私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの

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侯爵夫人の悩み

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 フロリアン・フォン・オットー。隣国の陛下の甥で大公家の嫡男。まさかそんな高貴な方がうちの娘を保護してくれていたとは思わなかった。


 剣術を教え? 本の読み聞かせをし読み書きできるように学ばせてくれた(三カ国語)食事をする際も最低限のマナーは身についていた。

 娘がうちに戻ってきた時私たち家族はとても嬉しくて自分のことしか考えていなかった。あんなに娘がオットー卿に会いたがっているのに。きっと私たちを恨んでいるわね。

 私達に気を遣ってオットー卿の話はしなくなった。

 何不自由ない暮らしをさせていたけれど、心残りはオットー卿の事だった。


 娘に会わせてあげたい。そう強く思った。そして自らの目でオットー卿とお話をしたい。そう思った。

 夫がトニーに探させていてようやく見つけた! まさか大公家の方だったなんて! 驚きを隠せなかった。

 娘はオットー卿に再会してとても喜んでいた。最近は随分と淑女らしくなったと思っていたのに、オットー卿には随分甘えているみたい。少し嫉妬心が芽生える。

 オットー卿はとても博識で常識ある方。娘のデビュタントの際にお会いいただけると言うことは娘には内緒にしていた。もしドタキャンされてしまったら可哀想だもの。

 娘の命の恩人……

 娘は……マリーは喜ぶかしら。その時私たちはどんな思いをするのかしら……


 感極まり涙を流すマリー。やっと会わせてあげることができた。オットー卿は優しい顔をしてマリーを見ていた。久しぶりの再会という事で私も人知れず涙を流した。

 オットー卿はとても思いやりの深い方だと思った。

 マリー良かったわね。マリーが嬉しいとママも嬉しいの……王宮で再会した時まではそう思っていた。




「一緒に寝よ!」

 部屋にいたメイドから聞かされたとかは驚いて言葉を発することができなかった。

 夫はお茶を溢してワナワナと震えていた。

『嫁入り前の娘が成人男性とベッドを共にしようとするなんて!』

 しかしオットー卿は悪くない。マリーも変な意味で言ったわけじゃないのよね。ただ純粋に!したかっただけよね……

 ちょっと自由にさせすぎたのかしら……

『マリアの大好きで大事な人!』

 と騎士団長に嬉しそうにオットー卿を紹介したそうで……

『旦那様、奥様! おめでとうございます。お嬢様の後婚約者様を拝見しましたが、とても強くて良い方ですね! お嬢様もとても慕っているようで!』

『……まだ嫁にはやらん』

 相手は大公家……強く出られないわね。マリーが原因だもの。

『結婚しよ!』

 マリーがオットー卿に言ったそうなの。その報告は夫にはしないであげて……

 手を繋いだり抱きついたり……もうマリーは子供じゃないんだから困ったものね……

 オットー卿はダメだ。とマリーに言ってるみたいだけど……

 オットー卿からマリーに手を出すとは到底思えないから、注意はマリーにしなきゃ。

『奥様……お嬢様がオットー卿に……』

『また! どこにいるの?』

 応接室にいるそうで急いで向かった。

 失礼は承知で扉をばんっと開いた。そこにはオットー卿に抱きつくマリーの姿が……

『マリーお話があります!!』


『えー! ヤダよぉ……ママ何か怒ってるもん。怖いよリアンさん、助けて』

 ぎゅうとさらに抱きしめていた。怒りたくもなりますよ。大事な娘が男に抱きついている姿を見るなんて。

『……マリア、良い加減にしないと俺も怒るぞ! 夫人が話があるようだぞ』

『……明日おでかけしてくれる? さっき買い物に連れて行ってくれる。って言ったよね? 連れて行ってくれるなら離れる』

 ちょっと……マリーどこでそんな仕草を覚えたの……眩暈が……


『……分かったから、離れてくれ』

『わーーい! デートだね』

 そういうとマリーはこちらにと言った感じで歩いてきた。


『……卿……本当に申し訳ありません。甘やかせすぎたみたいで……』


 オットー卿に謝罪すると苦笑いをしていた。もうっ! マリーったら!
 

 
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