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エルマン

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 ~エルマン視点~

 いったい誰からの手紙なんだ! 差出人が書いてない怪しい手紙だ! 昼休憩に読むつもりだったのならとっとと開けて読め! いや。ハンカチやら手作りのお菓子を渡すのが先だったんだろう。エマは照れていてそんな姿も可愛い。

 エマと一緒にいると楽しくて離れがたくなる。話をしていると楽しいし、俺自身よく笑うようになった。将来はエマと一緒になりたい。その気持ちは変わっていないけれど、もっと深い気持ちでそう思うようになった。
 婚約をしたいと伯爵家に打診をしていて、一度断られたのだがもう一度考えて欲しい。と言ってからは断られていない。例の学園での件も解決まではエマの兄キリアンと協力して解決する事が出来たと説明した。そして俺がエマをどのように思っているか気持ちを伝えたのだ。するとエマが俺をいいと思っているのなら反対しない。と言ってくれた。要するに、エマが俺を好きになってくれればいいんだよな? 

 エマには申し訳ないが俺が原因で入学時から友人がいない。自分が令嬢たちから好意的に見られているのは感じていたが、俺がエマを好きになったからエマはあらぬ噂を立てられ、友人が出来なかった。フェルマンは令嬢達からモテているし、そのフェルマンもエマにちょっかいをかけ、ナンパな人は嫌い。とエマが言うからナンパなキャラはやめた。それも原因でエマが……。

 当の本人は初めこそ悩んでいたようだが、庭師兼護衛のサムエルに孤高の華になればいい。と言われてその気になっている。無理して友達を作るのはやめたそうだ。さっぱりしていてエマらしいといえばそうだ。友人といえば俺もいないし、あれからフェルマンとも距離を置いている。今まではフェルマンと一緒にいすぎて頼りきっていた。寂しくはあるが自分の蒔いた種できっかけがあれば、元に戻る。そんな関係だと思う。

 エマが刺繍をしてくれたハンカチをじっと見る。うちの家紋を刺繍してくれたのはエマなりのメッセージだと思った。すごく嬉しくてエマをもっと好きになった。エマも俺の事は嫌いではないと思う。楽しそうにしてくれるし、よく笑っている。
 ただ、男女の関係というか、友人のように思っているのではなかろうか? 俺を好きになってくれるまで道のりは遠そうだ。エマに貰った手作りパウンドケーキを出して、メイドにお茶を淹れてもらった。エマが作ってくれたかと思うとさらに美味いと感じる。そしてまた刺繍をじぃーっと見つめる。これは愛だな……。なんていうとエマはどうな顔をするのだろうか。

「エルマン!」

 急に名前を呼ばれて驚いた。

「母上っ、なんですか。ノックくらいしてください!」
「したわよ。返事がないから入ってきたのよ」
「あぁそれはすみませんね。考え事をしていたものですから」
「あら何を大事そうに持っているの?」
「母上には関係ありません」
「大事な物?」
「すっごく大事です。宝物ですよ」

 エマから初めて貰った物だから宝物でまちがいない。いや、フレームに入れて飾るのもアリか?

「エルマン貴方変わったわね。今の方が人間らしくて良いわ。エマちゃんのおかげ?」

 見合い話を持ってきたのは母上だったな。

「そうです。エマが俺を人間らしくしてくれます。母上が見合い話を持ってきた時は面倒だと思っていましたが、エマとあのタイミングで出会わせてくれてありがとうございます」 

「エルマンが素直だとママも嬉しくなってしまうわねぇ。そうだわ。今度のテストで上位を取ったらご褒美をあげるわ。だから頑張って。フェルマンもそれを望んでいると思うのよね」
「フェルマンが?」
「そうよ、エルマンはやれば出来る子なんだからもっと我儘でも良いの」
「エマも同じ様な事を言っていました」
「あら、そうなの。今度エマちゃんをお茶に誘ってみようかしら! そうだ! エマちゃんもテストで頑張ったら2人揃ってご褒美をあげるわ」
「エマの分もですか?」
「そうよ。ママに任せなさい。息子の恋を陰ながら応援するわよ! エルマン今のうちにロマンス小説を読んで勉強しなさいな!」

 母上は部屋を出て行き、おすすめロマンス小説をどんっ! と置いていった。ロマンス小説の勉強が先か、テスト勉強が先か……! まだまだ覚えなきゃいけないことがたくさんあるのに、困ったもんだ。

 スマホとやらが何かはよく分からないが、物知りになれ。という事だろう。

 植物辞典を丸覚えしたから植物に詳しくなってしまったが何を聞かれても答えられる様にしなきゃいけないからな。小型カメラも手に入れたし、いつでも写真が撮れる。ゲームはカードゲームをポケットに入れてある。出来ることからコツコツとやっていこう。エマに退屈な男だと思われたくない。
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