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第4話
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昼休み。学食へ向かう途中に声をかけられた。
「結城君」
見ると、原田先輩だった。
「この前はごめんね」
この前と言われても、何のことを謝ってるのかよくわからなかったので、俺は聞き返した。
「何がですか?」
「せっかくサークルに顔出してくれたのに、俺いなくて」
「別に原田先輩に会いに行ったわけじゃないです」
誤解されたくなくて、つい大きな声で言ってしまった。
「うん。そういうことじゃなくてさ。とりあえず、食べようか? 学食行くところだったんだろ?」
俺は仕方なく頷いて、一緒に学食まで向かった。食券を買って料理を受け取る。原田先輩は生姜焼き定食。俺はカレーにした。
あまり目立ちたくなかったので、隅の方に向かい合って座った。
「なんていうか、うちの奴らが勘違いしてさ。気を悪くさせたかなって。俺がいたら良かったんだけどさ」
原田先輩が何を言ってるのかわからない。というよりそんなことを言われて不本意だった。
「別にそんなこと」
原田先輩は何も悪くないはずだ。俺がただ、先輩に気遣ったりできないから、空気悪くしてしまっただけで。
「結城君が悪いんじゃなくて、あれから来なくなったからみんな心配してたんだ」
本当だろうか。別に心配されることなんて何もないのに。放っておいてくれたらいいのにと思った。
「まあだからって無理にうちに入らなくてもいいからね。もうサークル決まった?」
なんか色々と納得いかなくて、ついいいわけみたいに言ってしまった。
「サークル必ず入らなきゃいけないわけじゃないですよね」
「まあね」
原田先輩は苦笑しながら頷いた。
「何で原田先輩はわざわざ2つも入ってるんですか?」
俺は1個だけでも面倒なのにと思いながらも、口にはしなかった。
「ん、まあなんとなく。誘われたのもあるし。別にバイトとか忙しい時は行かないけど」
そういうことが聞きたいわけじゃなかった。
「めんどくさくないんですか?」
と聞いてから、原田先輩は人当たりがいいし、そんなこと思わないのかと考え直した。
「どうせ俺がいたって雰囲気悪くするだけだし」
ぼそっと言ったのだけど、原田先輩には聞こえていたみたいで、
「そんなことないよ」
なんてきれい事を言ってきた。
「だって」
俺が否定しようとすると、畳みかけるように言われた。
「この前のことなら、みんな気にしてないからさ」
「何でそんなこと言えるんですか?」
そんなの嘘に決まってる。
「本当はあいつ性格悪いしうっとうしいと思ってても、口に出さないことあるでしょ」
俺がまくしたてるように言ったら、原田先輩はちょっと怒ったように言った。
「結城君」
原田先輩は俺の目をまっすぐ見て続けた。
「別に俺は性格悪いなんて思ってないよ」
嘘だと思った。
「この前のことで気まずいと思って来なかったんなら、ちゃんと配慮もできるいい子だと思うよ」
いい子? 何を心にもないこと言ってと思った。
「人付き合い、大変かもしれないけど、案外楽しいこともあるもんだよ」
なんてにこにこと笑う。そりゃ、性格のいい人と悪い人だと違うだろ。原田先輩なんか人間関係に苦労したことなさそうな感じだし。
「食べないんですか?」
さっきから先輩の箸は進んでなかった。
「結城君こそ」
だって先輩が食べてないのに先食べるのも変だし。そう思って俯いた。
「ちゃんと気遣って待っててくれたんだろ。そういう配慮ができるなら、大丈夫。すぐに人付き合いも慣れるよ」
さっきからそんなことばっかり言って、気に入らなかった。
「あなたに何がわかるんですか」
俺は自分のこういうとこ好きじゃない。でも、放っといてほしい。
原田先輩は、
「わかんないよ」
と、手のひらを返したように、あっさりそんなことを言った。
「俺はただ、結城君と仲良くしたいと思っただけで」
俺はその言葉にカットなった。いけしゃあしゃあと何を言うんだと思った。
「俺はしたくないので、失礼します」
カレーはまだ口を付けてなかったけど、俺は席を立った。
「まあ気が向いたらでいいから、また顔出してね」
