31 / 81
マリアベルのデビュタント
しおりを挟むその日は朝から邸中の皆んながバタバタとしていた。
「お嬢様は湯浴みを!」
メイドたちに体の隅々を洗われて、マッサージされて髪にも身体にもオイルをたっぷりつけられて、ツルツルになった。良くママに似ていると言われていたけれど、最近は自分でもママに似ているなぁー。って思うようになった。DNAって凄い。
ママは社交界の華って言われていたらしくて、すっごいモテたんだそう。
その時パパは忙しくて夜会に出ても挨拶をしてすぐに帰って仕事をしていたんだって。パパのパパとママが馬車の事故で亡くなったから家督を譲られてすっごく忙しかったみたい!
新年の王宮での夜会でもパパは忙しくていつも通り挨拶をして帰ろうとしていたら、酔っ払いに絡まれたママをたまたま助けて一目惚れしたんだって!!
ママもその時からパパの事が気になってしょうがなかったみたいでママの実家のペルソナ公爵家から、手紙を書いてもらって直接お礼を言いに行って、二人の距離が近くなったんだって!
パパはイケメンだし優しいしモテただろうけれど家が忙しくてそれどころじゃなかったけれど、ママの為ならなんでも出来ちゃうらしい。
お互いの気持ちを伝え合って、無事婚約。いわゆる電撃婚約だったみたいで国中の男女が騒ついたってママの実家であるペルソナ公爵家で聞いた。
運命の出会いっていうらしい!
「マリアも運命の出会いとかあるのかなぁ……」
ってお茶を飲みながらペルソナ公爵家で言ったら、伯父さん達は機嫌が悪くなった。
その日は伯父さんの弟でママのお兄さん(次男)は現在伯爵位でペルソナ公爵領の隣に領地があって、そこに住んでいて、ようやく会うことができた。領地で問題が起きていたらしくてようやく落ち着いて今に至るんだって。
「マリアベル! やっと会えた!! なんて可愛いんだ!」
ぎゅうぎゅう抱きつかれて苦しかった……ハグが長いけれど我慢……みんなに心配かけてたんだもんね。
「伯父様? はじめまして」
「初めてじゃないんだよ。久しぶりだ……あいつが中々合わせてくれなくて……メアリーも元気になって良かった……」
あいつっていうのはパパの事で、仲が悪いわけじゃないけれどパパはママや私のことを思ってのんびりさせてくれている。
ママの一番上のお兄さんは伯父さん、二番目のお兄さんは伯父さまと呼ぶことにした。
それから伯父さまから沢山のプレゼントを貰った。今度伯父さまの家族も紹介してくれるみたいだけど伯父さまの子供は男二人なんだって。
元々ペルソナ公爵家は男系らしく、ママが産まれてきたものだからママのお披露目会は三日三晩パーティーが行われるほどだったみたい。
ママの婚約の時にパパは伯父さん達から散々難癖つけられて、浮気をしたら命がないと思えとか泣かせたら殺す。とか脅されたんだって! 結婚式では伯父さん達が号泣して恥ずかしかったみたいだしママはとても愛されていたんだと思った。
そんなこんなでデビュタントを迎える事になったのだけど、パパがエスコートすると言って聞かなかった。
「私、兄さまと行くんじゃなかったの?」
兄さまにエスコートされてファーストダンスを踊るって聞いていたのに?
「ダンスはヴェルナーに譲ろう。しかし入場はパパがマリーと行く。変な男がマリーに近寄らないように目を光らせなくてはいけないんだ。マリーはどこからどう見ても可愛い!」
……親バカだ
「出会った頃のママは美しかったんだがマリーはそれに匹敵するくらいの可愛さだ」
……親バカだ
「僕がエスコートしたかったのに! 父上がどうしてもやると言って聞かないんだ……ダンスは絶対に僕と踊ろう。一緒に練習したんだからね」
「うん、パパも兄さまもありがとう」
******
はぁ……デビュタントとか面倒くさいなぁ。と思いながらもメイド達によって支度が整えられた。
「凄い可愛らしいですわ!」
「うちのお嬢様が一番美しいこと間違いなしね!」
きゃあ、きゃあと喜ぶメイド達を見ていたら、これ絶対サボりたいなんて言えないやつだ……と諦めた。
「さぁ、さぁ旦那様と奥様とヴェルナー様がお待ちですよ、貴女達も良く頑張りましたがはしゃぎすぎですよ」
メイド長のアンナさんが呼びにきたので、広間へと向かった。
広間に着くとドレスアップしたママはもうとてつもなく美しくて、パパも髪の毛を撫で付けていて大人の色気? 的なものが出ていて、兄さまもパパとママのいいとこ取りなイケメンで……辺りはキラキラと輝いていた!
「わぁっ……」
つい出た言葉だった。この場所は私がいて良い場所なんだろうか? 数年前までは田舎の村に住んでいたのに……急に場違い感が……
「っなんて私の娘は可愛いんだっ!!」
「マリーとっても似合っているわ。可愛いわねぇ~」
パパは悶絶ママは嬉しそうに言った。
「とても可愛いよ! マリー」
兄さまが一番落ち着いている感じがした。
「パパもママも兄さまもありがとう。似合ってる? ヒラヒラしててちょっと落ち着かないけど、今日は頑張るね」
そういう時みんなが笑顔になっていた。後戻りは出来ぬ……
72
お気に入りに追加
4,235
あなたにおすすめの小説

