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第23話
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とりあえず、気を取り直してジョーク屋書店に向かった。
9階もあって広いので、フロアマップを見ながらどこを見ようか話し合った。
「何の本が好きなんだ?」
「普通にミステリー小説とか、漫画とかですけど」
「じゃあ3階と地下1階だな」
「先輩は見たい本ないんですか?」
「うーん。洋書とか?」
「読めるんですか?」
「辞書ひきながら読むんだよ。英語の勉強にもなる」
へえ。そんなことやったことない。俺は語学はそんな得意な方じゃないし。
大学入ってからはほとんど勉強してない。
最初に3階、次に洋書のある9階。そして最後に漫画売場の地下へ行くことになった。
洋書なんて読めないと思ったけど、子供の絵本もあって、これなら簡単な英語だから俺でも読めそうだと思った。先輩が例によって買ってくれようとする。
英語に興味を持つ導入にもなるからと強引に買ってくれた。
確かにこれからの時代英語話せた方が就職とかでも有利になるんだろうけど。そういえば先輩は大学卒業したら何する気なんだろう。
俺は経済に興味あったから経済学部に入ったけど、先輩は英文科じゃなくて何で情報学部にしたんだろう。
「本当は埼玉大行きたかったけど落ちたからさ。滑り止め」
そうなんだ。俺なんか国立大なんて入ろうとも思ってなかった。そんな頭良くないし。そもそも数学と英語があんまりだったから、ほぼ捨ててたし。
「まあ高校の時は遊んでたから仕方ないんだけどさ。自業自得?」
そういえば女の人取っ替えひっかえしてたとか言ってたっけ。
地下の漫画売り場を見ていたら、BLの棚が目に入ってしまった。昨日の夜姉貴に借りて読んだ漫画を思い出した。
ツンデレの受けが強気な攻めに段々心を許していく話で、すごく共感した。
俺はもちろんツンデレじゃないけど。
「どうかしたのか?」
「な、何でもありません」
俺は見ないようにして通り過ぎたが、
「何、これ?」
先輩がBLの棚を覗いてしまった。どうしよう。
「さ、さあ」
俺はさっさと売り場を離れたかった。
「表紙からしてやばっ」
先輩は何故か手に取っている。ビニールがかかってて中身は見えないけど。
「い、行きましょうよ」
俺が促すと先輩はやっと歩を進めた。
「あれって全部男同士だよな?」
興味持たないで欲しいんだけど。
「そうみたいですね」
「噂には聞いてたけど、あんなのを女子が好んで読むんだな」
あはは。姉貴はその筆頭だけど。俺も読んでるって言ったらひかれるだろうか。
「あんま驚いてない?」
「え?」
やばい。読んでるのがバレる。ごまかさなきゃ。
「べ、別に。俺は何も知りません」
「へえ」
やばい墓穴掘った。
「あ、姉貴がいっぱい持ってて」
「へ? お姉さんが?」
先輩は驚いた顔をした。真面目そうに見えたらしい。
「姉貴は基本的に優しいけど、たまに暴走するというか」
「暴走?」
先輩は苦笑した。
「俺の性指向を唯一知ってるっていうか」
「ああ。そういえば、瞬太ってゲイなんだっけ」
え? 今更?
