私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの

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マリアベルの両親 2

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「ピノ伯爵の茶会なんて断ればよかったのに、なんで応じたんだい?」

「貴方がピノ伯爵の事を調べていたからよ。それとうちの事を変な風に話しているのがピノ夫人だったから、お灸を据えて差し上げないと。って思ったのよ。まさか夫人の息子がマリーに言ってくるなんて思わなかったから驚いたわ。子供に有る事無い事吹聴するなんて最っ低だわ!」


 夫人はおそらくマリーが本物かどうかを見たかっただけでしょうけれど、マリーは立派に成長してどこの令嬢にも引けを取らないんだから! お転婆な所は個性だし迷惑をかけているわけではないもの。

 貴族のマナーや勉強もマリーが自らやりたいと言ってきて嬉しかったのは事実。どこに出しても恥ずかしくない自慢の娘よ!


「子供の前で大人の汚いところを見せるのは私も反対だ。それにしてもピノ伯爵はメアリーに憧れていた一人だろう? 変な目で見られなかった? メアリーは今も変わらず魅力的だから心配だ」


 社交を始めてから心配だ。と口癖のように夫は言う。


「心配してくれるのは嬉しいけれど、大丈夫よ? 貴方とヴェルナーとマリーがいてくれるだけで私は幸せなのよ。家族を救ってくれてありがとう」


 マリーが邸に帰ってきてくれたから止まっていた私達の時間が徐々に進んでいく。立ち止まっている暇はないのだと。

 ヴェルナーは時間が許す限りマリーといるし、昔のように笑顔を見せてくれるようになった。

 マリーが木刀を振っても乗馬をするにしても、二人が楽しそうにしているのを見ると私もみるみるうちに体調が良くなった。


 
「少し時間が掛かってしまったね。でもマリーが帰ってきてくれて私ももちろん嬉しい……マリーを保護してくれたリアンという男の身元がわかった暁には、マリーに会わせてやりたいと思っている。マリーとの約束なんだ……」


 保護してくれたリアンさん。マリーに読み書きを教え、剣術を教え、テーブルマナーを教え、馬にも乗る不思議な人物。


「えぇ。早く見つかると良いですわね。マリーの……いえ私達の命の恩人ですもの……」


 二人で少し寂しそうに笑う。もしマリーがリアンさんと居たいと願ったのなら私たちは……



******


 それから数年経ちマリアベルが学園へ入学する年になった。

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