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第1章
第13話
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次の週、また放課後かっちゃんのお手伝いをしようと生徒会室に来たとき、突然話し掛けられた。
「生徒会室は部外者立ち入り禁止だ」
えっと思って振り向いたら、見たことない人だった。かっちゃんを手伝おうと思っただけなのに。どうしよう。
「ぼ、僕はその」
「見ない顔だな。もしかして転校生か?」
僕は恐る恐る肯いた。
「生徒会にも乗り込んできたのか?」
どういうこと?
「何人もの生徒を誑かして、何か企んでるのか?」
もしかしてまた鏑木君と間違えられてる?
「ち、違っ」
僕は否定しようとしたが、すぐに口を挟まれてしまった。
「全く。私たち風紀委員がいつまでも黙っていると思うなよ」
「風紀委員?」
「知らないのか? 学園の秩序を守る組織だ。私はその委員長をしている。転校すぐに親衛隊ができたらしいが、本当は生徒会役員しか親衛隊は持たないというのに」
そういえばそんな話を聞いた気がする。
「僕は鏑木君じゃない」
「鏑木? 誰だ?」
「もう一人の転校生。僕はそんな人気じゃないから」
下を向いた。
「取り巻き連中がいないから、おかしいと思ったが、まさか別人? 転校生は二人なのか?」
僕は肯いた。僕だって一緒に転校する生徒がいるなんて知らなかったもん。
「すまない。勘違いした。だが、だからといって生徒会室に入るのは」
僕は自然に眼鏡を外していた。
◆◆◆
「克巳が1人で大変そうにしてたから手伝ってやったってのに、ずいぶんな言い草だな」
手伝ったのは俺じゃなくて由だけど。
「どういうことだ?」
「知らねえよ。他の生徒会の奴らが消えちまったんだと。この学校の奴らは克巳一人に仕事押し付けるろくでなしなんだな」
いい加減頭にきてたので風紀委員だかなんだか知らないが、目の前の男を睨みつけた。
「消えたとは? 部外者が仕事まで手伝ってたなんて」
うるせえな。知ったことかよ
その時ガチャリと生徒会室の扉が開いた。
「さっきから外でごちゃごちゃうるさいと思ったら、のり?」
「俺のせいじゃねえよ。この風紀委員長だかなんだかが」
「これはこれは生徒会長、一体どういうことかね?」
「何の話?」
「お前以外仕事してないって言っても信じないから、見せてやれよ」
風紀委員長は克巳を押しのけて生徒会室に入っていった。
「のり、久しぶりだね」
本当は出てきたくなかったのに、由が弱すぎるからいけないのだ。
「後は勝手にしろ」
俺は眼鏡をかけた。
◆◆◆
「何ですぐ行っちゃうの?」
「か、かっちゃん?」
のりのこと? 僕が戻っちゃ悪かったかな。
僕はもう一度眼鏡を外そうとしたら、かっちゃんに止められた。
「由君が嫌なわけじゃないからね。のりが俺からすぐ逃げようとするから怒ってんの」
「う、うん」
のりはかっちゃんから逃げてるのかな。僕はあいつの気持ちまではわからない。僕が考えてることは筒抜けな感じがするけど。
「どこにもいない」
「何を今更?」
そういえば風紀委員長さんがいたんだった。かっちゃんはちょっと怒ってるのかな。
「何で風紀委員にすぐ相談しない」
「相談してどうにかなるの? 代わりに仕事やってくれるわけ?」
かっちゃんの言うとおりだと思った。だから僕が手伝ったのに。
「ぬう。副会長、書記、会計はどうした?」
「会計と書記は転校生に夢中だよ。副会長は知らないけど」
やっぱりそうなんだ。鏑木君って実は結構迷惑な人だったのかな。そんな風には見えなかったのに。そういえば僕の味方とかなんとか言ってたけど、ホントかな。
「こっちも転校生じゃないのか?」
僕の話になってドキッとした。
「由じゃなかった鐘木はもう一人の転校生だよ。俺の幼なじみ」
かっちゃん、僕のこと幼なじみだって思ってくれてるんだ。うれしくなった。
「幼なじみ? だからといって生徒会の仕事を部外者が」
「じゃあ部外者じゃなかったらいいの?」
かっちゃんが突然僕に話を振ってきた。
「由君は次の生徒会役員選挙に出るんだよね?」
え? 何それどういうこと?
「それはまだまだ先の話だろ」
風紀委員長がすかさず言い返す。僕はかっちゃんが言ったことがよくわからなくて戸惑っていた。
「あ、じゃあ文化祭実行委員に推薦する」
文化祭実行委員? 何それと思った。
「そういう問題じゃ」
「じゃあ、仕事終わらなくていいの? 由君すごい優秀だからホント助かるんだけどな」
かっちゃんに褒められてすごく嬉しかった。
「私が責任持って他の役員を連れ戻す」
「戻らなかったら?」
「し、仕方ない。目をつぶろう」
かっちゃんと風紀委員長さんの話し合いの結果、そういうことになって、結局書記と会計の2人は戻らなかった。風紀委員長さんは嘆いてたけど。
副会長さんは何故か行方不明だった。もしかしてのりのせいかななんて思ったりして。
ということで僕は風紀委員長の許可をもらって生徒会室に入れることになった。僕がした仕事を見せたら認めてくれたみたい。
でも、その代わり文化祭実行委員に入らなきゃいけなくなったけど。
僕は目立ちたくなかったんだけど、かっちゃんの役には立ちたいし、どうしよう。
かっちゃんのためにがんばるって決めたんだからがんばらないと。それまでにちゃんと恥ずかしくない人間になる。と、密かに決意した。
「生徒会室は部外者立ち入り禁止だ」
えっと思って振り向いたら、見たことない人だった。かっちゃんを手伝おうと思っただけなのに。どうしよう。
「ぼ、僕はその」
「見ない顔だな。もしかして転校生か?」
僕は恐る恐る肯いた。
「生徒会にも乗り込んできたのか?」
どういうこと?
