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お茶会
しおりを挟む「マリー、まずはママのお友達の家に行きましょうね」
そう言ってママと一緒に出かける事になった。馬車に乗りラング伯爵というお家に招かれた。
ラング伯爵はママのお友達の家で、子供は男の子が二人いて私よりも二歳上の同じ歳の子がいるようだ。
私が誘拐されてラング伯爵夫人は心労で寝込んでしまったとパパから聞いた。私が戻ってきたと聞いてとても喜んでくれたらしくけど、ラング夫人の事も覚えていない。
今日は社交の練習がてらラング伯爵家に招かれたのだが何かあってもママの親友だから大丈夫なんだって。
早く私に会いたいと言ってくれたみたいだけど、パパとママはしばらくは家族だけで過ごしたいからと断っていたみたい。伯爵夫人はそれはそうよね。そのかわり社交を始めるときはうちで練習して欲しいと言ってくれたそうだ。
「ようこそ! まぁ。メアリーの小さい頃にそっくりだわ」
伯爵夫人は私達をとっても歓迎してくれたようだった。
ママの親友の伯爵夫人はとても優しくて穏やかな人だった。嬉しそうに庭へと案内してくれてお茶会を始めましょう! と言ってくれた。
「メアリーが元気になって良かったわ。マリアベルちゃんのおかげね」
涙を浮かべながら私の顔を見て喜んでくれた。
「ジェーンありがとう。マリーは良い人に保護されていて本当に良かったわ……生きていてくれて私たちがどれだけ嬉しかったか」
話を聞く限りママの体調が良くなくて社交も断っていたようだ。久しぶりに親友に会うという事でママは緊張していた。
四年もの間、私がどういう生活をしていたかとか面白おかしく言われることもあるようだしその事にパパとママは胸を痛めていたが、そこは侯爵家の娘で王家の信頼の厚い家を悪くいう人は罰せられる事もあるようだった。
『有る事無い事面白おかしく言うことは許さない。ひとりの令嬢の人生を無駄にするな! 被害者家族を誹謗中傷するようなものは貴族の風上に置けない』
と殿下と王妃様がおっしゃったようだ。
『四年もの間娘を必死で探した侯爵のおかげでこの国の膿を出す事ができた。令嬢の誘拐は遺憾でありあってはならぬことだが良く探し出した。生きている事が奇跡であると思う』
そう言われてしまっては貴族達はもう何も言えないが、面白おかしく言うものはまだいるらしい。だから私たち家族は堂々とすることにより無視する事にした。
「あら、ヤダ! 私ったら息子を紹介しようとしていたのに、うっかりしちゃった。ハンナ呼んできてちょうだい!」
使用人に声をかけてラング伯爵家の兄弟がやってきた。
「初めまして、私はハビエル・ラングです」
「僕はアレックス・ラングです」
ラング兄弟が挨拶をしてくれた。
「ほらマリーもご挨拶しなさい」
ママに言われて立ち上がりカーテシーをした。
「私はマリアベル・ロマーニと申します。よろしくお願い致します」
にこっと笑顔を見せると兄弟の顔は赤く染まった。
「まぁ! マリーちゃんの可愛さに息子がノックダウンされたみたい!」
「母上、やめてください」
長男のハビエルが言う。ノックダウンってなんだろう? 首を傾げると
「ふふっ、可愛らしいわね。お二人とも一緒にお茶をしましょう?」
ママが誘って改めて五人でのお茶会となった。夫人はいっぱい話しかけてくれて、ジェーンおばさんと呼んでね。と気さくに言ってくれてママも頷いていたからそう呼ぶ事にした。
「ここのお庭はとても素敵ですね」
緑が多くて癒される感じだ。
「ハビエル、アレックス、マリーちゃんに庭を案内してあげてくれる?」
ジェーンおばさんに言われて三人で庭の散策に行く事になった。
「マリアベル嬢、私もマリーと呼んでも良い?」
ハビエルに言われた。もちろんオッケーだ。みんなに呼ばれているから。
「はい」
名前で呼んだ方が親しみを感じるよね!
「私のことはハビエルとアレックスの事も名前で呼んで」
「はい。ハビエル、アレックスよろしくお願いしますね」
兄様以外の男の子と初めて遊んだ。
「あ、リスだ! 可愛い」
「近寄ったら可哀想だよ。ほら木の実を食べているよ」
「ご飯中だったのね。邪魔してはいけませんね」
ラング伯爵家の庭にはちょっとした森がある。この森は昔からそのままで神域のようで手付かずのままにしているんですって。ラング伯爵家の守り神が祀られているとか言っていた。
だから小動物も棲んでいるらしい。
三人でかけっこをしたり、虫を捕まえて遊んだ。久しぶりに外を走ったような気がした。
そろそろママ達の元へ戻ろうとした時……
「あ、かけっこをしたり虫を捕まえた事ママには言わないでほしいの」
せっかく淑女としてマナーのお勉強をしているのに、パパやママ、先生の顔を潰す事になる。しゅんとしているとハビエルが
「マリーが言わないでと言うのなら内緒にしておくよ。楽しかったよ、また遊ぼうね。アレックスも内緒にできるよな?」
「うん。マリーまた遊ぼう」
二人はジェーンおばさんに似て優しいようだ。
「うん! また遊ぼうね」
マリー初めての社交はうまくいったようだ。
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