15 / 81
お茶会(王宮)
しおりを挟む「ここが王宮……」
首都の……いや、国の中心部! そして今から会う人は王妃様。なんだか住む世界が違う人だ。緊張してきた。
「マリー? どうしたの緊張しているの?」
「……帰りたい」
良いのかな……私がこんな所に来て。場違いじゃないかな……泣きそうになった
「なんて言う顔をしているの……今日は無理はしないでおきましょう。ご挨拶をしてから帰りましょうか?」
「いいの?」
「他に招かれている方もいるから、私たちがいなくてもどうにかなるわよ。マリーが楽しくないのならママも嫌よ。無理して笑って酷くなるくらいなら、その前に帰っちゃえば良いの」
帰っちゃえばって簡単に言うけれど、ママが言うと説得力があるから不思議なものだ。
「ママ、ありがとう」
席に案内されて、しばらくすると王妃様が来て時間通りにお茶会が始まった。
今日は伯爵家から侯爵家の女の子がいるお家で王妃様と交流がある家が招待されていた。王族以外で次に身分の高い公爵家には年頃の女の子が居ないから招待はされていないみたい。年齢は十歳から十四歳までで学園に入る前までの女の子だった。
「ロマーニ夫人! お久しぶりね。元気になられたようで安心しました」
王妃様が声をかけてきてくれた。身分の高い順に声をかけるらしくてうちは侯爵家だからすぐにお話をすることが出来た。
「王妃様、お久しぶりでございます。長い間体調を崩しておりましたがこの通り元気になりました。その節はご心配をおかけしてしまいまして申し訳ございませんでした。お礼を申し上げます」
ママは王妃様に挨拶するとカーテシーをした。すると王妃様は私を見た。
「……まぁ! 貴女が……よく来てくれましたわね。本日はゆっくりして行ってちょうだいな」
気さくな感じ? なのかな。
「王妃様この子がうちの娘です。マリーご挨拶を」
ごくっ。すっごい……緊張の瞬間。それに周りからも視線を感じる。ここで失敗したりしたら家族や先生にも恥をかかせてしまう。
「……王妃様初めてお目にかかります。ロマーニ侯爵が娘、マリアベルと申します。よろしくお願いします」
なんとか笑顔でカーテシーをした。
「ご挨拶ありがとう、マリアベル嬢とは初めてではないのよ? 貴女が小さい頃に会ったことがあるのよ。覚えていないかしら?」
? 覚えていない。どうしよう……ママを見た。
「王妃様、娘は小さかったものですから記憶にないようなのですわ。マリー貴女は昔パ、お父さまがお仕事で登城した際に王宮に何度か来たことがあって、その時に王妃様にもお会いしたことがあるのよ」
懐かしそうに穏やかな顔でママは笑った。
「夫人を小さくしたような可愛い子で、よく走り回ってロマーニ侯爵を困らせていたわね。懐かしいわ……よく戻ってくれました。また会うことができてとても嬉しく思います」
「……ありがとうございます」
緊張してしまって良い言葉が思いつかない。覚えていないけれど此処に来たことがあるんだわ。
「……王妃様、来てすぐで申し訳ありませんが、わたくしも娘もまだ社交を始めたばかりで、緊張のあまり体調が……ご招待頂いて申し訳ございませんが本日はこれにて失礼させていただいてもよろしいでしょうか?」
本当に挨拶だけで?! 王妃様にお断りできるなんてママすごい……それにママの顔元気がなさそう。演技なの?
「それはいけませんね。体を大事にしてちょうだい。今度は個人的にお話しましょう。マリアベル嬢も一緒にね」
「はい」
「王妃様のお許しも得られたからわたくし達は、失礼致します。マリー行きましょう」
「はい。王妃様失礼致します」
「えぇ、また待っているわね」
控えていたうちの侍女と護衛達と共にお茶会を後にした。
******
「ママ、良かったの?」
「良いのよ。王妃様からの了承を得たもの。明日ゴメンなさい。ってお手紙を書くから失礼にあたらないわよ」
ママが笑ってくれたから、大丈夫なんだと思った。王宮の渡り廊下を歩いていたら、急に風が吹いて帽子が飛んでいった。
「あっ!」
急いで帽子を取りに行くが風で転がる。
「待って~!」
コロコロと転がる帽子をキャッチした場所は廊下ではなくて庭だった。
「お嬢様ー!」
侍女の声が聞こえた。早く戻らなきゃ! 立ち上がってみんなの元へ駆け出した。すると、どんっと人にぶつかりお尻をついてしまった。
「いたたたた……」
ぶつかった相手もお尻をついたようだったが、立ち上がって手を出してくれた。
「急にぶつかってきたから驚いた……大丈夫?」
ちょっと年上? の男の子の手を取った。
「っゴメンなさい。急いでて前をちゃんと見ていませんでした」
頭を下げた。
「そうか。これからは気をつけて。走っては危ないからね」
「そうします。すみませんでした」
「お嬢様~!」
あっ! 行かなきゃ。
「私呼ばれているので行きます。ぶつかってしまってすみませんでした」
頭をもう一度下げて男の子の前から立ち去った。
「はーい! ここにいるよ」
その後少し汚れたドレスを見てママに走っちゃダメと怒られた。男の子にぶつかったって言ったら、罰として二週間素振りは禁止と言われた……
75
お気に入りに追加
4,240
あなたにおすすめの小説

