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第13章 最後の再会
最後の再会(1)
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透馬と出会ったのは、小学校だった。しかし数年前に建て替えられた校舎に以前の面影はない。
それでも念のため足を運ぶと、昔の通学路になんとなく当時の雰囲気を感じた。といっても、家や店はだいぶ建て替えられていてほとんど見る影もないのだが。
俺たちがよく遊んだ公園はまだ残っているだろうか。
そう考えて歩いていると、いつだか遠くの公園まで行った日のことを思い出した。仙川の方にある普段は利用しない公園。結構広くて、ボール遊びなどをするのに便利だった。
そういえば浅木はどうして俺のことをわかったのだろう。透馬のことをいじめていた一人だと。どこかで会った?
透馬の家はあの公園の近くだった。そこで確か一度見かけたことがある。俺たちはいつものように透馬をからかったりしていて、その時透馬は誰かと二人で俺たちを無視して走り去ったような。
それがまさか浅木だった?
一瞬だったから人相まで覚えていない。でも、向こうは気付いたのかもしれない。
公園の入り口に向かって歩いていると、ブランコに人影が見えた。まさか透馬? 俺は駆け寄ろうとしたが、その姿があまりにも孤独に感じた。
俺がいるというのに、どうしてあいつは。そう思いながらも俺は少しずつあいつに近付く。
「やっと捕まえた」
俺がブランコの前に立つと、透馬はブランコを漕ぐのをやめた。俺はもうどこにも行かないようにとブランコの鎖を持っている透馬の手を握った。
「よくわかったね」
「わかんねえよ。なんとなくだよ」
透馬は淡々と静かに言った。
「ここで梨津に会ったの」
「俺関係ないじゃないか」
「関係なくなんかないよ」
そう言って透馬は説明を始める。
「俺が一人で砂に絵を描いて遊んでたら、一人でやってて楽しいかって梨津に聞かれたの。その時、関係ないって答えることもできた。忠敏に最初に言ったみたいに」
俺はそれで思い出した。小三の頃、透馬に最初に話しかけた時、「それがあんたに何か関係ある?」と返されたことを。
「だけど、その時忠敏が傷付いたような顔をしたのを思い出した。だから俺は言い方を変えた。別にって。それも今考えたら微妙だけどね」
そんなこと俺は知らない。
「だから、梨津とは友達になれた。でもそれは最初に忠敏が話しかけてくれたから。運命って不思議だよね。全てが繋がって、絡み合ってる」
透馬がそんな話をするのを初めて聞いた。
「この辺歩いていて、来たことあるようなって思い出したけど、俺が気付かなかったらどうしたんたよ」
「でも忠敏は、俺のこと諦めたりしないでしょ」
「そういう問題じゃなくて」
「勝手に出て行って怒ってる?」
俺は怒りなんかとうに通り越している。むしろ今ここにいる透馬を抱きしめたくてたまらなくなる。
「お前がここにいるだけでいいよ」
と言うと、「忠敏のそういう所が嫌」と言われた。
「言いたいこと言えばいいじゃん」
俺は既に言いたいことなどなくなってしまった。ただここにいる透馬を抱きしめたいだけなのに、それが悪いっていうのか?