そんなに優しいメイドが恋しいなら、どうぞ彼女の元に行ってください。私は、弟達と幸せに暮らしますので。
木山楽斗
恋愛
アルムナ・メルスードは、レバデイン王国に暮らす公爵令嬢である。
彼女は、王国の第三王子であるスルーガと婚約していた。しかし、彼は自身に仕えているメイドに思いを寄せていた。
スルーガは、ことあるごとにメイドと比較して、アルムナを罵倒してくる。そんな日々に耐えられなくなったアルムナは、彼と婚約破棄することにした。
婚約破棄したアルムナは、義弟達の誰かと婚約することになった。新しい婚約者が見つからなかったため、身内と結ばれることになったのである。
父親の計らいで、選択権はアルムナに与えられた。こうして、アルムナは弟の内誰と婚約するか、悩むことになるのだった。
※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。

わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。
ふまさ
恋愛
伯爵令嬢のリネットは、婚約者のハワードを、盲目的に愛していた。友人に、他の令嬢と親しげに歩いていたと言われても信じず、暴言を吐かれても、彼は子どものように純粋無垢だから仕方ないと自分を納得させていた。
けれど。
「──なんか、こうして改めて見ると猿みたいだし、不細工だなあ。本当に、ぼくときみの子?」
他でもない。二人の子ども──ルシアンへの暴言をきっかけに、ハワードへの絶対的な愛が、リネットの中で確かに崩れていく音がした。
望まれない結婚〜相手は前妻を忘れられない初恋の人でした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【忘れるな、憎い君と結婚するのは亡き妻の遺言だということを】
男爵家令嬢、ジェニファーは薄幸な少女だった。両親を早くに亡くし、意地悪な叔母と叔父に育てられた彼女には忘れられない初恋があった。それは少女時代、病弱な従姉妹の話し相手として滞在した避暑地で偶然出会った少年。年が近かった2人は頻繁に会っては楽しい日々を過ごしているうちに、ジェニファーは少年に好意を抱くようになっていった。
少年に恋したジェニファーは今の生活が長く続くことを祈った。
けれど従姉妹の体調が悪化し、遠くの病院に入院することになり、ジェニファーの役目は終わった。
少年に別れを告げる事もできずに、元の生活に戻ることになってしまったのだ。
それから十数年の時が流れ、音信不通になっていた従姉妹が自分の初恋の男性と結婚したことを知る。その事実にショックを受けたものの、ジェニファーは2人の結婚を心から祝うことにした。
その2年後、従姉妹は病で亡くなってしまう。それから1年の歳月が流れ、突然彼から求婚状が届けられた。ずっと彼のことが忘れられなかったジェニファーは、喜んで後妻に入ることにしたのだが……。
そこには残酷な現実が待っていた――
*他サイトでも投稿中

突然決められた婚約者は人気者だそうです。押し付けられたに違いないので断ってもらおうと思います。
橘ハルシ
恋愛
ごくごく普通の伯爵令嬢リーディアに、突然、降って湧いた婚約話。相手は、騎士団長の叔父の部下。侍女に聞くと、どうやら社交界で超人気の男性らしい。こんな釣り合わない相手、絶対に叔父が権力を使って、無理強いしたに違いない!
リーディアは相手に遠慮なく断ってくれるよう頼みに騎士団へ乗り込むが、両親も叔父も相手のことを教えてくれなかったため、全く知らない相手を一人で探す羽目になる。
怪しい変装をして、騎士団内をうろついていたリーディアは一人の青年と出会い、そのまま一緒に婚約者候補を探すことに。
しかしその青年といるうちに、リーディアは彼に好意を抱いてしまう。
全21話(本編20話+番外編1話)です。
私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜
みおな
恋愛
大好きだった人。
一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。
なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。
もう誰も信じられない。

【完結】貴方達から離れたら思った以上に幸せです!
なか
恋愛
「君の妹を正妻にしたい。ナターリアは側室になり、僕を支えてくれ」
信じられない要求を口にした夫のヴィクターは、私の妹を抱きしめる。
私の両親も同様に、妹のために受け入れろと口を揃えた。
「お願いお姉様、私だってヴィクター様を愛したいの」
「ナターリア。姉として受け入れてあげなさい」
「そうよ、貴方はお姉ちゃんなのよ」
妹と両親が、好き勝手に私を責める。
昔からこうだった……妹を庇護する両親により、私の人生は全て妹のために捧げていた。
まるで、妹の召使のような半生だった。
ようやくヴィクターと結婚して、解放されたと思っていたのに。
彼を愛して、支え続けてきたのに……
「ナターリア。これからは妹と一緒に幸せになろう」
夫である貴方が私を裏切っておきながら、そんな言葉を吐くのなら。
もう、いいです。
「それなら、私が出て行きます」
……
「「「……え?」」」
予想をしていなかったのか、皆が固まっている。
でも、もう私の考えは変わらない。
撤回はしない、決意は固めた。
私はここから逃げ出して、自由を得てみせる。
だから皆さん、もう関わらないでくださいね。
◇◇◇◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております

義母様から「あなたは婚約相手として相応しくない」と言われたので、家出してあげました。
新野乃花(大舟)
恋愛
婚約関係にあったカーテル伯爵とアリスは、相思相愛の理想的な関係にあった。しかし、それを快く思わない伯爵の母が、アリスの事を執拗に口で攻撃する…。その行いがしばらく繰り返されたのち、アリスは自らその姿を消してしまうこととなる。それを知った伯爵は自らの母に対して怒りをあらわにし…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる