私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの

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マリアベルの特技

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「兄さまぁ~」

 マリーが戻ってきて数週間。僕は剣術場で木刀を振っていた。

「マリー、ここは危ないよ! 本物の剣もあるし怪我でもしたらどうするんだい?」

 木刀を置いてマリーに近寄る。今日もマリーはふわふわとしたスカートを履いていて、髪の毛はポニーテールで纏められていた。

「マリアもやりたい!」

「……え? 木刀を振るの?」

「うん。マリアいつも練習してたの」

「そうなの? でも僕の木刀はマリーには重いだろうから、僕が昔使っていた物を持ってきてもらおう」


 マリーが木刀を振っていた? 練習していた。と言う。どれだけのものか見てみたいと言う興味から木刀を持って来させる。父も好きな事はさせて良いと言った。母には内緒にしておこうかな……


 騎士に木刀を頼み持ってきてもらった。

「これで良い?」


 マリーに木刀を渡すと、笑顔で木刀を持ち、ぶんぶんっと心地の良い音を立てて上から下へと振るい出した。構えも良いし、良く空気を切れている。初めて振ったと言う感じではなかった……練習していたと言うのは事実だろう。


「構えも良いね……誰に習ったの?」

 マリーが木刀を振り終えたので聞いてみた。額に汗を光らせながら笑顔で答えるマリアベル。

「お母さん! お母さんはとても強いの」


 保護してくれた人は文字を教え、木刀を振ることも教えていたのか……何者なんだろうか……

 それから僕も一緒になり木刀を振った。母が聞くと驚くだろうが、父には好きにさせるように言われたから怪我をするような事をさせなければ良いだろう。マリーがやりたいと言っているのだから。

 マリーが木刀を振る姿を見て騎士たちはハラハラとしていて少し面白かった。と言うのは父にも言わないでおこう。


「マリーそろそろ疲れただろう?」

 ポニーテールにしていたリボンも乱れていてこの姿で母の前に出てはマズイ。控えていたメイドに髪型を整えさせた。


「うん! でも楽しかった」

 ここに来てマリーの一番良い笑顔が見れた気がする。汗をかいたのでタオルでマリーの顔も拭いてやると嬉しそうな顔をしていた。

 それからマリアベルと手を繋ぎ邸の外を案内しようと思うと馬の鳴き声が聞こえてきた。




「兄さま、お馬さんいるの?」

「興味ある?」

「うんっ」


 厩務員がちょうど世話をしているところだった。

「これはこれはヴェルナー様と……とお嬢さまっ!」

 マリーが帰ってきたと言う事は邸宅に住んでいるものなら誰でも知っている。

「マリーが馬を見たいと言うから連れてきたんだ」

 頭をサッと下げる厩務員たち。

「おとなしいをみせてくれる?」

「はい。ルディにしましょう。このはまだ子供でおとなしい性格です」

 赤い毛並みの馬を連れてくる一人の厩務員。

「触ってみる?」

 ヴェルナーがマリーに言うと、ルディはマリーに頭を下げるようにマリーの目線に合わせてきた。恐る恐るマリーがルディに触れると嬉しそうな顔をするルディ。


「へぇ。ルディはお嬢様を気に入ったようですね」

 気を良くしたのかにこにことルディと触れ合うマリー。

「兄様、マリアお馬さんに乗りたい」

 乗馬か……危ないよな。しかし貴族の子女でも乗馬はするけど。うーーん。


「マリーにはまだ早いんじゃないかな? まずはポニーから練習する?」

「ポニー?」

「馬より小さくて温厚な性格のものが多いから、まずはポニーで練習をすると良いと思うよ」

 馬は背が高いから乗るのにも苦労するだろう。乗馬をする令嬢も増えてきているし、興味があると言うのなら練習するのも悪いことではない。木刀を振り回されるより良い……

 その後、厩務員から聞いた話によると現在練習できるようなポニーは居ないようだ。いることに入るが怪我をしていてまだ人を乗せられる状態ではないとの事。

 父に相談すると、ポニーに興味があるのなら探してくれ。と厩務を任せている男にポニーを購入するように言った。


 どうやらマリーは少しだけお転婆なのかもしれない。


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