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第6話
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後から、そういえばお礼も言ってないと気付いた。俺って最低じゃん。原田先輩に会わす顔がなくて、しばらく会いたくないと思ってしまった。
もう人気のないとこに近付くのやめよう。っていうかあいつらそのままにしといていいの? でも、怖い。何も考えたくない。
大学にいるのも嫌だったから、帰ろうとした。
そしたら、何故かまた原田先輩がいた。
避けようと踵を返す直前に腕を掴まれた。
「何で俺に構うんですか?」
「構うっていうか、心配」
「そんなことしてもらう義理ないのに」
「義理とかなんとか、もうめんどくさいな。送ってく」
いいって言ってないのに原田先輩は黙ってついてくる。腕は放してくれたけど、もう言い返す気力もなくて、ほっといた。
「授業、途中で抜けて大丈夫なんですか?」
「どうせ最後の時間だったし。つうかそんなことよりお前襲われそうになったんだから」
「別に放っておけばいいじゃないですか。俺がどんな目にあったって先輩には関係な」
「いい加減にしろよ」
先輩を怒らせてしまった。
「関わったらほっとけるわけないだろ」
「でも、そこにいたのが俺じゃなくても助けたんでしょ?」
「そりゃ、まあ。でも、そしたら駆けつける前に通報するよ」
そんなこと聞いてるんじゃなくて。もう押し問答するのも疲れた。
「ありがとうございました」
先輩はきょとんとした顔をした。面白くないので、言ってやった。
「俺だって礼くらい言います」
「棒読みだったけどな」
「悪かったですね」
そんな言い方しかできない自分が嫌になる。
「かわいくねえ奴だな」
「かわいくなくてすみません」
「もういいよ。お前と話してると俺が馬鹿になってく」
何それ。どういう意味?
「俺だってこんな自分嫌いです」
「そういう意味じゃなくて」
何故かもう一度腕を掴まれた。
「俺は気にしないから、我慢すんな」
「は?」
何言ってんのかわからない。
「つらかったらつらいって言えばいいんだよ」
「なんですか、それ」
俺がいつつらいって言った?
「素直じゃないのもかわいいけど」
かわいい?
「泣きたきゃ泣けよ」
なんて言ってぽんと頭をたたく。1つ上なだけなのに、余裕なのがむかつく。
「別に泣きたくなんか」
「それだけ元気がありゃ、別にいいよ」
元気なんてあるわけない。
「今日は帰ってゆっくり休みな」
もう頭の中はごちゃごちゃで、何も考えられなかった。
先輩に送られるままただ家まで向かった。
しかも、先輩は何故か俺の最寄り駅までついてくる。
「もういいですって。ここまでで」
「何があるかわからないだろ」
結局家の近くまで強引についてきたのだった。
「その、すぐそこなので。家族に見られたら色々とやばいですし」
と言って必死で返すしかなかった。原田先輩はため息をついて帰っていった。しかも、連絡先を交換させられたし。
そこまでしてもらう義理ないのに。なんて言うとまた怒るのだろうか。
俺は家族の誰とも顔を合わせたくなくて、さっさと自室にこもった。
なんか色々あり過ぎて疲れた。夕飯も食べずに寝ていたら、姉貴と親に心配された。本当のことは言いたくない。男なのに襲われそうになったなんて恥ずかし過ぎる。
姉貴には、「体調悪いんじゃないの?」なんて言われたけど。
スマホを確認したら、原田先輩からメッセージが来てて、ため息をついた。家のすぐ前で別れたのに、無事に家着いた? とかいちいち聞いてくる。
だいぶ時間経ってるし、これ今更返しても仕方ないんじゃ。
なんて考えてたら腹も減ってきた。もう11時だ。こんな時間に食べて平気だろうか。明日って一時間目からだっけ?
