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思い出?
しおりを挟む「マリーは、ミルクパンとスクランブルエッグが好きだったのよ?」
ママは私の隣に座って説明してくれた。それを口に入れると思わず
「おいしい」
と口にした。懐かしいとかそう言う感じなのかもしれないしただ単に美味しかっただけかもしれない。
「そう? 良かったわ」
パパもママも兄さまも嬉しそうに笑っていた。
もそもそとパンを食べるとミルクの味がしてほんのりと甘い。
「明日は商人を呼ぶから必要なものを揃えましょうね」
「マリーが見て良いと思ったり欲しいと思ったものはなんでも言っていいんだよ」
パパとママに言われた。欲しいもの……? ってなんだろう。
「父上も母上もマリーは帰ってきたばかりなのですから、まずはマリーとゆっくり過ごす事を考えてはいかがですか?」
「そうね。嬉しくてつい。ごめんなさいねマリー」
「ヴェルナーの言う通りだな」
「マリー、食べ終わったら邸を案内するよ。僕と一緒に邸の探検に行こうか?」
「探検? いくっ!」
目をキラキラとさせてヴェルナーを見るマリアベル。その姿を見てメイド達はほっこりとしていた。食事を終えてヴェルナーとマリーは手を繋ぎ歩き出す。
「大っきいお家ー」
きょろきょろと邸を見ながら興味ありげに歩き出す。
「マリーの屋敷だよ。迷子にならないようにちゃんと覚えて。それでも分からなくなったら誰かにすぐに聞くんだよ」
「うん」
お部屋がいっぱいある。何部屋くらいあるんだろう……? お母さんと住んでいた部屋は三部屋でも広いと思っていたのになぁ。
サロンや応接室、ホールまであって歩き疲れてきた。
「兄さま、足が痛い」
とうとう足が止まってしまった。慣れないヒラヒラしたワンピースに新しい靴。
草原を駆け回る事はあっても大理石の床を慣れない靴で歩き回ることなんて無かった。
「ごめんごめん。探検はまた明日にしようか! あ、そうだこの部屋に入る? 図書室なんだ」
「図書室? ご本があるの?」
本はお母さんに良く読んでもらっていたから、本は大好き。
「マリーは本が好きなの?」
「お母さんがね良く読んでくれたの」
「どんな本を読んでくれたの?」
「冒険をする話。ワクワクして楽しかったよ」
眠る前に良く読んでもらった。続きが気になるのにうとうとしてすぐ寝ちゃったっけ。続きが読みたくて読み書きも教えてもらった。
「ここには本がたくさんあるからマリーも好きな本を探すと良いよ。僕が読んであげる」
椅子に座り靴を脱がしてもらって、子供向けの本のコーナーに連れて行かれた。
マリアベルが手に取った本は隣国で出版された本だった。
「この本読んだことがない、続きがあったんだぁ」
隣国の言葉で書かれている本を嬉しそうに眺めていた。侯爵家の嫡男として隣国の言葉は習っていて、理解できるし読むことが出来るヴェルナー。
「兄さま、このご本マリアお部屋で読みたい」
目をキラキラと輝かせながらヴェルナーを見つめるマリアベル。
「マリーは字が読めるの?」
ずっと田舎の片隅で過ごしてきたマリアベル。読み書きは出来ないのではないだろうか……とヴェルナー思った。読み書き出来ないのなら一から習わなくてはならない。
幼い頃に誘拐されたマリアベルはこれから貴族の令嬢としてマナーをはじめとする勉強を始めなくてはいけないだろう。いくら戻ってきたばかりとは言えずっと家に閉じこもっているわけにはいけない。
マリアベルのお披露目会、デビュタントや学園に通うことを考えたら教育は早くしたほうがいいと思っていた。
「うん、字が読めないとご本が読めないもん」
「これは読める?」
ヴェルナーが出してきた本は、同じ作者の本でこの国の文字で書かれている本だ。
「うん。読めるよ」
にこっと笑うマリアベル。
マリアベルはこの国の言語と隣国の言語が理解できるということか……? お母さんと言った人物は何者なんだろう……
「マリーが本が好きだということが分かって嬉しいよ。この図書館の本は好きに持って行って構わないよ」
「わぁ。嬉しい」
一冊の本をぎゅっと抱えるマリアベル。
「さぁ、そろそろ戻ろうか? 歩けるかい?」
足を見ると靴擦れが見られた。
「サイズが合わなかったのかな? 可哀想に」
ヴェルナーは護衛騎士に言ってマリアベルをおんぶするように伝えた。
「わぁ。高い」
疲れて歩けないと言ったらお母さんはおんぶをしてくれた。お母さんの元から離れて数日だけど懐かしく感じておんぶされている護衛騎士の首にギュッと抱きついた。
そのあと部屋に連れて行ってもらって、兄様に本を渡された。メイドの手によって靴擦れの手当てをされて、大人しくするようにと言われて、兄さまは部屋から出て行った。
大人しくしてなきゃいけないのならご本を読もう! ソファにころんと寝転がった。
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