という最後の言葉は聞こえない振りをし、原田先輩がいなくなった後目立たない席でこっそりカレーを食べたのだった。
「結城君」
見ると、原田先輩だった。
「この前はごめんね」
この前と言われても、何のことを謝ってるのかよくわからなかったので、俺は聞き返した。
「何がですか?」
「せっかくサークルに顔出してくれたのに、俺いなくて」
「別に原田先輩に会いに行ったわけじゃないです」
誤解されたくなくて、つい大きな声で言ってしまった。
「うん。そういうことじゃなくてさ。とりあえず、食べようか? 学食行くところだったんだろ?」
俺は仕方なく頷いて、一緒に学食まで向かった。食券を買って料理を受け取る。原田先輩は生姜焼き定食。俺はカレーにした。
あまり目立ちたくなかったので、隅の方に向かい合って座った。
「なんていうか、うちの奴らが勘違いしてさ。気を悪くさせたかなって。俺がいたら良かったんだけどさ」
原田先輩が何を言ってるのかわからない。というよりそんなことを言われて不本意だった。
「別にそんなこと」
原田先輩は何も悪くないはずだ。俺がただ、先輩に気遣ったりできないから、空気悪くしてしまっただけで。
「結城君が悪いんじゃなくて、あれから来なくなったからみんな心配してたんだ」
本当だろうか。別に心配されることなんて何もないのに。放っておいてくれたらいいのにと思った。
「まあだからって無理にうちに入らなくてもいいからね。もうサークル決まった?」
なんか色々と納得いかなくて、ついいいわけみたいに言ってしまった。
「サークル必ず入らなきゃいけないわけじゃないですよね」
「まあね」
原田先輩は苦笑しながら頷いた。
「何で原田先輩はわざわざ2つも入ってるんですか?」
俺は1個だけでも面倒なのにと思いながらも、口にはしなかった。
「ん、まあなんとなく。誘われたのもあるし。別にバイトとか忙しい時は行かないけど」
そういうことが聞きたいわけじゃなかった。
「めんどくさくないんですか?」
と聞いてから、原田先輩は人当たりがいいし、そんなこと思わないのかと考え直した。
「どうせ俺がいたって雰囲気悪くするだけだし」
ぼそっと言ったのだけど、原田先輩には聞こえていたみたいで、
「そんなことないよ」
なんてきれい事を言ってきた。
「だって」
俺が否定しようとすると、畳みかけるように言われた。
「この前のことなら、みんな気にしてないからさ」
「何でそんなこと言えるんですか?」
そんなの嘘に決まってる。
「本当はあいつ性格悪いしうっとうしいと思ってても、口に出さないことあるでしょ」
俺がまくしたてるように言ったら、原田先輩はちょっと怒ったように言った。
「結城君」
原田先輩は俺の目をまっすぐ見て続けた。
「別に俺は性格悪いなんて思ってないよ」
嘘だと思った。
「この前のことで気まずいと思って来なかったんなら、ちゃんと配慮もできるいい子だと思うよ」
いい子? 何を心にもないこと言ってと思った。
「人付き合い、大変かもしれないけど、案外楽しいこともあるもんだよ」
なんてにこにこと笑う。そりゃ、性格のいい人と悪い人だと違うだろ。原田先輩なんか人間関係に苦労したことなさそうな感じだし。
「食べないんですか?」
さっきから先輩の箸は進んでなかった。
「結城君こそ」
だって先輩が食べてないのに先食べるのも変だし。そう思って俯いた。
「ちゃんと気遣って待っててくれたんだろ。そういう配慮ができるなら、大丈夫。すぐに人付き合いも慣れるよ」
さっきからそんなことばっかり言って、気に入らなかった。
「あなたに何がわかるんですか」
俺は自分のこういうとこ好きじゃない。でも、放っといてほしい。
原田先輩は、
「わかんないよ」
と、手のひらを返したように、あっさりそんなことを言った。
「俺はただ、結城君と仲良くしたいと思っただけで」
俺はその言葉にカットなった。いけしゃあしゃあと何を言うんだと思った。
「俺はしたくないので、失礼します」
カレーはまだ口を付けてなかったけど、俺は席を立った。
「まあ気が向いたらでいいから、また顔出してね」
という最後の言葉は聞こえない振りをし、原田先輩がいなくなった後目立たない席でこっそりカレーを食べたのだった。
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