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第29話
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シーツが汚れて大丈夫かと思ったけど、ここはそういう場所だから大丈夫だと先輩は言った。そりゃそうか。本当はセックスする場所だし。せ、セックス?
変なこと考えちゃった。
「あー。やばかった。洗ってこよ」
「お、俺も行きます」
最後には二人でシャワーを浴びた。俺は先に浴びずにやっちゃったけど、よかったのかな。
風呂場で先輩が言った。
「そういう時は恥じらいないんだな」
「だってもう見られたし」
最初は恥ずかしかったけど、もう今更だ。
「ははっ」
なんかその笑いが気に入らなかったけど、俺は何も言わなかった。
「ごめん。何もしないって言ったくせに」
と謝られたけど、俺は言った。
「俺が自分で言い出したのでいいです。こんなことになるなんて思わなかったけど」
別に今となればそこまで嫌じゃなかったかも。あの人とだってそんなことしたことなかったけど。
「あいつとはこういうことやってた?」
「まさか。キスだけって言ったじゃないですか」
「そうだっけ?」
先輩が覚えてないと思うと気に入らなくて、俺は睨みつけた。
「ごめん。俺が初めてだと思うとうれしくて」
俺は何も言えなくなってしまった。先輩はこんなことがしたかったんだろうか。
「別にいいですけど、そんなにしたかったんですか?」
「もちろんいつでもやりたいと思ってるけど」
いつでもやりたい?
「そういう話じゃなくて」
「ゴホン。冗談じゃないけど、大丈夫。急いでないから」
そういう話でもないと思う。
「なあ、1つ提案があるんだけど」
提案? 何かと思った。
「何ですか?」
「俺と試しに付き合わない?」
何を言い出すのかと思ったらそんなこと……。ってそんなことじゃない!
「試しって何ですか?」
「だって、俺が好きって言ってからも普通に一緒に出かけてくれるだろ。だから、同じようなもんだろ」
そんなこと言われても。違うと思うけど、言い返せない。
「先輩はいいんですか?」
「いいに決まってる」
「もし、他に好きな人ができても、そんなこと言えます?」
俺が邪魔になる時がくるかもしれないのに。
「何言ってんだ。そんなことあるわけ」
「わからないじゃないですか。世の中には、俺より性格良くて、かわいい人なんて五万と」
「いない」
「いますって」
「俺にとっては瞬太が一番かわいいの。それで納得しとけ」
そんな納得なんて……。できるわけ。
「お前の方こそ、他に好きな人ができたらどうすんだ?」
「そんなの」
できるわけない。
「じゃあ、こうしよう。他に好きな人できたらお互い言う。それまでは付き合う」
「で、でも」
「それとも、もう俺に惚れた?」
先輩の自信たっぷりの物言いにむかついた。
「それでいいです」
「あはははっ」
笑わないで欲しい。俺はふくれた。
「その不満そうな顔がかわいいんだが」
え? 先輩今なんて言った?
「駄目だ。ここにいるとおさまんなくなるから、出よう」
え? ってまだ?
先輩はいそいそと服を着だした。俺はつられて服を着た。
支払いもスムーズで俺にお金を出させてもくれなかった。ラブホなんかに入ったのは自分のせいだからって。俺がパニクって逃げたのが悪いのに。
でも、ラブホを出たらそんな問答もできなくなった。
先輩が
「手つないでいい?」
なんて言い出したからだ。
「仮にも恋人なんだからさ」
そう言われてしまうと逆らえない。
「は、はい」
先輩と繋がった手を妙に意識してしまって、先輩の方をまともに見られなかった。
「なんか初々しいな。元カレと手繫いだりしなかったのか?」
俺は固まった。そんなことした覚えがない。というより、いつも隠れてこそこそ会ってたからそんなことできなかった。それがまさか二股かけてたせいだなんて気付かなかった俺も俺だ。
「ごめん。余計なこと聞いて。思い出したくないよな」
「いえ、別に。ただ、冷静に考えたら、二股かけてたなんてすぐわかったのに、気付かなかった俺が馬鹿だなと思って」
「そんなことないよ」
先輩は何故か強く言った。
「最初の相手がそんな奴なんてトラウマになるだろ。瞬をもてあそびやがって。しかもまたよりを戻したがるなんて最低な奴。一発くらい殴っとけばよかった」
「ちょ、先輩」
そんなこといいのに。
「そのおかげで瞬と付き合えたとしても、やっぱ気に入らないな」
付き合えたって仮じゃないの? なんて無粋なツッコミはしないでおこう。
「二度と近付くなよ。また来るかもしれないから気をつけろ」
俺は黙って頷いた。先輩が心配してくれるのはうれしい。
俺たちはウインドウショッピングを続けたのだった。
変なこと考えちゃった。
「あー。やばかった。洗ってこよ」
「お、俺も行きます」
最後には二人でシャワーを浴びた。俺は先に浴びずにやっちゃったけど、よかったのかな。
風呂場で先輩が言った。
「そういう時は恥じらいないんだな」
「だってもう見られたし」
最初は恥ずかしかったけど、もう今更だ。
「ははっ」
なんかその笑いが気に入らなかったけど、俺は何も言わなかった。
「ごめん。何もしないって言ったくせに」
と謝られたけど、俺は言った。
「俺が自分で言い出したのでいいです。こんなことになるなんて思わなかったけど」
別に今となればそこまで嫌じゃなかったかも。あの人とだってそんなことしたことなかったけど。
「あいつとはこういうことやってた?」
「まさか。キスだけって言ったじゃないですか」
「そうだっけ?」
先輩が覚えてないと思うと気に入らなくて、俺は睨みつけた。
「ごめん。俺が初めてだと思うとうれしくて」
俺は何も言えなくなってしまった。先輩はこんなことがしたかったんだろうか。
「別にいいですけど、そんなにしたかったんですか?」
「もちろんいつでもやりたいと思ってるけど」
いつでもやりたい?
「そういう話じゃなくて」
「ゴホン。冗談じゃないけど、大丈夫。急いでないから」
そういう話でもないと思う。
「なあ、1つ提案があるんだけど」
提案? 何かと思った。
「何ですか?」
「俺と試しに付き合わない?」
何を言い出すのかと思ったらそんなこと……。ってそんなことじゃない!
「試しって何ですか?」
「だって、俺が好きって言ってからも普通に一緒に出かけてくれるだろ。だから、同じようなもんだろ」
そんなこと言われても。違うと思うけど、言い返せない。
「先輩はいいんですか?」
「いいに決まってる」
「もし、他に好きな人ができても、そんなこと言えます?」
俺が邪魔になる時がくるかもしれないのに。
「何言ってんだ。そんなことあるわけ」
「わからないじゃないですか。世の中には、俺より性格良くて、かわいい人なんて五万と」
「いない」
「いますって」
「俺にとっては瞬太が一番かわいいの。それで納得しとけ」
そんな納得なんて……。できるわけ。
「お前の方こそ、他に好きな人ができたらどうすんだ?」
「そんなの」
できるわけない。
「じゃあ、こうしよう。他に好きな人できたらお互い言う。それまでは付き合う」
「で、でも」
「それとも、もう俺に惚れた?」
先輩の自信たっぷりの物言いにむかついた。
「それでいいです」
「あはははっ」
笑わないで欲しい。俺はふくれた。
「その不満そうな顔がかわいいんだが」
え? 先輩今なんて言った?
「駄目だ。ここにいるとおさまんなくなるから、出よう」
え? ってまだ?
先輩はいそいそと服を着だした。俺はつられて服を着た。
支払いもスムーズで俺にお金を出させてもくれなかった。ラブホなんかに入ったのは自分のせいだからって。俺がパニクって逃げたのが悪いのに。
でも、ラブホを出たらそんな問答もできなくなった。
先輩が
「手つないでいい?」
なんて言い出したからだ。
「仮にも恋人なんだからさ」
そう言われてしまうと逆らえない。
「は、はい」
先輩と繋がった手を妙に意識してしまって、先輩の方をまともに見られなかった。
「なんか初々しいな。元カレと手繫いだりしなかったのか?」
俺は固まった。そんなことした覚えがない。というより、いつも隠れてこそこそ会ってたからそんなことできなかった。それがまさか二股かけてたせいだなんて気付かなかった俺も俺だ。
「ごめん。余計なこと聞いて。思い出したくないよな」
「いえ、別に。ただ、冷静に考えたら、二股かけてたなんてすぐわかったのに、気付かなかった俺が馬鹿だなと思って」
「そんなことないよ」
先輩は何故か強く言った。
「最初の相手がそんな奴なんてトラウマになるだろ。瞬をもてあそびやがって。しかもまたよりを戻したがるなんて最低な奴。一発くらい殴っとけばよかった」
「ちょ、先輩」
そんなこといいのに。
「そのおかげで瞬と付き合えたとしても、やっぱ気に入らないな」
付き合えたって仮じゃないの? なんて無粋なツッコミはしないでおこう。
「二度と近付くなよ。また来るかもしれないから気をつけろ」
俺は黙って頷いた。先輩が心配してくれるのはうれしい。
俺たちはウインドウショッピングを続けたのだった。
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