「ごめん。俺そういうの全く気にならないタイプだからさ、いちいち気にしたことなかった」
原田先輩って……。よくわからない。変なの。
「そっか。普通はそういうの両親になかなか言えないよな」
俺は両親に隠し事をしている事実を改めて実感した。気持ち悪いと思われるのが怖かったから、ずっと言えないでいた。もしかしたら勘当されるかもなんて考えてしまって。
「俺はさ、親父、いや両親とも性に奔放というか、そういう環境で育ったからさ。昔親父の女に迫られたことあるし」
「え?」
先輩が言い出したことについていけなかった。
「未遂だったけど、それから親父は家に女を連れ込まなくなった。俺が母親なんかいらないって言ったから気を遣ってんのもあるだろうけど」
そんな壮絶な話が本当にあるなんて信じられない気持ちだった。うちは健全な両親だし、家族円満な方だと思うから、想像できない。
「別に女が苦手ってわけでもないけど、いつも本気になれなかったんだよな」
俺には想像できないようなことが世の中には色々あるんだなと思った。
9階もあって広いので、フロアマップを見ながらどこを見ようか話し合った。
「何の本が好きなんだ?」
「普通にミステリー小説とか、漫画とかですけど」
「じゃあ3階と地下1階だな」
「先輩は見たい本ないんですか?」
「うーん。洋書とか?」
「読めるんですか?」
「辞書ひきながら読むんだよ。英語の勉強にもなる」
へえ。そんなことやったことない。俺は語学はそんな得意な方じゃないし。
大学入ってからはほとんど勉強してない。
最初に3階、次に洋書のある9階。そして最後に漫画売場の地下へ行くことになった。
洋書なんて読めないと思ったけど、子供の絵本もあって、これなら簡単な英語だから俺でも読めそうだと思った。先輩が例によって買ってくれようとする。
英語に興味を持つ導入にもなるからと強引に買ってくれた。
確かにこれからの時代英語話せた方が就職とかでも有利になるんだろうけど。そういえば先輩は大学卒業したら何する気なんだろう。
俺は経済に興味あったから経済学部に入ったけど、先輩は英文科じゃなくて何で情報学部にしたんだろう。
「本当は埼玉大行きたかったけど落ちたからさ。滑り止め」
そうなんだ。俺なんか国立大なんて入ろうとも思ってなかった。そんな頭良くないし。そもそも数学と英語があんまりだったから、ほぼ捨ててたし。
「まあ高校の時は遊んでたから仕方ないんだけどさ。自業自得?」
そういえば女の人取っ替えひっかえしてたとか言ってたっけ。
地下の漫画売り場を見ていたら、BLの棚が目に入ってしまった。昨日の夜姉貴に借りて読んだ漫画を思い出した。
ツンデレの受けが強気な攻めに段々心を許していく話で、すごく共感した。
俺はもちろんツンデレじゃないけど。
「どうかしたのか?」
「な、何でもありません」
俺は見ないようにして通り過ぎたが、
「何、これ?」
先輩がBLの棚を覗いてしまった。どうしよう。
「さ、さあ」
俺はさっさと売り場を離れたかった。
「表紙からしてやばっ」
先輩は何故か手に取っている。ビニールがかかってて中身は見えないけど。
「い、行きましょうよ」
俺が促すと先輩はやっと歩を進めた。
「あれって全部男同士だよな?」
興味持たないで欲しいんだけど。
「そうみたいですね」
「噂には聞いてたけど、あんなのを女子が好んで読むんだな」
あはは。姉貴はその筆頭だけど。俺も読んでるって言ったらひかれるだろうか。
「あんま驚いてない?」
「え?」
やばい。読んでるのがバレる。ごまかさなきゃ。
「べ、別に。俺は何も知りません」
「へえ」
やばい墓穴掘った。
「あ、姉貴がいっぱい持ってて」
「へ? お姉さんが?」
先輩は驚いた顔をした。真面目そうに見えたらしい。
「姉貴は基本的に優しいけど、たまに暴走するというか」
「暴走?」
先輩は苦笑した。
「俺の性指向を唯一知ってるっていうか」
「ああ。そういえば、瞬太ってゲイなんだっけ」
え? 今更?
「ごめん。俺そういうの全く気にならないタイプだからさ、いちいち気にしたことなかった」
原田先輩って……。よくわからない。変なの。
「そっか。普通はそういうの両親になかなか言えないよな」
俺は両親に隠し事をしている事実を改めて実感した。気持ち悪いと思われるのが怖かったから、ずっと言えないでいた。もしかしたら勘当されるかもなんて考えてしまって。
「俺はさ、親父、いや両親とも性に奔放というか、そういう環境で育ったからさ。昔親父の女に迫られたことあるし」
「え?」
先輩が言い出したことについていけなかった。
「未遂だったけど、それから親父は家に女を連れ込まなくなった。俺が母親なんかいらないって言ったから気を遣ってんのもあるだろうけど」
そんな壮絶な話が本当にあるなんて信じられない気持ちだった。うちは健全な両親だし、家族円満な方だと思うから、想像できない。
「別に女が苦手ってわけでもないけど、いつも本気になれなかったんだよな」
俺には想像できないようなことが世の中には色々あるんだなと思った。
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