私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの

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お茶会(王宮)

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「ここが王宮……」

 首都の……いや、国の中心部! そして今から会う人は王妃様。なんだか住む世界が違う人だ。緊張してきた。

「マリー? どうしたの緊張しているの?」

「……帰りたい」

 良いのかな……私がこんな所に来て。場違いじゃないかな……泣きそうになった

「なんて言う顔をしているの……今日は無理はしないでおきましょう。ご挨拶をしてから帰りましょうか?」

「いいの?」

「他に招かれている方もいるから、私たちがいなくてもどうにかなるわよ。マリーが楽しくないのならママも嫌よ。無理して笑って酷くなるくらいなら、その前に帰っちゃえば良いの」

 帰っちゃえばって簡単に言うけれど、ママが言うと説得力があるから不思議なものだ。



「ママ、ありがとう」


 席に案内されて、しばらくすると王妃様が来て時間通りにお茶会が始まった。

 今日は伯爵家から侯爵家の女の子がいるお家で王妃様と交流がある家が招待されていた。王族以外で次に身分の高い公爵家には年頃の女の子が居ないから招待はされていないみたい。年齢は十歳から十四歳までで学園に入る前までの女の子だった。



「ロマーニ夫人! お久しぶりね。元気になられたようで安心しました」

 王妃様が声をかけてきてくれた。身分の高い順に声をかけるらしくてうちは侯爵家だからすぐにお話をすることが出来た。


「王妃様、お久しぶりでございます。長い間体調を崩しておりましたがこの通り元気になりました。その節はご心配をおかけしてしまいまして申し訳ございませんでした。お礼を申し上げます」


 ママは王妃様に挨拶するとカーテシーをした。すると王妃様は私を見た。


「……まぁ! 貴女が……よく来てくれましたわね。本日はゆっくりして行ってちょうだいな」

 気さくな感じ? なのかな。


「王妃様この子がうちの娘です。マリーご挨拶を」

 ごくっ。すっごい……緊張の瞬間。それに周りからも視線を感じる。ここで失敗したりしたら家族や先生にも恥をかかせてしまう。


「……王妃様初めてお目にかかります。ロマーニ侯爵が娘、マリアベルと申します。よろしくお願いします」

 なんとか笑顔でカーテシーをした。


「ご挨拶ありがとう、マリアベル嬢とは初めてではないのよ? 貴女が小さい頃に会ったことがあるのよ。覚えていないかしら?」

 ? 覚えていない。どうしよう……ママを見た。


「王妃様、娘は小さかったものですから記憶にないようなのですわ。マリー貴女は昔パ、お父さまがお仕事で登城した際に王宮に何度か来たことがあって、その時に王妃様にもお会いしたことがあるのよ」

 懐かしそうに穏やかな顔でママは笑った。


「夫人を小さくしたような可愛い子で、よく走り回ってロマーニ侯爵を困らせていたわね。懐かしいわ……よく戻ってくれました。また会うことができてとても嬉しく思います」

「……ありがとうございます」

 緊張してしまって良い言葉が思いつかない。覚えていないけれど此処に来たことがあるんだわ。


「……王妃様、来てすぐで申し訳ありませんが、わたくしも娘もまだ社交を始めたばかりで、緊張のあまり体調が……ご招待頂いて申し訳ございませんが本日はこれにて失礼させていただいてもよろしいでしょうか?」


 本当に挨拶だけで?! 王妃様にお断りできるなんてママすごい……それにママの顔元気がなさそう。演技なの?


「それはいけませんね。体を大事にしてちょうだい。今度は個人的にお話しましょう。マリアベル嬢も一緒にね」

「はい」

「王妃様のお許しも得られたからわたくし達は、失礼致します。マリー行きましょう」

「はい。王妃様失礼致します」

「えぇ、また待っているわね」


 控えていたうちの侍女と護衛達と共にお茶会を後にした。



******


「ママ、良かったの?」

「良いのよ。王妃様からの了承を得たもの。明日ゴメンなさい。ってお手紙を書くから失礼にあたらないわよ」

 ママが笑ってくれたから、大丈夫なんだと思った。王宮の渡り廊下を歩いていたら、急に風が吹いて帽子が飛んでいった。

「あっ!」

 急いで帽子を取りに行くが風で転がる。

「待って~!」


 コロコロと転がる帽子をキャッチした場所は廊下ではなくて庭だった。

「お嬢様ー!」

 侍女の声が聞こえた。早く戻らなきゃ! 立ち上がってみんなの元へ駆け出した。すると、どんっと人にぶつかりお尻をついてしまった。

「いたたたた……」

 ぶつかった相手もお尻をついたようだったが、立ち上がって手を出してくれた。


「急にぶつかってきたから驚いた……大丈夫?」

 ちょっと年上? の男の子の手を取った。

「っゴメンなさい。急いでて前をちゃんと見ていませんでした」

 頭を下げた。

「そうか。これからは気をつけて。走っては危ないからね」

「そうします。すみませんでした」


「お嬢様~!」

 あっ! 行かなきゃ。

「私呼ばれているので行きます。ぶつかってしまってすみませんでした」

 頭をもう一度下げて男の子の前から立ち去った。

「はーい! ここにいるよ」


 その後少し汚れたドレスを見てママに走っちゃダメと怒られた。男の子にぶつかったって言ったら、罰として二週間素振りは禁止と言われた……



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