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再会
しおりを挟む「マリーこっちだよ」
パパとママ、それに兄様や伯父さんまで? 何? 何事?
「なんで伯父さんもいるの?」
ハテナが頭にいっぱいだ。何があるんだろう。
「……伯父さんはコネを使ったんだ」
やり切った感を顔に出している。褒めて欲しそうな顔をしていた。
「コネ??」
何のことかわからずに首を傾げると、笑顔で制された。多分答えてくれないやつだ!
今日はデビュタントのパーティーで王宮内は賑わっている。少し離れた先は先程の賑わいとは変わって静かで立派な扉がありその扉の前に立った。
「今日はマリーに紹介したい人がいるんだ。マリーのデビュタントの祝いに駆けつけてくれたんだ」
? 親戚の人かな?
「う、うん? 誰だろう……」
「さぁ、おいで」
パパに手を取られ伯父さんが扉をノックするとどうぞ。と声をかけられた。
入室すると、身長が高くて優しそうに笑っている男の人が立っていた。私はこの人を見た事が……ある。
「マリーこちらの方は、フロリアン・フォン・オットー殿だ。隣国の大公家の嫡男で隣国の国王陛下の甥にあたる方だ」
私はその紹介を聞いても足が動かない。呆然としたまま立ちすくんでいた。
「……はじめまして……ではないんだが、名乗ったことはなかったな。私の名前はフロリアン・フォン・オットー。君の名前を教えてくれるか?」
胸に手を当て優しく微笑んでくれた。間違いない!
「……私はマリア……マリアベル・ロマーニと申します」
震える声で何とか挨拶をすることができた。
「ロマーニ侯爵家のお嬢さんだね。俺のことは覚えている?」
「はい……はい。もちろ、ん」
そう答えるのが精一杯で涙が溢れてきた。うっ……うっ……パパが肩を抱いてくれて兄さまがハンカチを出してくれた。
「卿にお会い出来て娘が感極まってしまったようです……この度はお時間をいただき誠に感謝いたします」
パパが挨拶をしていたけれど言葉が頭に入ってこない。
「この度はお会い出来て光栄です。わたくしはマリアベルの母でございます。娘を保護していただいていたことを心より感謝いたします」
ママがカーテシーをする姿が目に入った。
「オットー卿。この度は無理を言ってしまい申し訳ありませんでした。貴方が姪を助けてくれたおかげで今の私達がいる。感謝しかない」
伯父さんが使ったコネって……この事だったんだ。
「会いたかった……会いたかったよぉ」
わーーんって泣きじゃくる私を見てパパもママも困った顔をしていた。兄さまが見兼ねて、リアンの近くに連れて行ってくれた。
「妹を助けてくださってありがとうございました。僕はマリアベルの兄でヴェルナーと申します」
兄さまに手を引かれてリアンさんの前に立った。
「あぁ、初めまして。なんだマリアの兄さんはちゃんといるんだな。記憶は無くしていても深層心理の中に兄の姿があったんじゃないか」
リアンはマリアの頭をポンと撫でる。
「リアンさん、ひっく。なんで会いに来てくれなかったの……マリアずっとリアンさんに会いたかったよ。マリアのこと嫌いになった? マリアが戻らなかったから、ひっく……」
頭に置かれた手を両手でぎゅっと掴んだ。優しくて大きな手は変わらない。大好きな手だ。
「……バカだな。そんなわけないだろう」
「じゃぁなんで、ひっく。マリアを、」
はぁっ。とため息を吐くリアン。
「家族がマリアを探していたんだ。家に帰った方が良いだろう? あんな田舎に暮らしているより家族のもとに帰り幸せになるのが世の中の道理だ。得体の知れない男といるよりも家族といた方が言いに決まっている。マリア……今幸せか?」
「……うん」
リアンはマリアベルの頬に手を当て目線を合わせた。
「侯爵の事は好きか?」
「パパ? うん、好き」
「夫人やヴェルナー殿は?」
「好きだよ」
「侯爵家で暮らしていて不便はあるか?」
首を左右に振るマリアベル。
「俺はマリアの幸せを願っているよ」
優しくマリアベルに語りかける。
「リアンさんとも幸せになりたい……」
ぎゅっとリアンに抱きつくマリアベル
「レディのする行為ではないな……」
リアンは困った様子を見せ、マリアベルを離そうとする。
「マリー、卿が困っているぞ。今日はめでたい日なんだから……」
「やだぁ、またリアンさんとお別れするのは嫌なのっ」
リアンの腰をガッツリ抱くマリアベル。
「こらマリー離れなさい、卿がこの国にいる間は我が家に滞在してもらう事になっているから、邸に戻ってお話しましょう」
マリアベルはリアンの胸に埋めていた顔を出して上目遣いで見上げる。
「本当? うちに来る?」
「……っ世話になるよ」
「黙っていなくならない?」
「……あぁ、約束する」
そうしてマリアベルがお母さんと呼んでいたフロリアン・フォン・オットーと会う事が叶った。
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