「何人もの生徒を誑かして、何か企んでるのか?」
もしかしてまた鏑木君と間違えられてる?
「ち、違っ」
僕は否定しようとしたが、すぐに口を挟まれてしまった。
「全く。私たち風紀委員がいつまでも黙っていると思うなよ」
「風紀委員?」
「知らないのか? 学園の秩序を守る組織だ。私はその委員長をしている。転校すぐに親衛隊ができたらしいが、本当は生徒会役員しか親衛隊は持たないというのに」
そういえばそんな話を聞いた気がする。
「僕は鏑木君じゃない」
「鏑木? 誰だ?」
「もう一人の転校生。僕はそんな人気じゃないから」
下を向いた。
「取り巻き連中がいないから、おかしいと思ったが、まさか別人? 転校生は二人なのか?」
僕は肯いた。僕だって一緒に転校する生徒がいるなんて知らなかったもん。
「すまない。勘違いした。だが、だからといって生徒会室に入るのは」
僕は自然に眼鏡を外していた。
◆◆◆
「克巳が1人で大変そうにしてたから手伝ってやったってのに、ずいぶんな言い草だな」
手伝ったのは俺じゃなくて由だけど。
「どういうことだ?」
「知らねえよ。他の生徒会の奴らが消えちまったんだと。この学校の奴らは克巳一人に仕事押し付けるろくでなしなんだな」
いい加減頭にきてたので風紀委員だかなんだか知らないが、目の前の男を睨みつけた。
「消えたとは? 部外者が仕事まで手伝ってたなんて」
うるせえな。知ったことかよ
その時ガチャリと生徒会室の扉が開いた。
「さっきから外でごちゃごちゃうるさいと思ったら、のり?」
「俺のせいじゃねえよ。この風紀委員長だかなんだかが」
「これはこれは生徒会長、一体どういうことかね?」
「何の話?」
「お前以外仕事してないって言っても信じないから、見せてやれよ」
風紀委員長は克巳を押しのけて生徒会室に入っていった。
「のり、久しぶりだね」
本当は出てきたくなかったのに、由が弱すぎるからいけないのだ。
「後は勝手にしろ」
俺は眼鏡をかけた。
◆◆◆
「何ですぐ行っちゃうの?」
「か、かっちゃん?」
のりのこと? 僕が戻っちゃ悪かったかな。
僕はもう一度眼鏡を外そうとしたら、かっちゃんに止められた。
「由君が嫌なわけじゃないからね。のりが俺からすぐ逃げようとするから怒ってんの」
「う、うん」
のりはかっちゃんから逃げてるのかな。僕はあいつの気持ちまではわからない。僕が考えてることは筒抜けな感じがするけど。
「どこにもいない」
「何を今更?」
そういえば風紀委員長さんがいたんだった。かっちゃんはちょっと怒ってるのかな。
「何で風紀委員にすぐ相談しない」
「相談してどうにかなるの? 代わりに仕事やってくれるわけ?」
かっちゃんの言うとおりだと思った。だから僕が手伝ったのに。
「ぬう。副会長、書記、会計はどうした?」
「会計と書記は転校生に夢中だよ。副会長は知らないけど」
やっぱりそうなんだ。鏑木君って実は結構迷惑な人だったのかな。そんな風には見えなかったのに。そういえば僕の味方とかなんとか言ってたけど、ホントかな。
「こっちも転校生じゃないのか?」
僕の話になってドキッとした。
「由じゃなかった鐘木はもう一人の転校生だよ。俺の幼なじみ」
かっちゃん、僕のこと幼なじみだって思ってくれてるんだ。うれしくなった。
「幼なじみ? だからといって生徒会の仕事を部外者が」
「じゃあ部外者じゃなかったらいいの?」
かっちゃんが突然僕に話を振ってきた。
「由君は次の生徒会役員選挙に出るんだよね?」
え? 何それどういうこと?
「それはまだまだ先の話だろ」
風紀委員長がすかさず言い返す。僕はかっちゃんが言ったことがよくわからなくて戸惑っていた。
「あ、じゃあ文化祭実行委員に推薦する」
文化祭実行委員? 何それと思った。
「そういう問題じゃ」
「じゃあ、仕事終わらなくていいの? 由君すごい優秀だからホント助かるんだけどな」
かっちゃんに褒められてすごく嬉しかった。
「私が責任持って他の役員を連れ戻す」
「戻らなかったら?」
「し、仕方ない。目をつぶろう」
かっちゃんと風紀委員長さんの話し合いの結果、そういうことになって、結局書記と会計の2人は戻らなかった。風紀委員長さんは嘆いてたけど。
副会長さんは何故か行方不明だった。もしかしてのりのせいかななんて思ったりして。
ということで僕は風紀委員長の許可をもらって生徒会室に入れることになった。僕がした仕事を見せたら認めてくれたみたい。
でも、その代わり文化祭実行委員に入らなきゃいけなくなったけど。
僕は目立ちたくなかったんだけど、かっちゃんの役には立ちたいし、どうしよう。
かっちゃんのためにがんばるって決めたんだからがんばらないと。それまでにちゃんと恥ずかしくない人間になる。と、密かに決意した。
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