私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの

文字の大きさ
上 下
39 / 81

再会

しおりを挟む

「マリーこっちだよ」

 パパとママ、それに兄様や伯父さんまで? 何? 何事?

「なんで伯父さんもいるの?」

 ハテナが頭にいっぱいだ。何があるんだろう。

「……伯父さんはコネを使ったんだ」

 やり切った感を顔に出している。褒めて欲しそうな顔をしていた。


「コネ??」

 何のことかわからずに首を傾げると、笑顔で制された。多分答えてくれないやつだ!

 今日はデビュタントのパーティーで王宮内は賑わっている。少し離れた先は先程の賑わいとは変わって静かで立派な扉がありその扉の前に立った。


「今日はマリーに紹介したい人がいるんだ。マリーのデビュタントの祝いに駆けつけてくれたんだ」



 ? 親戚の人かな?



「う、うん? 誰だろう……」

「さぁ、おいで」

 パパに手を取られ伯父さんが扉をノックするとどうぞ。と声をかけられた。

 入室すると、身長が高くて優しそうに笑っている男の人が立っていた。私はこの人を見た事が……ある。




「マリーこちらの方は、フロリアン・フォン・オットー殿だ。隣国の大公家の嫡男で隣国の国王陛下の甥にあたる方だ」

 私はその紹介を聞いても足が動かない。呆然としたまま立ちすくんでいた。


「……はじめまして……ではないんだが、名乗ったことはなかったな。私の名前はフロリアン・フォン・オットー。君の名前を教えてくれるか?」

 胸に手を当て優しく微笑んでくれた。間違いない! 


「……私はマリア……マリアベル・ロマーニと申します」

 震える声で何とか挨拶をすることができた。

「ロマーニ侯爵家のお嬢さんだね。俺のことは覚えている?」

「はい……はい。もちろ、ん」


 そう答えるのが精一杯で涙が溢れてきた。うっ……うっ……パパが肩を抱いてくれて兄さまがハンカチを出してくれた。

「卿にお会い出来て娘が感極まってしまったようです……この度はお時間をいただき誠に感謝いたします」

 パパが挨拶をしていたけれど言葉が頭に入ってこない。

「この度はお会い出来て光栄です。わたくしはマリアベルの母でございます。娘を保護していただいていたことを心より感謝いたします」

 ママがカーテシーをする姿が目に入った。

「オットー卿。この度は無理を言ってしまい申し訳ありませんでした。貴方が姪を助けてくれたおかげで今の私達がいる。感謝しかない」

 伯父さんが使ったコネって……この事だったんだ。


「会いたかった……会いたかったよぉ」

 わーーんって泣きじゃくる私を見てパパもママも困った顔をしていた。兄さまが見兼ねて、リアンの近くに連れて行ってくれた。

「妹を助けてくださってありがとうございました。僕はマリアベルの兄でヴェルナーと申します」

 兄さまに手を引かれてリアンさんの前に立った。

「あぁ、初めまして。なんだマリアの兄さんはちゃんといるんだな。記憶は無くしていても深層心理の中に兄の姿があったんじゃないか」

 リアンはマリアの頭をポンと撫でる。

「リアンさん、ひっく。なんで会いに来てくれなかったの……マリアずっとリアンさんに会いたかったよ。マリアのこと嫌いになった? マリアが戻らなかったから、ひっく……」

 頭に置かれた手を両手でぎゅっと掴んだ。優しくて大きな手は変わらない。大好きな手だ。

「……バカだな。そんなわけないだろう」

「じゃぁなんで、ひっく。マリアを、」

 はぁっ。とため息を吐くリアン。


「家族がマリアを探していたんだ。家に帰った方が良いだろう? あんな田舎に暮らしているより家族のもとに帰り幸せになるのが世の中の道理だ。得体の知れない男といるよりも家族といた方が言いに決まっている。マリア……今幸せか?」

「……うん」

 リアンはマリアベルの頬に手を当て目線を合わせた。

「侯爵の事は好きか?」

「パパ? うん、好き」

「夫人やヴェルナー殿は?」

「好きだよ」

「侯爵家で暮らしていて不便はあるか?」

 首を左右に振るマリアベル。

「俺はマリアの幸せを願っているよ」


 優しくマリアベルに語りかける。
 
 
「リアンさんとも幸せになりたい……」

 ぎゅっとリアンに抱きつくマリアベル

「レディのする行為ではないな……」


 リアンは困った様子を見せ、マリアベルを離そうとする。

「マリー、卿が困っているぞ。今日はめでたい日なんだから……」

「やだぁ、またリアンさんとお別れするのは嫌なのっ」

 リアンの腰をガッツリ抱くマリアベル。


「こらマリー離れなさい、卿がこの国にいる間は我が家に滞在してもらう事になっているから、邸に戻ってお話しましょう」

 マリアベルはリアンの胸に埋めていた顔を出して上目遣いで見上げる。


「本当? うちに来る?」

「……っ世話になるよ」

「黙っていなくならない?」

「……あぁ、約束する」



 そうしてマリアベルがお母さんと呼んでいたフロリアン・フォン・オットーと会う事が叶った。


 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。

ふまさ
恋愛
 楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。  でも。  愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。

【完結】貴方達から離れたら思った以上に幸せです!