突然決められた婚約者は人気者だそうです。押し付けられたに違いないので断ってもらおうと思います。
橘ハルシ
恋愛
ごくごく普通の伯爵令嬢リーディアに、突然、降って湧いた婚約話。相手は、騎士団長の叔父の部下。侍女に聞くと、どうやら社交界で超人気の男性らしい。こんな釣り合わない相手、絶対に叔父が権力を使って、無理強いしたに違いない!
リーディアは相手に遠慮なく断ってくれるよう頼みに騎士団へ乗り込むが、両親も叔父も相手のことを教えてくれなかったため、全く知らない相手を一人で探す羽目になる。
怪しい変装をして、騎士団内をうろついていたリーディアは一人の青年と出会い、そのまま一緒に婚約者候補を探すことに。
しかしその青年といるうちに、リーディアは彼に好意を抱いてしまう。
全21話(本編20話+番外編1話)です。

婚約破棄を兄上に報告申し上げます~ここまでお怒りになった兄を見たのは初めてでした~
ルイス
恋愛
カスタム王国の伯爵令嬢ことアリシアは、慕っていた侯爵令息のランドールに婚約破棄を言い渡された
「理由はどういったことなのでしょうか?」
「なに、他に好きな女性ができただけだ。お前は少し固過ぎたようだ、私の隣にはふさわしくない」
悲しみに暮れたアリシアは、兄に婚約が破棄されたことを告げる
それを聞いたアリシアの腹違いの兄であり、現国王の息子トランス王子殿下は怒りを露わにした。
腹違いお兄様の復讐……アリシアはそこにイケない感情が芽生えつつあったのだ。

わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。
ふまさ
恋愛
伯爵令嬢のリネットは、婚約者のハワードを、盲目的に愛していた。友人に、他の令嬢と親しげに歩いていたと言われても信じず、暴言を吐かれても、彼は子どものように純粋無垢だから仕方ないと自分を納得させていた。
けれど。
「──なんか、こうして改めて見ると猿みたいだし、不細工だなあ。本当に、ぼくときみの子?」
他でもない。二人の子ども──ルシアンへの暴言をきっかけに、ハワードへの絶対的な愛が、リネットの中で確かに崩れていく音がした。

政略結婚で「新興国の王女のくせに」と馬鹿にされたので反撃します
nanahi
恋愛
政略結婚により新興国クリューガーから因習漂う隣国に嫁いだ王女イーリス。王宮に上がったその日から「子爵上がりの王が作った新興国風情が」と揶揄される。さらに側妃の陰謀で王との夜も邪魔され続け、次第に身の危険を感じるようになる。
イーリスが邪険にされる理由は父が王と交わした婚姻の条件にあった。財政難で困窮している隣国の王は巨万の富を得たイーリスの父の財に目をつけ、婚姻を打診してきたのだ。資金援助と引き換えに父が提示した条件がこれだ。
「娘イーリスが王子を産んだ場合、その子を王太子とすること」
すでに二人の側妃の間にそれぞれ王子がいるにも関わらずだ。こうしてイーリスの輿入れは王宮に波乱をもたらすことになる。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
本日、貴方を愛するのをやめます~王妃と不倫した貴方が悪いのですよ?~
なか
恋愛
私は本日、貴方と離婚します。
愛するのは、終わりだ。
◇◇◇
アーシアの夫––レジェスは王妃の護衛騎士の任についた途端、妻である彼女を冷遇する。
初めは優しくしてくれていた彼の変貌ぶりに、アーシアは戸惑いつつも、再び振り向いてもらうため献身的に尽くした。
しかし、玄関先に置かれていた見知らぬ本に、謎の日本語が書かれているのを見つける。
それを読んだ瞬間、前世の記憶を思い出し……彼女は知った。
この世界が、前世の記憶で読んだ小説であること。
レジェスとの結婚は、彼が愛する王妃と密通を交わすためのものであり……アーシアは王妃暗殺を目論んだ悪女というキャラで、このままでは断罪される宿命にあると。
全てを思い出したアーシアは覚悟を決める。
彼と離婚するため三年間の準備を整えて、断罪の未来から逃れてみせると……
この物語は、彼女の決意から三年が経ち。
離婚する日から始まっていく
戻ってこいと言われても、彼女に戻る気はなかった。
◇◇◇
設定は甘めです。
読んでくださると嬉しいです。
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる