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第1章
第8話 ※R18
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◆◆◆
「いい加減にしとけよ。由の奴は繊細なんだ」
克巳は肩をすくめた。
「そうやって由君のこと守ってるの?」
「守ってるわけじゃない。元々由の奴に後始末を押し付けられたんだよ。それで俺が出てきた」
そうじゃなかったら、俺はずっと由の中にいればよかったのだから。
「お前変わったな」
目的のために手段を選ばない感じがする。
「のりは由君になり代わりたいとは思わないの?」
「はあ?」
そんなこと考えたこともなかった。
「そんなに由君のこと大事なの?」
「大事とか、大事じゃないとか、そういう問題じゃないんだよ」
あいつが主人格なのだから、俺が引っ込むのは当然のはずで、なのに妙に引っかかるのは何故なんだろう。
「由君のこと認めてないくせに、そこは消極的なんだ。俺に対する態度と逆だね」
うるせえ。そんなこと克巳には関係ない。俺たちの問題だ。
「由は自分で気付いてないだけだ。だからあいつの代わりに」
さっきとは逆に克巳をベッドに押し倒した。
「お前は俺のことだけ見てりゃいいんだよ」
克巳のくせに俺を蹂躙しようとするんじゃねえ。
「俺はどっちでもいいけどね」
それは俺たちのことなのか、上か下かなのかよくわからなかった。
そのままキスをする。克巳は抵抗はしないが、にやっと笑った。
「このままやんの?」
いちいち答えたくない。唇を塞ぎながら手を胸の方に回す。なのに克巳は唇を離して起き上がった。
「由君に戻った時、自己嫌悪でまた逃げるかもよ」
「知るかよ。そんなこと」
胸から下半身までまさぐると、克巳は反応した。
「あっ。のり」
そのまま俺のことだけ感じてろと思った。だけど、途中でこいつ初めてじゃないなと思った。
「誰かとやったのか?」
「へ?」
「あの副会長とか」
「してないよ」
克巳は顔をしかめた。
「のり覚えてないの?」
克巳とやった覚えなんかない。
「そうじゃなくてさ」
俺の考えを読んだみたいに言う。
「こっちは初めてだから優しくしてね」
動揺すらしていない克巳にいらっとした。正直克巳が誰に筆おろししたかなんてどうでもいいが、全部克巳の手のひらの上のようで気に入らない。俺のいない間にずいぶん変わったみたいだ。
ベッドから離れて、部屋のドアまで移動する。
「どこいく気?」
「適当にふらつく」
「のりのままで?」
「あいつの振りくらいできる」
克巳の手を振り払って外に出た。
俺は別に自分の貞操を守るために出てきたわけじゃない。何かピースが抜け落ちてる気がする。
それぞれが何かを企んでいて、かみ合ってない感じ。克巳は一体どういうつもりで同室にしたんだ? 俺たちがこの学校に入ったのはたまたまなはずだろ?
ぽやんとしている由に任せていられないので、とりあえず副会長ともう1人の転校生に接触してみようと思った。
探すまでもなく、副会長はすぐに接触できた。というか、ふらふらしてたら見つけられ、追いかけられた。
「この前はよくも私から逃げましたね」
なんだこれ? この前は由の奴が対応したから、なんとも思わなかったが、副会長の気持ち悪いしゃべり方に吐き気がした。
「会長に気があるのはあなたの方じゃないんですか?」
何故俺が壁ドンされることになってんだ。
「ふざけんな」
俺は振り払おうとしたが、腕を握られて身動きができなかった。こいつなんだこの馬鹿力。
「あなたにいたずらしたら克巳はどんな顔をするでしょうね」
「離せ」
副会長の唇が俺に迫ってくる。何で俺がこんな目に合わなきゃいけないんだよ。
足で蹴りを入れようともがくが、届かない。由の身長が短すぎるんだ。こいつの身長が高すぎるのかもしれないけど。克巳よりもありそうだ。
あーもう。後で絶対こいつ殺す。
俺が諦めかけて目をつぶった時、呑気な声が聞こえた。
「何やってんの? もしかして取り込み中だった?」
「克巳!」
副会長と同時に声を上げてしまった。
「のり、三好に乗り換えたの?」
「んなことあるわけ」
俺はその隙に副会長から逃れようと体をよじったが、もっと強い力で掴まれた。
「おっと。逃げていいなんて私は言ってません」
