私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの

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マリアベルのデビュタント

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 その日は朝から邸中の皆んながバタバタとしていた。

「お嬢様は湯浴みを!」

 メイドたちに体の隅々を洗われて、マッサージされて髪にも身体にもオイルをたっぷりつけられて、ツルツルになった。良くママに似ていると言われていたけれど、最近は自分でもママに似ているなぁー。って思うようになった。DNAって凄い。


 ママは社交界の華って言われていたらしくて、すっごいモテたんだそう。

 その時パパは忙しくて夜会に出ても挨拶をしてすぐに帰って仕事をしていたんだって。パパのパパとママが馬車の事故で亡くなったから家督を譲られてすっごく忙しかったみたい!

 新年の王宮での夜会でもパパは忙しくていつも通り挨拶をして帰ろうとしていたら、酔っ払いに絡まれたママをたまたま助けて一目惚れしたんだって!!
 ママもその時からパパの事が気になってしょうがなかったみたいでママの実家のペルソナ公爵家から、手紙を書いてもらって直接お礼を言いに行って、二人の距離が近くなったんだって!

 パパはイケメンだし優しいしモテただろうけれど家が忙しくてそれどころじゃなかったけれど、ママの為ならなんでも出来ちゃうらしい。

 お互いの気持ちを伝え合って、無事婚約。いわゆる電撃婚約だったみたいで国中の男女が騒ついたってママの実家であるペルソナ公爵家で聞いた。

 運命の出会いっていうらしい!


「マリアも運命の出会いとかあるのかなぁ……」

 ってお茶を飲みながらペルソナ公爵家で言ったら、伯父さん達は機嫌が悪くなった。

 その日は伯父さんの弟でママのお兄さん(次男)は現在伯爵位でペルソナ公爵領の隣に領地があって、そこに住んでいて、ようやく会うことができた。領地で問題が起きていたらしくてようやく落ち着いて今に至るんだって。

「マリアベル! やっと会えた!! なんて可愛いんだ!」

 ぎゅうぎゅう抱きつかれて苦しかった……ハグが長いけれど我慢……みんなに心配かけてたんだもんね。

「伯父様? はじめまして」

「初めてじゃないんだよ。久しぶりだ……あいつが中々合わせてくれなくて……メアリーも元気になって良かった……」

 あいつっていうのはパパの事で、仲が悪いわけじゃないけれどパパはママや私のことを思ってのんびりさせてくれている。

 ママの一番上のお兄さんは伯父さん、二番目のお兄さんは伯父さまと呼ぶことにした。

 それから伯父さまから沢山のプレゼントを貰った。今度伯父さまの家族も紹介してくれるみたいだけど伯父さまの子供は男二人なんだって。

 元々ペルソナ公爵家は男系らしく、ママが産まれてきたものだからママのお披露目会は三日三晩パーティーが行われるほどだったみたい。
 ママの婚約の時にパパは伯父さん達から散々難癖つけられて、浮気をしたら命がないと思えとか泣かせたら殺す。とか脅されたんだって! 結婚式では伯父さん達が号泣して恥ずかしかったみたいだしママはとても愛されていたんだと思った。



 そんなこんなでデビュタントを迎える事になったのだけど、パパがエスコートすると言って聞かなかった。

「私、兄さまと行くんじゃなかったの?」

 兄さまにエスコートされてファーストダンスを踊るって聞いていたのに?

「ダンスはヴェルナーに譲ろう。しかし入場はパパがマリーと行く。変な男がマリーに近寄らないように目を光らせなくてはいけないんだ。マリーはどこからどう見ても可愛い!」

 ……親バカだ

「出会った頃のママは美しかったんだがマリーはそれに匹敵するくらいの可愛さだ」

 ……親バカだ

「僕がエスコートしたかったのに! 父上がどうしてもやると言って聞かないんだ……ダンスは絶対に僕と踊ろう。一緒に練習したんだからね」

「うん、パパも兄さまもありがとう」

******

 はぁ……デビュタントとか面倒くさいなぁ。と思いながらもメイド達によって支度が整えられた。


「凄い可愛らしいですわ!」
「うちのお嬢様が一番美しいこと間違いなしね!」

 きゃあ、きゃあと喜ぶメイド達を見ていたら、これ絶対サボりたいなんて言えないやつだ……と諦めた。

「さぁ、さぁ旦那様と奥様とヴェルナー様がお待ちですよ、貴女達も良く頑張りましたがはしゃぎすぎですよ」

 メイド長のアンナさんが呼びにきたので、広間へと向かった。

 広間に着くとドレスアップしたママはもうとてつもなく美しくて、パパも髪の毛を撫で付けていて大人の色気? 的なものが出ていて、兄さまもパパとママのいいとこ取りなイケメンで……辺りはキラキラと輝いていた!

「わぁっ……」

 つい出た言葉だった。この場所は私がいて良い場所なんだろうか? 数年前までは田舎の村に住んでいたのに……急に場違い感が……



「っなんて私の娘は可愛いんだっ!!」

「マリーとっても似合っているわ。可愛いわねぇ~」

 パパは悶絶ママは嬉しそうに言った。

「とても可愛いよ! マリー」

 兄さまが一番落ち着いている感じがした。

「パパもママも兄さまもありがとう。似合ってる? ヒラヒラしててちょっと落ち着かないけど、今日は頑張るね」 


 そういう時みんなが笑顔になっていた。後戻りは出来ぬ……








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