とりあえず1階に下りて台所に行くと、「あんた大丈夫?」と風呂上がりらしい姉貴が声をかけてきた。
「ん。まあ寝てすっきりしたから」
「そう」
あまり無理に詮索してこないのが姉貴のいいとこだ。
「おかずちょっと残ってるよ」
「うん」
お釜に残ったご飯と冷蔵庫にあるしょうが焼きを温めて食べた。
明日学校行きたくない。でも、大事な授業があったかもしれない。
時間割を確認してため息をついた。やっぱり休めそうにない。
そしたらそんなタイミングで原田先輩からメッセージが来た。
『明日は無理しないで、調子悪かったら休めよ』
だからそれができたらそうしてる。
同じ授業を取ってる友達もいないし、レポートは厳しいって聞いたから、外すわけにはいかない。
友達か。
高校では、恋人ができてから、色々説明するのが億劫でまともに人間関係築いてこなかった。同じ大学に進んだ知り合いもいないし、今連絡取りたいと思う相手もいない。本当寂しい人生。
俺何やってんだろうなとちょっと虚しくなった。それに原田先輩みたいにお節介な人もいるし。別に1人には慣れてる。いちいちちょっかい出してくれなくていいのに。
でも、昨日原田先輩がいなかったら。そう思って身震いした。借りがあるし、邪険にするわけにはいかない。さっさと何かで返してしまおうか。
学食おごるとか。安易すぎるか。
『お気遣い感謝します』
とだけ返して、横になった。やっぱり疲れてたみたいですぐに眠りに吸い込まれていった。
もう人気のないとこに近付くのやめよう。っていうかあいつらそのままにしといていいの? でも、怖い。何も考えたくない。
大学にいるのも嫌だったから、帰ろうとした。
そしたら、何故かまた原田先輩がいた。
避けようと踵を返す直前に腕を掴まれた。
「何で俺に構うんですか?」
「構うっていうか、心配」
「そんなことしてもらう義理ないのに」
「義理とかなんとか、もうめんどくさいな。送ってく」
いいって言ってないのに原田先輩は黙ってついてくる。腕は放してくれたけど、もう言い返す気力もなくて、ほっといた。
「授業、途中で抜けて大丈夫なんですか?」
「どうせ最後の時間だったし。つうかそんなことよりお前襲われそうになったんだから」
「別に放っておけばいいじゃないですか。俺がどんな目にあったって先輩には関係な」
「いい加減にしろよ」
先輩を怒らせてしまった。
「関わったらほっとけるわけないだろ」
「でも、そこにいたのが俺じゃなくても助けたんでしょ?」
「そりゃ、まあ。でも、そしたら駆けつける前に通報するよ」
そんなこと聞いてるんじゃなくて。もう押し問答するのも疲れた。
「ありがとうございました」
先輩はきょとんとした顔をした。面白くないので、言ってやった。
「俺だって礼くらい言います」
「棒読みだったけどな」
「悪かったですね」
そんな言い方しかできない自分が嫌になる。
「かわいくねえ奴だな」
「かわいくなくてすみません」
「もういいよ。お前と話してると俺が馬鹿になってく」
何それ。どういう意味?
「俺だってこんな自分嫌いです」
「そういう意味じゃなくて」
何故かもう一度腕を掴まれた。
「俺は気にしないから、我慢すんな」
「は?」
何言ってんのかわからない。
「つらかったらつらいって言えばいいんだよ」
「なんですか、それ」
俺がいつつらいって言った?
「素直じゃないのもかわいいけど」
かわいい?
「泣きたきゃ泣けよ」
なんて言ってぽんと頭をたたく。1つ上なだけなのに、余裕なのがむかつく。
「別に泣きたくなんか」
「それだけ元気がありゃ、別にいいよ」
元気なんてあるわけない。
「今日は帰ってゆっくり休みな」
もう頭の中はごちゃごちゃで、何も考えられなかった。
先輩に送られるままただ家まで向かった。
しかも、先輩は何故か俺の最寄り駅までついてくる。
「もういいですって。ここまでで」
「何があるかわからないだろ」
結局家の近くまで強引についてきたのだった。
「その、すぐそこなので。家族に見られたら色々とやばいですし」
と言って必死で返すしかなかった。原田先輩はため息をついて帰っていった。しかも、連絡先を交換させられたし。
そこまでしてもらう義理ないのに。なんて言うとまた怒るのだろうか。
俺は家族の誰とも顔を合わせたくなくて、さっさと自室にこもった。
なんか色々あり過ぎて疲れた。夕飯も食べずに寝ていたら、姉貴と親に心配された。本当のことは言いたくない。男なのに襲われそうになったなんて恥ずかし過ぎる。
姉貴には、「体調悪いんじゃないの?」なんて言われたけど。
スマホを確認したら、原田先輩からメッセージが来てて、ため息をついた。家のすぐ前で別れたのに、無事に家着いた? とかいちいち聞いてくる。
だいぶ時間経ってるし、これ今更返しても仕方ないんじゃ。
なんて考えてたら腹も減ってきた。もう11時だ。こんな時間に食べて平気だろうか。明日って一時間目からだっけ?
とりあえず1階に下りて台所に行くと、「あんた大丈夫?」と風呂上がりらしい姉貴が声をかけてきた。
「ん。まあ寝てすっきりしたから」
「そう」
あまり無理に詮索してこないのが姉貴のいいとこだ。
「おかずちょっと残ってるよ」
「うん」
お釜に残ったご飯と冷蔵庫にあるしょうが焼きを温めて食べた。
明日学校行きたくない。でも、大事な授業があったかもしれない。
時間割を確認してため息をついた。やっぱり休めそうにない。
そしたらそんなタイミングで原田先輩からメッセージが来た。
『明日は無理しないで、調子悪かったら休めよ』
だからそれができたらそうしてる。
同じ授業を取ってる友達もいないし、レポートは厳しいって聞いたから、外すわけにはいかない。
友達か。
高校では、恋人ができてから、色々説明するのが億劫でまともに人間関係築いてこなかった。同じ大学に進んだ知り合いもいないし、今連絡取りたいと思う相手もいない。本当寂しい人生。
俺何やってんだろうなとちょっと虚しくなった。それに原田先輩みたいにお節介な人もいるし。別に1人には慣れてる。いちいちちょっかい出してくれなくていいのに。
でも、昨日原田先輩がいなかったら。そう思って身震いした。借りがあるし、邪険にするわけにはいかない。さっさと何かで返してしまおうか。
学食おごるとか。安易すぎるか。
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