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学園で殿下に声をかけられました
しおりを挟む「マリーあっちが空いているわよ」
そういうのはマリアベルが学園に来て初めて出来た友達伯爵家の令嬢、アミーとジュリーだった。伯爵家の双子のアミーとジュリーは活発な令嬢だった。たまたま二人が話しているところに出会して、マリアベルが持っていた本を見る二人。
『その本、私たちも好きなの!』
冒険者の物語で、友情を題材にしたものだった。物語に出てくる愛馬との感動シーンは何度見ても目頭を熱くさせる。
アミーとジュリーはこの本を読んで乗馬を始めたらしく、マリアベルと話が合いすぐに仲良くなったのだった。
「うん、良いわね。あそこにしましょう」
今日は天気が良く心地よい風が吹いていて外でランチをしても気持ちがよさそうだった。
屋根付きのガゼボは直射日光が当たらないので最高の場所だと思う。
三人で楽しくランチをして、食後のお茶を楽しんでいたところ
「あれ? ロマーニ侯爵令嬢」
振り向くとそこには笑顔のジェラールが居た。
「殿下……お久しぶりです」
マリアベルが答え、三人とも立ち上がりお辞儀をする。
「ここは学園だから、仰々しい挨拶は不要だよ。楽しんでいるところ急に声をかけてしまって悪かったね」
共をつけずに一人でいるなんておかしい……と思った。殿下ともなれば側近の人を連れて歩いているものでしょう? 首を傾げてしまった。
「殿下はお一人なのですか?」
「あ、あぁ。たまには、ね。そういう日もあるよ。それより……どうして今まで母上のお茶会に参加しなかったんだい? 招待状は届いていたよね?」
ピノ伯爵家のお茶会で懲りたから……学園へ行くようになるとお友達も出来るだろうから無理して社交をする必要はない。ってパパとママが言ってくれたし、近いうちデビュタントがあるからそれまでは家族や親戚と付き合っていれば良いという事になった。
故にお茶会は不参加となっていた。
「パ、いえおとうさまがいずれデビュタントがあるのだから、慌てて社交をする必要はないと仰ったのでその言葉に甘えました」
何か言われたらそう言っておけば良いよ。とパパに言われた。それを言って反論される事はないだろうって。
「……そうか。侯爵が言うのなら仕方がないね。しかし母上が君に会いたがっていたよ。良かったら遊びにおいでよ」
王宮って気軽に遊びに行ける場所じゃないよね!
「殿下は、生徒会に入られたようですし学園でもお仕事もあるのでしょう? お手を煩わしては申し訳ありませんわ」
王妃様の名前を出してくるなんて、これは行かなきゃダメなやつ? お母様はあれから何度か王妃様に会いに行っているはずだし……入学式で生徒会の紹介があったけれど今年から殿下は生徒会長に任命されていた。
「あぁ、そんなこと、」
「ーー殿下ぁ~。殿下ってばぁ! どこですかぁぁ」
すると甘えたような女性の声が聞こえてきた。なんだろう? こんなに大きな声を出しても良いのかな……しかも殿下を呼んでいるみたい。
「……殿下? よろしいのですか? 探されているようですけど」
チラッと殿下を見るとチッ。と舌打ちをしたような?
「悪いが、僕のことは見なかった事にして欲しい。頼むよ。君たちは僕を見ていない、良いね?」
と言うと逃げるようにこの場を去っていった。
「……変なの」
アミーとジュリーの元へ戻る。
「マリーは殿下と知り合いなんだね」
「え、知り合い……? うーーん。一度だけ王宮で会った事があるだけだけど……二人は殿下とは?」
「お茶会で一緒になったことはあるけれど、直接お話はしたことないわよ。挨拶くらいだよね?」
アミーがジュリーに言う。
「そうだね。殿下の婚約者候補探しのお茶会だったよね。その時にマリーと会っていたらもっと早く友達になれていたかもしれないわね!」
ジュリーに言われて、嬉しくなった。
「そうだね。もっと早く友達になりたかった。そうだ! マ、おかあさまがお友達を連れて来なさいって言ってたんだ! 今度良かったらうちでお茶会しない?」
「「やった! 行く!!」」
話が盛り上がっていたところで急に声をかけられて。
「ねぇ! ちょっと聞きたい事があるんだけど!」
茶色の肩まで伸ばした髪の毛の可愛らしい感じの生徒が声をかけてきた。うーーん。顔は可愛いのにちょっと……と言った感じにさせる子だった。
「なにか?」
アミーが返事をした。
「まさかとは思うけれど、ここにジェラール殿下が来なかった?」
「きておりませんわ」
今度はジュリーが答えた。
「そう……おかしいわね。こっち方面にきたと思ったのに」
と言うとそのまま去っていった。うーん。変わった人だわね。
「なにあれ?」
アミーが呆然とする。
「もしかして噂の、殿下に付き纏っている平民の生徒かしら?」
ジュリーが思い出したかのように言った。
それなら私も聞いた事があった。殿下に付き纏っていて殿下もまんざらではないんだったわよね? 殿下が婚約者を作らないのは平民のあの方と恋仲にあって、身分の差をどうするか? って言う話だったわ。だからお茶会があっても特別な関係の人を作らなかったのだとか? これはロマンスの予感ね!
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