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フレデリック
他に良い人なんていませんよ。
しおりを挟む「いい加減リリと婚約をさせてくださいよ!」
両親に言った。婚約者を探せ! と言う茶会はもう飽きた。正直言ってうんざり。
いろんな令嬢とも話をしたけれど、その場限りでもういい。
お茶会にリリアンは招待しない。なんでって、他所の子息がいるのにリリアンが目をつけられたら困るから!
侯爵も招待しろとは言わないし、シルヴァンは参加しているしそれでいいみたいだ。
そのせいかリリアンは箱入り娘認定されているようだ。母親と令嬢たちのみで行われる茶会には参加しているから、リリアンを見たくて令息たちの家からもよく誘われるとのことだが、侯爵がやんわりと断ってくれている。
近頃はリリアンの気持ちが僕に向けば良いと言われた。僕がしつこいから折れたのだと思う。
自分でもしつこいと思うし侯爵にも言われた。
『我が娘ながらどこに惹かれたんでしょうか……目に入れても痛くないほどの愛らしさは親の欲目ですよね? 将来貴方を支えて王妃になる器とは到底思えないのですが……木には登るし船から落ちるし落ち着きがありませんよ……』
酷い言いようだ。
『リリが良い。気持ちは変わりませんよ』
『もっと周りを見てください。きっと貴方に相応しい相手が居ますよ。早くに婚約をして大きくなってからやっぱり違うと娘を切り捨てられたら私は貴方を許せません。もっと貴方のためにも娘のためにも国の為にも外に目を向けるべきです』
分かっているんだ! でも言いたいことはわかる。婚約破棄だなんて令嬢には死刑宣告のようなものだ。社交界の噂になり娘を切り捨てる親もいるんだから。
『言ったな! 留学は考えていた! 留学に行く前にリリと婚約をしたかったけど、僕はしつこいですからね! 分かりました。外の世界を見てきます。それでもリリが良いと言ったら婚約をさせてくれますか?』
『そこまで娘を思ってくれるのなら、反対しませんよ』
そう言って、前々から計画していた留学をする事にした。侯爵には子息を近づけさせないでほしい。と頼んだ。
侯爵はリリアンが可愛い為そこは承諾した。手紙をかくからリリアンの様子を知らせてほしいと頼んだ。
婚約もしていない年頃の男女が文通をするわけにもいかずリリアンには手紙を出せない。噂になると困るからだそうだ。
期間はリリアンが社交デビューをする16歳。
これは長いな……18歳になる自分なんて想像はつかないけれど、リリアンの事は変わらず好きだろうと思う。
リリアンは相変わらず外で遊ぶのが好きだ。普通の令嬢は日焼けするから嫌だとか言いそうなのに。侍女が後ろからパラソルを差している。
ネコを見つけて戯れようと思ったのだろう。髪に付けているリボンを取ったのだが、そのリボンを見て侍女に渡した。
「付け直してー」
と言った。このリボンは僕があげたピンクのリボンだ。
「リックに貰ったリボンだからネコちゃんと遊べない」
すごく嬉しかった! 覚えていてくれたのはもちろんだけど大事にしてくれた。と言う事が嬉しくて仕方がなかった。
もっと良いものはあるのに! そうだ!
「リリ、これあげる」
ぴたっとリリアンの動きは止まった。
「……ううん、いい」
「遠慮しなくていいよ。はい」
クワガタをカゴに入れて渡した。断ってくると言うことはこのクワガタの価値が分かったのだろう!
涙目で受け取った。珍しい品種だからな。
「……ありがとう」
感動しているんだろう。そう思った。
お化けは見たがるし、木登りもするし、僕の剣術の授業を見学にくるしお転婆なところもあるリリアン。
それから私が留学して戻ってきてリリと再会した時に思い出が全く違っていたのは今では笑い話だ……
まさか虫が嫌いだったとは……誤算だった。
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