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放課後

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 授業が終わり馬車を待たせてあるエリアに行こうとした時、複数人の令嬢に囲まれた。

「貴女一体どういう手を使ったわけ? エルマン様といえば難攻不落の人気の令息なのよ! なのになんの取り柄もない、貴女がなぜ婚約者に選ばれたの? 卑怯な手を使ったに違いないわよね!」

 直接文句を言ってきた。陰でコソコソ言われるよりまだいっか。そう思えてしまうのもどうかと思うけど。

「ちょっと、何か言ったらどう?」

 肩をドンと叩かれた。現世の私は力のないか弱い令嬢だから尻餅をついた。どこの世界でも陰湿なイジメがあるのね。

「そんなんだから友達が1人もいないのよっ!」
「そうよ! だから異性に色目を使うしかないのよ!」

 私だって友達が欲しい。なんでも話せる友達がいたら学園生活は楽しいだろう。どうせ嫌われているのだからもういっか。1人の方が楽だ……。

「友達がいないのは認めます。嫌われているのだと自覚しています」

 起き上がりスカートの汚れを叩いた。せめて室内だったら目立たなかったと思うけれど屋外だからスカートに土が付いてしまった……。

「え、自覚してんの。驚きだわ」

 サイテーだの。ふざけるな。など言われる。この令嬢達口が悪くない?

「そりゃしますよ。声をかけられる時は文句を言われる時だけです。でも陰で言われるより直接言われた方がマシです。だって反論出来ますもの」

 にこりと笑みを浮かべる。すると逆上した令嬢達。

「ふざけてんの?」
「ふざけていませんよ。いたって真面目です。何を言われても良いです。私は何もしていませんもの」
「存在が邪魔だって言ってんの! どんな手を使ってエルマン様やフェルマン様と仲良くなったのよ!」
「貴方たちに答える必要はなさそうです」
「本当に生意気な女ね! たかが伯爵家の令嬢が侯爵家のエルマン様とうまくいくわけないでしょ! あんたがしつこく付き纏って、お情けで婚約者になろうとしているんでしょ!」

 えぇー。話が湾曲されている。

「何を言っても信じてもらえないようなので、話をしたくありません」
「何人の令嬢が玉砕したと思ってるの! だからみんなのエルマン様、フェルマン様なのよ!」
「私は新入生で、友達がいませんから初めて聞きました。家の者が心配するので失礼します」

 早く切り上げないと。と思った瞬間だった。

「このっ! 生意気なのよっ」

 バシッ! 頬に痛みが走る。驚いて目を見開いてそのまま倒れてしまった(2回め)

「痛っ……」

 人生で(前世を含めて)初めて頬を打たれた。陰で文句を言われて心が痛むこともあったけどこうやって悪意を向けられて暴力を振るわれるなんて、令嬢がすること? 衝撃で脳がくらくらしていた。

「ざまぁないわね!」
「マリア様かっこいいわ!」
「マリア様のおかげでスッキリしたわ!」

 マリア様と言われているのはココン伯爵令嬢。そして別の令嬢が私の髪の毛を引っ張った。そして令嬢達は高笑いした。

「みっともないわね!」
「何も言えないの?」

 悔しい。でも同じことをして同じレベルに落ちたくない。頬は痛いし頭も痛いし足も手も痛い。口が切れて鉄の味もする。でも暴力に負けたくない。

「……言えないのじゃないです。言いたくないのです。私のことはどうぞ好きに言ってもいいです。エルマン様やフェルマン様をそうやって神格化して邪魔な私をいたぶって貴女達こそ何様なんですか……! 私を叩いて満足しましたか」

 ……絶対に泣かないと令嬢達を睨む。ココン伯爵令嬢達の前で泣いたらきっと喜ばせてしまう。私が泣くと思っていた令嬢達は笑うのをやめた。

「……は、あんたこの期に及んで、何を」

 令嬢達が少し怯んだ時だった。

「エマ嬢!?」

 エルマンが走ってきた。

「なっ! 怪我をしているじゃないか。まさかこの令嬢達が?」

 エルマンが令嬢達を睨むと後ずさる令嬢達。中には顔を隠す人も。

「ココン伯爵令嬢とそのご友人たちか……。どうしてこんな事になったか聞いてもいいかな」

「ほほっ。話し合いが上手くいかなかっただけで大袈裟ですわね、令嬢同士の話に殿方が入るのはエルマン様といえどマナー違反ですわ。皆さん行きましょう」

「待てっ!」

 逃げるようにココン伯爵令嬢達は去っていった。正直ホッとした。

「エマ嬢、何があった?」
「何もありません」

 立ちあがろうとしたら腰が抜けて力が入らない。

「エマ嬢、私に捕まって」

 手を出されたけれど、首を振った。

「大丈夫です。家のものを呼びますから」

 いざという時用の通信機がある。高価なもので通信費が高額なのだけど……仕方がない。

「送っていく。触れてもいいかい?」

 居場所も確定されるしサムエルを呼んだからすぐに来ると思うんだけど……。あ、来た。

「お嬢っ! どうした! な、なんだ、その格好、まさかこの子息に暴力を?」

 さすがサムエル早い。

「違う、大丈夫だから手を貸して……。立てないの」

 と言うと涙がポロっと出てきた。見慣れた顔って落ち着く。サムエルが私を抱きかかえた。エルマンに泣き顔を見られたくなくてサムエルの肩で顔を隠した。

「エマ嬢使ってくれ……」

 ハンカチを私の手に握らせるエルマン。

「家の人が迎えにきてくれたのなら、私は失礼するよ。令嬢達には必ず罰を与える。それではまた」


 サムエルが言うにはエルマンは校舎に向かって歩いていった。
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