なか
恋愛
「君の妹を正妻にしたい。ナターリアは側室になり、僕を支えてくれ」  信じられない要求を口にした夫のヴィクターは、私の妹を抱きしめる。  私の両親も同様に、妹のために受け入れろと口を揃えた。 「お願いお姉様、私だってヴィクター様を愛したいの」 「ナターリア。姉として受け入れてあげなさい」 「そうよ、貴方はお姉ちゃんなのよ」  妹と両親が、好き勝手に私を責める。  昔からこうだった……妹を庇護する両親により、私の人生は全て妹のために捧げていた。  まるで、妹の召使のような半生だった。  ようやくヴィクターと結婚して、解放されたと思っていたのに。  彼を愛して、支え続けてきたのに…… 「ナターリア。これからは妹と一緒に幸せになろう」  夫である貴方が私を裏切っておきながら、そんな言葉を吐くのなら。  もう、いいです。 「それなら、私が出て行きます」  …… 「「「……え?」」」  予想をしていなかったのか、皆が固まっている。  でも、もう私の考えは変わらない。  撤回はしない、決意は固めた。  私はここから逃げ出して、自由を得てみせる。  だから皆さん、もう関わらないでくださいね。    ◇◇◇◇◇◇  設定はゆるめです。  読んでくださると嬉しいです。

ご自慢の聖女がいるのだから、私は失礼しますわ

ネコ
恋愛
伯爵令嬢ユリアは、幼い頃から第二王子アレクサンドルの婚約者。だが、留学から戻ってきたアレクサンドルは「聖女が僕の真実の花嫁だ」と堂々宣言。周囲は“奇跡の力を持つ聖女”と王子の恋を応援し、ユリアを貶める噂まで広まった。婚約者の座を奪われるより先に、ユリアは自分から破棄を申し出る。「お好きにどうぞ。もう私には関係ありません」そう言った途端、王宮では聖女の力が何かとおかしな騒ぎを起こし始めるのだった。

突然決められた婚約者は人気者だそうです。押し付けられたに違いないので断ってもらおうと思います。

橘ハルシ
恋愛
 ごくごく普通の伯爵令嬢リーディアに、突然、降って湧いた婚約話。相手は、騎士団長の叔父の部下。侍女に聞くと、どうやら社交界で超人気の男性らしい。こんな釣り合わない相手、絶対に叔父が権力を使って、無理強いしたに違いない!  リーディアは相手に遠慮なく断ってくれるよう頼みに騎士団へ乗り込むが、両親も叔父も相手のことを教えてくれなかったため、全く知らない相手を一人で探す羽目になる。  怪しい変装をして、騎士団内をうろついていたリーディアは一人の青年と出会い、そのまま一緒に婚約者候補を探すことに。  しかしその青年といるうちに、リーディアは彼に好意を抱いてしまう。 全21話(本編20話+番外編1話)です。

愛のない貴方からの婚約破棄は受け入れますが、その不貞の代償は大きいですよ?

日々埋没。
恋愛
 公爵令嬢アズールサは隣国の男爵令嬢による嘘のイジメ被害告発のせいで、婚約者の王太子から婚約破棄を告げられる。 「どうぞご自由に。私なら傲慢な殿下にも王太子妃の地位にも未練はございませんので」  しかし愛のない政略結婚でこれまで冷遇されてきたアズールサは二つ返事で了承し、晴れて邪魔な婚約者を男爵令嬢に押し付けることに成功する。 「――ああそうそう、殿下が入れ込んでいるそちらの彼女って実は〇〇ですよ? まあ独り言ですが」  嘘つき男爵令嬢に騙された王太子は取り返しのつかない最期を迎えることになり……。    ※この作品は過去に公開したことのある作品に修正を加えたものです。  またこの作品とは別に、他サイトでも本作を元にしたリメイク作を別のペンネー厶で公開していますがそのことをあらかじめご了承ください。

筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した

基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。 その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。 王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。

溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。

ふまさ
恋愛
 いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。 「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」 「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」  ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。  ──対して。  傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

処理中です...