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バラ園って素敵!
しおりを挟む「あ、これが新種のバラだ。珍しい紫のバラだ」
「わぁ。初めて見ますわ! ステキ」
紫のバラですって! この色合い悪女っぽいわ! さっきからフレデリック殿下の態度にどう対応すれば良いかわからなかったけれど、私は悪役令嬢よ! しっかりしなさいリリー! と、自分に言い聞かせた。
「リリーはピンクや水色のような淡い色が似合うと思っていたが、この紫のバラもよく似合うよ」
フレデリック殿下が、近くにいた庭師に指示して一輪の紫のバラを切った。それを受け取ったフレデリック殿下は私の髪にそっと挿してきたのだ。
「パールの髪飾りととてもマッチしていて良い感じだよ」
紫が似合うだなんて、悪役令嬢への第一歩は成功だわ!
「ありがとう存じます」
あ。嬉しくて少し顔が緩んでしまったわ。
「ほらあそこはよく遊んだよね。ベンチが新しくなったんだ。座ってバラを鑑賞しよう」
ベンチまでエスコートしてくれて、ハンカチを敷いてくれた。さっきのクリーム付きのハンカチとはまた違った……
「リリアン嬢どうぞ」
「何から何までありがとう存じます」
「いいえ、当たり前のことをしただけですよ」
先ほどの意地悪とは違った。マデリーンといた時はこんな感じだったのかな?
「殿下は婚約者候補の方がわたくしを含め5人もおられますもの。お相手するのも大変でしょう?」
「ははっ、そうかもしれないね」
「他の方ともバラ園に来られていたんですか? わたくしでここに来るのは5回目となると新鮮味は御座いませんでしょう?」
素敵な場所だけど、候補の方全員と来られて同じくバラをプレゼントしているのかしら? それならプレイボーイだわね。
「いや。バラ園に来たのはリリアンとだけだよ。他の候補の令嬢とはお茶をして話をしただけだ。リリアンは昔からの付き合いで特別だからだよ」
「マデリーンに聞いた話によると殿下と過ごして楽しかった。と伺いましたので」
特別って何? 案内してやったって事かしら? 今日が最後だから特別にって事ね!
「彼女はさっぱりとしてて気持ちがいい令嬢だね。相手がいるようだから応援しているんだ。リリアンも聞いているのだろう?」
! マデリーンったら! 殿下に言っちゃったの?
「マデリーンの家に何か罰でも……」
「なんで?」
「想っている人がいるのに殿下の婚約者候補になったからです」
マデリーンは悪くない! 幼い頃からの想いがあるんだもの。もし罰があるのなら知っていて黙っていた私も同罪だわ! 殿下の相手に相応しくないわね!
「あるわけないでしょう。貴族間の恋愛結婚も増えてきているし相手の気持ちがないのに無理やり婚約に持っていくわけにはいかないよ!」
「そうですか……良かったですわ。もし罰があるのなら、わたくしも知っていましたから同罪にしてくださいましね」
マデリーンめ! フレデリック殿下が知っているならちゃんと言っておいてよ! ドキドキしたわ……
「友達思いだね。彼女の家のことまで心配して」
「マデリーンの幸せを祈っていますもの。幼い頃からの約束なんですって」
「リリアンは約束を守る方?」
「? そうだと思いますよ」
「それを聞けて良かった。戻ろうか? 風が出てきた。寒くないか?」
ぶるっ。たしかに肩が冷えてきた。薄手のストールを持ってくるべきだったわ!
「大丈夫ですわ」
苦笑いしてフレデリック殿下は自分の上着を脱いで肩に掛けてくれた。
「大丈夫ですわよ! 殿下が風邪をひいてしまいますわ」
慌てて上着の取ろうとしたら
「良いから羽織ってなさい。リリアンが健康なことは十分知っているが見るからに寒そうなんだよ。少しはカッコつけさせてくれ」
私が健康なことを覚えていたのね。そういえばフレデリック殿下はよく熱を出していたわ。
「いえ、殿下に何かあったら困ります。また熱でも出たら、」
「その時はリリアンに看病してもらうから頼むよ。それに私ももうすぐ18歳になる。ただ成長しただけでなく剣術などにも取り組みご覧の通り健康になったんだよ。上着を脱いだくらいで体調は崩さないさ」
ポンと笑いながら私の頭に手を置いた。頭を押さえつけられたようで頭が上がらないから目だけを上にジロリと
「本当ですか?」
と言うと
「本当だよ! ほら行くぞ」
と手を出されたので手を載せるとそのまま手を繋がれてしまった。子供の頃に戻ったようなそんな気がした。あの時より手は大きくて温かい。
バラ園から戻って先ほどの部屋に戻り、メイドが淹れてくれたハチミツ紅茶は優しい味がして冷えていた体が温まった。はぁっ。
帰りには紫のバラと、お菓子を包んで持たせてくれた。
殿下は体調を崩すこともなく過ごしているとのことだった。良かったわ!
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