上 下
41 / 81

リアンさんと一緒2

しおりを挟む
「遅いよぉ! 何していたの? 待ちくたびれちゃった」

 屋敷のエントランスに駆け寄るマリアベル。

「マリー! また、走って! もう大人の仲間入りをしたんでしょう?」

「そうだ、そんな姿を見たら先生が悲しむぞ」

「……はーい」

 先生のことを出されたら何もいえなくなる……だってリアンさんが邸に来るまで心配だったもん。いっぱい話したいことがあるのに。


「ははっ。元気があって良いな、マリアは変わらないな」

 ロマーニ夫妻とリアンが揃ってエントランスに姿を見せた。

「マリー、卿をお部屋に案内して差し上げたら? 卿もお疲れでしょうから案内したらに戻っていらっしゃいね? 

「……はーい」

 口を尖らせて返事をするマリアベル。

「出来ないのね? それならヴェルナーに案内させる?」

 ママの口調がいつもと違う! これは怒る前の感じがする……


「っ兄さまは疲れているから私が案内します! リアンさん行こっ」

 リアンの腕を取り階段を上がろうとするマリアベル


「あ、おいっ」

 ぐいぐいとリアンの腕を引っ張る。



 侯爵家にはゲストルームが沢山用意されている。その中でも一番広くて景色が良い部屋だった。


「へぇー。暗くて景色が見れないが緑がすごい多いんだな。朝を迎えるのが楽しみだよ」

 昔と何も変わらない口調のリアンを見ていたらマリアベルは嬉しくもあり寂しくもなる。


「ねぇリアンさん」

 聞いても良いかな……でも今聞きたかった。

「なんだ?」

「マリアと別れて……寂しかった?」

 今にも泣きそうな顔でリアンを見る。

「……まぁな。マリアと暮らしていた時は楽しかったから良い思い出だよ」

 窓辺に腰を預けマリアベルと距離を取る。


「……聞きたいこととか、言いたいこととか沢山あるの」


「うん? 聞くよ。でも明日にしないか? もう遅い時間だ。夫人に怒られるぞ」

 マリアベルは成人したのだからこのような時間に、二人きりという訳には行かない(メイドは付いている)



「あっ! そうだ! 一緒に寝ようよ! 前は一緒に寝てたもん。枕持ってこようかなっ。ベッドは大きいから、」

 とんでもない発言に目を見開くリアン。

「ばっ、バカか! 早く部屋に戻れっ!」

 マリアベルは部屋を追い出された。


「なんで! 良いじゃない!! リアンさんのケチっ」

 ドンドンとリアンが滞在する部屋の扉を叩いていると、笑顔のヴェルナーに引きずられて部屋に戻された。


「兄さま……リアンさんがイジワルするの。一緒に寝てくれないんだよ!」

 寝てくれない……と言うワードを聞きなんとも言えない顔をするヴェルナー。

「いいから部屋で大人しくしてて。卿に迷惑を掛けないことっ! そうじゃないと部屋で謹慎させるけど?」

 すんっと大人しくなるマリアベルだった。さっきとは打って変わってヴェルナーの顔は真顔だった。


「兄さまもイジワルするの?」

 うるうると瞳を潤ませるマリアベル。

「……マリーはもう大人の仲間入りをしたんだよね? それじゃあ子供扱いをしてはマリーに失礼だ。レディは男性と一緒に寝ないんだよ。腕を組んだり抱き締めたりと言うのは些か破廉恥な行為だと僕は思うんだ」


 破廉恥……なんで!

