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第6章 転換
転換(2) ※過剰表現あり。気になる人は飛ばしてください。
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部屋に入ったらいきなりキスをしてきた。
「やめろよ」
「本当にやだったら最初からここまでこないでしょ」
そうじゃねえだろ。こいつは何もわかっていない。後先のことなんか何も考えていないのか。
ふざけるなと思った。俺の中で何かがプチっと切れた。俺の方から唇を近付ける。
「外れたよ」
「うるせえ」
あいつを押し倒すような格好になった。理性も何もかも超えている自分がいる。
しかし、俺はそのままごろんと仰向けになった。やっぱり無理だ。最後の抵抗だった。
「こんなことして何になるんだよ」
「何でそんなこと聞くの?」
そしたら逆に覆いかぶされた。ああ、もう駄目だと思った。逆らえない。流される。
藤越がキスをしたり、散々人をいじくり回した後言ったセリフが、「シャワー浴びようか?」だった。喧嘩売ってんのかと思う。
風呂場に入り俺はぼそっとつぶやく。
「そういえば野郎と風呂入ったの修学旅行以来だな」
「修学旅行ね。仮病使ってサボろうと思ったけどばれたね」
「お前昔からやる気ねえな」
「だって友達いなかったし、つまんないじゃん」
「作る気なかっただけだろ」
今ではあれだけの奴らに囲まれてるのによく言う。
「まあね。群れるの嫌いだったから、自由行動も一人で回ったよ。一応最後に駅で落ち合ってホテル戻ったけど」
藤越らしいと思った。
「でも今はあいつら嫌じゃないんだろ」
「たまに会って飲むくらいならね。毎日はちょっときついかな」
「じゃあそいつらに慰めてもらえば良かったじゃないか」
「馬鹿?」
またそういうことを言う。
「他の奴らとこんなことしたいなんて思わないよ」
そういう意味じゃなくてと言おうとしたら体を壁に押し当てられた。キスもされる。こいつ舌長。ってそんなことを考えてる場合じゃない。
「じゃあ何で俺ならいいんだよ」
なかなか離してくれない唇を無理矢理引きはがして言った。
「忠敏は好きって言ってくれたじゃん」
「だからそれはこんなことしたいって意味じゃなくて」
「それじゃあ一度も考えたことないの?」
藤越の曇りのない目で見つめられて、ドキンとする。嘘はつけない。
「あるよ」
ずっと男となんてできないと思ってた。でも、藤越なら、藤越透馬という人間なら、俺の煮え切らない欲望も受け止めてくれそうな気がした。
「そんな忠敏が好きだよ」
それは愛良ちゃんに言ってやれよと思った。思いながらも涙を流していた。
「透馬」
初めて名前で呼んでみた。あいつはただ笑った。
俺はちゃんとわかっていた。藤越はただ、愛良ちゃんを抱けない苦しさから俺とやったんだってことを。
俺はただあいつを現実に繋ぎ止めるだけの役目。それでも、死んでもいいと思えるぐらい満たされた気持ち。
もう元には戻れない。
「やめろよ」
「本当にやだったら最初からここまでこないでしょ」
そうじゃねえだろ。こいつは何もわかっていない。後先のことなんか何も考えていないのか。
ふざけるなと思った。俺の中で何かがプチっと切れた。俺の方から唇を近付ける。
「外れたよ」
「うるせえ」
あいつを押し倒すような格好になった。理性も何もかも超えている自分がいる。
しかし、俺はそのままごろんと仰向けになった。やっぱり無理だ。最後の抵抗だった。
「こんなことして何になるんだよ」
「何でそんなこと聞くの?」
そしたら逆に覆いかぶされた。ああ、もう駄目だと思った。逆らえない。流される。
藤越がキスをしたり、散々人をいじくり回した後言ったセリフが、「シャワー浴びようか?」だった。喧嘩売ってんのかと思う。
風呂場に入り俺はぼそっとつぶやく。
「そういえば野郎と風呂入ったの修学旅行以来だな」
「修学旅行ね。仮病使ってサボろうと思ったけどばれたね」
「お前昔からやる気ねえな」
「だって友達いなかったし、つまんないじゃん」
「作る気なかっただけだろ」
今ではあれだけの奴らに囲まれてるのによく言う。
「まあね。群れるの嫌いだったから、自由行動も一人で回ったよ。一応最後に駅で落ち合ってホテル戻ったけど」
藤越らしいと思った。
「でも今はあいつら嫌じゃないんだろ」
「たまに会って飲むくらいならね。毎日はちょっときついかな」
「じゃあそいつらに慰めてもらえば良かったじゃないか」
「馬鹿?」
またそういうことを言う。
「他の奴らとこんなことしたいなんて思わないよ」
そういう意味じゃなくてと言おうとしたら体を壁に押し当てられた。キスもされる。こいつ舌長。ってそんなことを考えてる場合じゃない。
「じゃあ何で俺ならいいんだよ」
なかなか離してくれない唇を無理矢理引きはがして言った。
「忠敏は好きって言ってくれたじゃん」
「だからそれはこんなことしたいって意味じゃなくて」
「それじゃあ一度も考えたことないの?」
藤越の曇りのない目で見つめられて、ドキンとする。嘘はつけない。
「あるよ」
ずっと男となんてできないと思ってた。でも、藤越なら、藤越透馬という人間なら、俺の煮え切らない欲望も受け止めてくれそうな気がした。
「そんな忠敏が好きだよ」
それは愛良ちゃんに言ってやれよと思った。思いながらも涙を流していた。
「透馬」
初めて名前で呼んでみた。あいつはただ笑った。
俺はちゃんとわかっていた。藤越はただ、愛良ちゃんを抱けない苦しさから俺とやったんだってことを。
俺はただあいつを現実に繋ぎ止めるだけの役目。それでも、死んでもいいと思えるぐらい満たされた気持ち。
もう元には戻れない。
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