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困ったことになった〜リアン〜
しおりを挟む……マリアが可愛すぎる件について。
「一緒に寝よ!」
「結婚しよ!」
……きっとこれは一時的なものに過ぎないのだが、つきまとってくるマリアは可愛い。小動物を愛でるような気持ちなんだろうが、悪い気は……しない。
マリアは大人の仲間入りをした。デビュタントの衣装も大変美しかった。それを見て成長したのだなぁ……とつくづく感じることができた。親の気持ちというかなんというか。
今日は会談のために王宮に呼ばれていた。マリアと離れることが出来て少しほっとしている自分がいる。マリアは正直で直視すると眩しい……俺も歳をとったんだなぁ。
今回の会談は国と国との架け橋……実際に本当に橋の話なんだが、お互いの国を流れている大きな川がある。この橋は老朽化していてこのままだと数年持つかもたないか……新しく橋を作ることになり予算の話し合いをしていた。
この橋がないと山越えすることになり遠まりで大変不便だ。この橋があることにより数日は早くなるし、山越えするよりも物資はたくさん運べる。
部材の調達も視野に入れなければならないし、今年の貿易の税金の話などすることは沢山あった。
仕事の話が終わり、王妃にお茶に誘われた。二人の王子もくるようだ。
「オットー卿にお会いするなんて十年ぶりかしら? 随分と逞しくおなりになって」
王妃は我が国出身の公爵家のお姫様だった。まだ私が若い頃に数回会ったことがあった。
「お久しぶりでございます。本日はお茶にお誘いくださりありがとうございます」
改めて挨拶をする。同郷であるが故に少し心を許している。
「内乱があって大変でしたわね。今は落ち着いているようですがあの時は苦労もあったでしょう。父からも手紙をもらって心配していましたのよ」
俺が姿を消していたのは公然の秘密……
「そうですね。しかし今では懐かしい思い出に過ぎません。王太子殿下もとても精力的に動いてますから私はそれを支えていく所存です」
確かに頑張っている。過労じゃないかと思うくらいに。臣下たちは王太子に倣って悪い膿を出そうと躍起になっている。これからの新しい世のために。
「仕事ばかりも良いですけれど、オットー卿のおめでたい話を聞きたいところですわね」
未婚だからどこへ行っても言われるし、未来の大公の妻の座を狙っている令嬢は沢山いる。所謂金や身分目当てと言うやつだ。
「ははっ……そればっかりは縁ですからねぇ」
取り敢えず笑って濁しておくに限る。そうじゃないと紹介しましょうか! と言ってくるかもしれない。
「そう言えば王太子殿下に婚約者はいるのにジェラール殿下にはおられないのですか?」
確かジェラール殿下は十七歳? 居てもおかしくないよな? 自分のことは棚に上げておこう。
「えぇ……縁に恵まれないと申しますか」
苦笑いをするジェラール殿下だが、王妃に似て優しげなイケメンだ。ぐいぐいとアピールしてくる令嬢が苦手とか?
「お見合いの相手をリストアップしているんだけど、この子はあまり気が進まないみたいなの。こんなことをしているうちに時間が過ぎちゃって、困ったものだわ」
俺の身内の話でも聞いているような気分になった。
「まぁ、私も人のことをとやかく言える立場では有りませんので、お気持ちはお察し致します」
そしてどこの世界にもお見合いおばさん的な人はいる。王妃はただ息子の心配をしているだけだろう。
「そういえばオットー卿はロマーニ侯爵邸に滞在しているんですわよね?」
「えぇ。そうです、お世話になっています」
他国の貴族が他の国に来る時は、知り合いの邸に滞在すると言うのは一般的で珍しい話ではない。
「あのロマーニ侯爵がお客様を自ら呼ぶなんて珍しいと思って。ご存知だとは思うけれどマリアベル嬢のことがあってから信頼できる人しか家には招かないので有名なのよ」
……あぁ誘拐事件のことか。
「忌々しい事件でしたね」
「そうなのよ。あんなことがなければジェラールの婚約者にマリアベル嬢の名前も入れることができたのにねぇ」
入れることができた? どう言う事だ?
「……貴族院の頭の硬い人たちは保守的ですから……」
ジェラール殿下の言葉……どう言う意味だろうか。もしかして?
「マリアベル嬢と、ジェラール殿下は年齢的にも近くてマリアベル嬢は侯爵家令嬢……なんの問題もなさそうですが、例の事件と何か関わりが?」
「攫われて保護してくれた方がいるようなのだけど、どこの誰かもわからないでしょう? 見つかった先は田舎の村だったし、保護されていた四年間は何をしていたか分からないから……傷物と言われているのよ。あの子もロマーニ侯爵も気にしていないみたいだけど、世間は違うのよ」
! 俺のせいか! これは早く誤解を解いたほうが良い! マリアベルの将来に大いに関わってくる!
ジェラール殿下の婚約者にもなれる身分なんだ……そうか……そこまで考えは及ばずに申し訳ないことをした。
しかしここで侯爵の許可なく俺が保護していた。と公表するのは得策ではない。
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