「じゃぁ、兄さまにもパパにも触れちゃダメなの? そんなの寂しいよ……」
 

「家族や例えば……婚約者なら別だけど卿は隣国の大公家の方だよね? 迷惑だろ?」

「? リアンさんは家族だもん。大好きだもん。マリアの家族になってくれるって約束したんだよ!」


「一緒に寝るのはナシ! 分かったね?」

「……」

 プクッと頬を膨らませた。

「返事は? そんなに謹慎したいのかい?」

「むぅ……分かりました」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。

天織 みお
恋愛
「おめでとうございます。奥様はご懐妊されています」 目が覚めたらいきなり知らない老人に言われた私。どうやら私、妊娠していたらしい。 「だが!彼女と子供が出来るような心当たりは一度しかないんだぞ!!」 そして、子供を作ったイケメン王太子様との仲はあまり良くないようで――? そこに私の元婚約者らしい隣国の王太子様とそのお妃様まで新婚旅行でやって来た! っていうか、私ただの女子高生なんですけど、いつの間に結婚していたの?!ファーストキスすらまだなんだけど!! っていうか、ここどこ?! ※完結まで毎日2話更新予定でしたが、3話に変更しました ※他サイトにも掲載中

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

継母の心得 〜 番外編 〜

トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。 【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】

辺境伯へ嫁ぎます。

アズやっこ
恋愛
私の父、国王陛下から、辺境伯へ嫁げと言われました。 隣国の王子の次は辺境伯ですか… 分かりました。 私は第二王女。所詮国の為の駒でしかないのです。 例え父であっても国王陛下には逆らえません。 辺境伯様… 若くして家督を継がれ、辺境の地を護っています。 本来ならば第一王女のお姉様が嫁ぐはずでした。 辺境伯様も10歳も年下の私を妻として娶らなければいけないなんて可哀想です。 辺境伯様、大丈夫です。私はご迷惑はおかけしません。 それでも、もし、私でも良いのなら…こんな小娘でも良いのなら…貴方を愛しても良いですか?貴方も私を愛してくれますか? そんな望みを抱いてしまいます。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 設定はゆるいです。  (言葉使いなど、優しい目で読んで頂けると幸いです)  ❈ 誤字脱字等教えて頂けると幸いです。  (出来れば望ましいと思う字、文章を教えて頂けると嬉しいです)

忘れられた幼な妻は泣くことを止めました

帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。 そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。 もちろん返済する目処もない。 「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」 フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。 嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。 「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」 そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。 厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。 それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。 「お幸せですか?」 アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。 世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。 古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。 ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。 ※小説家になろう様にも投稿させていただいております。

異世界で悪役令嬢として生きる事になったけど、前世の記憶を持ったまま、自分らしく過ごして良いらしい

千晶もーこ
恋愛
あの世に行ったら、番人とうずくまる少女に出会った。少女は辛い人生を歩んできて、魂が疲弊していた。それを知った番人は私に言った。 「あの子が繰り返している人生を、あなたの人生に変えてください。」 「………はぁああああ?辛そうな人生と分かってて生きろと?それも、繰り返すかもしれないのに?」 でも、お願いされたら断れない性分の私…。 異世界で自分が悪役令嬢だと知らずに過ごす私と、それによって変わっていく周りの人達の物語。そして、その物語の後の話。 ※この話は、小説家になろう様へも掲載しています

女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「友好と借金の形に、辺境伯家に嫁いでくれ」  行き遅れの私・マリーリーフに、突然婚約話が持ち上がった。  相手は女嫌いに社交嫌いな若き辺境伯。子爵令嬢の私にはまたとない好条件ではあるけど、相手の人柄が心配……と普通は思うでしょう。  でも私はそんな事より、嫁げば他に時間を取られて大好きな歴史研究に没頭できない事の方が問題!  それでも互いの領地の友好と借金の形として仕方がなく嫁いだ先で、「家の事には何も手出し・口出しするな」と言われて……。  え、「何もしなくていい」?!  じゃあ私、今まで通り、歴史研究してていいの?!    こうして始まる結婚(ただの同居)生活が、普通なわけはなく……?  どうやらプライベートな時間はずっと剣を振っていたい旦那様と、ずっと歴史に浸っていたい私。  二人が歩み寄る日は、来るのか。  得意分野が文と武でかけ離れている二人だけど、マイペース過ぎるところは、どこか似ている?  意外とお似合いなのかもしれません。笑

処理中です...