ふざけんな。マジでこいつ後でしめる。やっぱり体格差は馬鹿にならない。
いつもだったらこんな油断しないのに。余計なことを考え過ぎてた。
「無理やりっていう理解でいいの?」
「転校生は克巳のものじゃない。だから私がもらいます」
いや、意味わかんないし。どうせ克巳への当てつけだろ。マジで消えろ。
バタバタあばれていたら、もう一度副会長の顔が迫ってきた。こんな克巳の目の前で本気で勘弁してほしい。
克巳の行動は早かった。すっと副会長の片腕を掴んだ。
「俺のもんに手出すなんて、もしかして喧嘩売ってる?」
克巳は克巳で妙な威圧感があった。やっぱり小学校の時とは何もかも違ってる。
「やっぱり大事なものに対してはあなたも冷静じゃないんですね」
会話の内容はともかく、副会長に隙ができたので、俺は自由になった右手で顔面に拳を入れた。
「つっ。貴様」
もう一度俺の腕を掴んでこようとするが、そこで克巳が容赦なくハラパンした。
「うっ」
俺は蹴りを入れようとしたが、克巳に制された。
「未遂だったら今回限りは見逃すけど」
「みみ、未遂です」
本当にやられてたら蹴りどころじゃ済まないけど。
克巳は俺を庇うように立って副会長を睨みつけた。
「絶対いつか負かしてやる」
なんて捨て台詞を吐いて去ってった。
なんていうか後に残されてむしゃくしゃしてきた。克巳に助けられたのが癪というか、気に入らないのもある。
「何であいつしめないんだよ」
「のり、そんなことよりも無防備過ぎる」
「俺だって油断しなきゃあんな奴」
「じゃあ助けない方がよかった?」
俺は何も言い返せなくなった。自分に落ち度があったからだ。くそっ。克巳にだけは助けられたくなかったのに。こんなことも切り抜けられないなんて。
俺は唇をかんだ。
「のりだってどうにもならないことはあるでしょ」
そんなことわかってる。俺のプライドの問題だ。
俺は無言で克巳を壁に押しつけながらキスをした。
別に副会長に何かされたわけじゃないから、消毒ってわけではないけど。
「言い返せないからってそれ?」
「うるさい。黙って俺に抱かれてろ」
「じゃあ、部屋戻ろう」
たまたま誰もいなかったが、こんなとこで色々やってて由が後からうるさいのも面倒だと思った。おとなしく克巳についていった。
克巳はシャワー浴びると言って、部屋のユニットバスに入った。
俺たちの部屋はシャワーなんかついてなくて、外にあるシャワー室をその階の奴らが交代で使うのだ。
冬は大浴場も開放されるらしいが、生徒会長だと待遇が違うんだなと思った。
「のり、来て」
風呂で準備してたらしい。俺のにローションをたらしただけで、克巳の中にすぐに飲み込まれていく。
こっちも経験あるんじゃないかと疑いたくなる。後ろを使ってないかなんて女でもないし証明などできない。
克巳を犯してるはずなのに、犯されているような気分になった。
中は想像以上に気持ち良くて、持っていかれそうになりながら、なんとか堪え、激しくつくと、克巳が思わず声をもらした。
なんとなくわざとらしいというか、余裕がある気がする。気に入らないけど、仕方ない。
「ねえ、のり」
いちいち返事しない。
そのままキスをして舌を絡みつける。答えるように克巳の舌も絡まってくる。
本当にどっちが犯されてるんだか。こんなのはあいつ、由に見せらんないなと思った。
1回出したら、もう終わりなの? なんて言われてむきになって3回もやってしまった。克巳に振り回されてんな。
克巳は受ける側なのに、よく体力が続くもんだ。いちいち凝視しないけど、体全体も程よく筋肉がついていて、鍛えてるんだということはわかる。
最後には俺の方がぐったりしてしまった。
「もっと体力つけたら」
なんて言われてむかつくが、まあいい。そんなのは由の役目だ。
「のり、俺のこと好き?」
いちいちそんなこと聞くな。
「絶対にそんなこと言わない」
「あっそ」
「由の奴に言ってもらえよ。本人は自覚ないだろうけど」
「のりの口から聞きたいな」
言うわけないだろ。俺たちは最初に克巳に会った時からずっとこいつに囚われてたなんてこと絶対に口にしたりしない。少なくとも俺は。どうせ由の奴は忘れてる。
「のり?」
「もうこれ以上俺を呼び起こすな」
「何? 最後みたいな言い方」
最後にしたかったのだ。それは由のためでも、克巳のためでもなく、俺のために。
もう何も期待しないために。きっと克巳にはわからない。
「いい加減にしとけよ。由の奴は繊細なんだ」
克巳は肩をすくめた。
「そうやって由君のこと守ってるの?」
「守ってるわけじゃない。元々由の奴に後始末を押し付けられたんだよ。それで俺が出てきた」
そうじゃなかったら、俺はずっと由の中にいればよかったのだから。
「お前変わったな」
目的のために手段を選ばない感じがする。
「のりは由君になり代わりたいとは思わないの?」
「はあ?」
そんなこと考えたこともなかった。
「そんなに由君のこと大事なの?」
「大事とか、大事じゃないとか、そういう問題じゃないんだよ」
あいつが主人格なのだから、俺が引っ込むのは当然のはずで、なのに妙に引っかかるのは何故なんだろう。
「由君のこと認めてないくせに、そこは消極的なんだ。俺に対する態度と逆だね」
うるせえ。そんなこと克巳には関係ない。俺たちの問題だ。
「由は自分で気付いてないだけだ。だからあいつの代わりに」
さっきとは逆に克巳をベッドに押し倒した。
「お前は俺のことだけ見てりゃいいんだよ」
克巳のくせに俺を蹂躙しようとするんじゃねえ。
「俺はどっちでもいいけどね」
それは俺たちのことなのか、上か下かなのかよくわからなかった。
そのままキスをする。克巳は抵抗はしないが、にやっと笑った。
「このままやんの?」
いちいち答えたくない。唇を塞ぎながら手を胸の方に回す。なのに克巳は唇を離して起き上がった。
「由君に戻った時、自己嫌悪でまた逃げるかもよ」
「知るかよ。そんなこと」
胸から下半身までまさぐると、克巳は反応した。
「あっ。のり」
そのまま俺のことだけ感じてろと思った。だけど、途中でこいつ初めてじゃないなと思った。
「誰かとやったのか?」
「へ?」
「あの副会長とか」
「してないよ」
克巳は顔をしかめた。
「のり覚えてないの?」
克巳とやった覚えなんかない。
「そうじゃなくてさ」
俺の考えを読んだみたいに言う。
「こっちは初めてだから優しくしてね」
動揺すらしていない克巳にいらっとした。正直克巳が誰に筆おろししたかなんてどうでもいいが、全部克巳の手のひらの上のようで気に入らない。俺のいない間にずいぶん変わったみたいだ。
ベッドから離れて、部屋のドアまで移動する。
「どこいく気?」
「適当にふらつく」
「のりのままで?」
「あいつの振りくらいできる」
克巳の手を振り払って外に出た。
俺は別に自分の貞操を守るために出てきたわけじゃない。何かピースが抜け落ちてる気がする。
それぞれが何かを企んでいて、かみ合ってない感じ。克巳は一体どういうつもりで同室にしたんだ? 俺たちがこの学校に入ったのはたまたまなはずだろ?
ぽやんとしている由に任せていられないので、とりあえず副会長ともう1人の転校生に接触してみようと思った。
探すまでもなく、副会長はすぐに接触できた。というか、ふらふらしてたら見つけられ、追いかけられた。
「この前はよくも私から逃げましたね」
なんだこれ? この前は由の奴が対応したから、なんとも思わなかったが、副会長の気持ち悪いしゃべり方に吐き気がした。
「会長に気があるのはあなたの方じゃないんですか?」
何故俺が壁ドンされることになってんだ。
「ふざけんな」
俺は振り払おうとしたが、腕を握られて身動きができなかった。こいつなんだこの馬鹿力。
「あなたにいたずらしたら克巳はどんな顔をするでしょうね」
「離せ」
副会長の唇が俺に迫ってくる。何で俺がこんな目に合わなきゃいけないんだよ。
足で蹴りを入れようともがくが、届かない。由の身長が短すぎるんだ。こいつの身長が高すぎるのかもしれないけど。克巳よりもありそうだ。
あーもう。後で絶対こいつ殺す。
俺が諦めかけて目をつぶった時、呑気な声が聞こえた。
「何やってんの? もしかして取り込み中だった?」
「克巳!」
副会長と同時に声を上げてしまった。
「のり、三好に乗り換えたの?」
「んなことあるわけ」
俺はその隙に副会長から逃れようと体をよじったが、もっと強い力で掴まれた。
「おっと。逃げていいなんて私は言ってません」
ふざけんな。マジでこいつ後でしめる。やっぱり体格差は馬鹿にならない。
いつもだったらこんな油断しないのに。余計なことを考え過ぎてた。
「無理やりっていう理解でいいの?」
