーと接する時はとても優しい顔をしていて……抱きつかれて困っているのは照れ隠し? 本当に困っている風ではなく、理性がそうさせているとか?

 でも隣国にお嫁に出すのは寂しいわよねぇ。でもマリーが幸せになれるのなら反対出来ないわ……

 卿は良い方だし卿もマリーのことを想ってくれるなら……そんな気にさせた。

 夫やヴェルナーになんて説明すれば良いのよぉ……
 

 
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