「転校生は克巳のものじゃない。だから私がもらいます」
いや、意味わかんないし。どうせ克巳への当てつけだろ。マジで消えろ。
バタバタあばれていたら、もう一度副会長の顔が迫ってきた。こんな克巳の目の前で本気で勘弁してほしい。
克巳の行動は早かった。すっと副会長の片腕を掴んだ。
「俺のもんに手出すなんて、もしかして喧嘩売ってる?」
克巳は克巳で妙な威圧感があった。やっぱり小学校の時とは何もかも違ってる。
「やっぱり大事なものに対してはあなたも冷静じゃないんですね」
会話の内容はともかく、副会長に隙ができたので、俺は自由になった右手で顔面に拳を入れた。
「つっ。貴様」
もう一度俺の腕を掴んでこようとするが、そこで克巳が容赦なくハラパンした。
「うっ」
俺は蹴りを入れようとしたが、克巳に制された。
「未遂だったら今回限りは見逃すけど」
「みみ、未遂です」
本当にやられてたら蹴りどころじゃ済まないけど。
克巳は俺を庇うように立って副会長を睨みつけた。
「絶対いつか負かしてやる」
なんて捨て台詞を吐いて去ってった。
なんていうか後に残されてむしゃくしゃしてきた。克巳に助けられたのが癪というか、気に入らないのもある。
「何であいつしめないんだよ」
「のり、そんなことよりも無防備過ぎる」
「俺だって油断しなきゃあんな奴」
「じゃあ助けない方がよかった?」
俺は何も言い返せなくなった。自分に落ち度があったからだ。くそっ。克巳にだけは助けられたくなかったのに。こんなことも切り抜けられないなんて。
俺は唇をかんだ。
「のりだってどうにもならないことはあるでしょ」
そんなことわかってる。俺のプライドの問題だ。
俺は無言で克巳を壁に押しつけながらキスをした。
別に副会長に何かされたわけじゃないから、消毒ってわけではないけど。
「言い返せないからってそれ?」
「うるさい。黙って俺に抱かれてろ」
「じゃあ、部屋戻ろう」
たまたま誰もいなかったが、こんなとこで色々やってて由が後からうるさいのも面倒だと思った。おとなしく克巳についていった。
克巳はシャワー浴びると言って、部屋のユニットバスに入った。
俺たちの部屋はシャワーなんかついてなくて、外にあるシャワー室をその階の奴らが交代で使うのだ。
冬は大浴場も開放されるらしいが、生徒会長だと待遇が違うんだなと思った。
「のり、来て」
風呂で準備してたらしい。俺のにローションをたらしただけで、克巳の中にすぐに飲み込まれていく。
こっちも経験あるんじゃないかと疑いたくなる。後ろを使ってないかなんて女でもないし証明などできない。
克巳を犯してるはずなのに、犯されているような気分になった。
中は想像以上に気持ち良くて、持っていかれそうになりながら、なんとか堪え、激しくつくと、克巳が思わず声をもらした。
なんとなくわざとらしいというか、余裕がある気がする。気に入らないけど、仕方ない。
「ねえ、のり」
いちいち返事しない。
そのままキスをして舌を絡みつける。答えるように克巳の舌も絡まってくる。
本当にどっちが犯されてるんだか。こんなのはあいつ、由に見せらんないなと思った。
1回出したら、もう終わりなの? なんて言われてむきになって3回もやってしまった。克巳に振り回されてんな。
克巳は受ける側なのに、よく体力が続くもんだ。いちいち凝視しないけど、体全体も程よく筋肉がついていて、鍛えてるんだということはわかる。
最後には俺の方がぐったりしてしまった。
「もっと体力つけたら」
なんて言われてむかつくが、まあいい。そんなのは由の役目だ。
「のり、俺のこと好き?」
いちいちそんなこと聞くな。
「絶対にそんなこと言わない」
「あっそ」
「由の奴に言ってもらえよ。本人は自覚ないだろうけど」
「のりの口から聞きたいな」
言うわけないだろ。俺たちは最初に克巳に会った時からずっとこいつに囚われてたなんてこと絶対に口にしたりしない。少なくとも俺は。どうせ由の奴は忘れてる。
「のり?」
「もうこれ以上俺を呼び起こすな」
「何? 最後みたいな言い方」
最後にしたかったのだ。それは由のためでも、克巳のためでもなく、俺のために。
もう何も期待しないために。きっと克巳にはわからない。
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