「そりゃもちろんあるけどさ。何で宮田のとことかさ」
「そういえば返してもらった?」
「何を?」
透馬は黙ってキスをしてくる。
「これで間接キス」
「お前誰彼構わずキスするなよ」
そういえば返すとかなんとか言ってたけど、宮田が途中でやめてほっとしたんだった。
「なんかしてほしそうだったから」
「それあり得ないだろ」
「そう? 宮田っち忠敏のこと好きなんじゃない」
「そんなことあるわけない」
そもそもあいつは透馬ちゃんちょうだいとか言ってたぞ。
「むしろお前が惚れられたんじゃないのか?」
「もしかして妬いてる?」
「微妙」
俺はキスを返した。
「ねえ忠敏」
「言いたいことはいっぱいあるよ。でも、別にもういいだろ。俺は黙って出て行ったのが気に入らないだけだ。お前の行動縛る気ない」
「そういう所が重いんだけどね」
「重い?」
「俺が何言っても、何しても、犯罪犯したとしても忠敏は側にいそうだから」
それの何が悪いのか俺にはわからない。
「プレッシャーってわかる? 何をしても許されるなら、むしろすることは厳選しなきゃいけない」
「お前が今までやってきたことと何が違うんだよ」
「全然違うよ。まあ元々忠敏はそうだっんだろうけど、甘やかされるのに慣れすぎちゃうでしょ」
「ごちゃごちゃと考えてないでさ、どうでもよくないか」
俺が抱きしめようとすると、立ち上がってすり抜ける。
「俺の話聞きたくない?」
「そういうわけじゃなくて」
ただまどろっこしく感じる。何故かいつもと違う饒舌な透馬に違和感を感じるのだった。
それでも念のため足を運ぶと、昔の通学路になんとなく当時の雰囲気を感じた。といっても、家や店はだいぶ建て替えられていてほとんど見る影もないのだが。
俺たちがよく遊んだ公園はまだ残っているだろうか。
そう考えて歩いていると、いつだか遠くの公園まで行った日のことを思い出した。仙川の方にある普段は利用しない公園。結構広くて、ボール遊びなどをするのに便利だった。
そういえば浅木はどうして俺のことをわかったのだろう。透馬のことをいじめていた一人だと。どこかで会った?
透馬の家はあの公園の近くだった。そこで確か一度見かけたことがある。俺たちはいつものように透馬をからかったりしていて、その時透馬は誰かと二人で俺たちを無視して走り去ったような。
それがまさか浅木だった?
一瞬だったから人相まで覚えていない。でも、向こうは気付いたのかもしれない。
公園の入り口に向かって歩いていると、ブランコに人影が見えた。まさか透馬? 俺は駆け寄ろうとしたが、その姿があまりにも孤独に感じた。
俺がいるというのに、どうしてあいつは。そう思いながらも俺は少しずつあいつに近付く。
「やっと捕まえた」
俺がブランコの前に立つと、透馬はブランコを漕ぐのをやめた。俺はもうどこにも行かないようにとブランコの鎖を持っている透馬の手を握った。
「よくわかったね」
「わかんねえよ。なんとなくだよ」
透馬は淡々と静かに言った。
「ここで梨津に会ったの」
「俺関係ないじゃないか」
「関係なくなんかないよ」
そう言って透馬は説明を始める。
「俺が一人で砂に絵を描いて遊んでたら、一人でやってて楽しいかって梨津に聞かれたの。その時、関係ないって答えることもできた。忠敏に最初に言ったみたいに」
俺はそれで思い出した。小三の頃、透馬に最初に話しかけた時、「それがあんたに何か関係ある?」と返されたことを。
「だけど、その時忠敏が傷付いたような顔をしたのを思い出した。だから俺は言い方を変えた。別にって。それも今考えたら微妙だけどね」
そんなこと俺は知らない。
「だから、梨津とは友達になれた。でもそれは最初に忠敏が話しかけてくれたから。運命って不思議だよね。全てが繋がって、絡み合ってる」
透馬がそんな話をするのを初めて聞いた。
「この辺歩いていて、来たことあるようなって思い出したけど、俺が気付かなかったらどうしたんたよ」
「でも忠敏は、俺のこと諦めたりしないでしょ」
「そういう問題じゃなくて」
「勝手に出て行って怒ってる?」
俺は怒りなんかとうに通り越している。むしろ今ここにいる透馬を抱きしめたくてたまらなくなる。
「お前がここにいるだけでいいよ」
と言うと、「忠敏のそういう所が嫌」と言われた。
「言いたいこと言えばいいじゃん」
俺は既に言いたいことなどなくなってしまった。ただここにいる透馬を抱きしめたいだけなのに、それが悪いっていうのか?
「そりゃもちろんあるけどさ。何で宮田のとことかさ」
「そういえば返してもらった?」
「何を?」
透馬は黙ってキスをしてくる。
「これで間接キス」
「お前誰彼構わずキスするなよ」
そういえば返すとかなんとか言ってたけど、宮田が途中でやめてほっとしたんだった。
「なんかしてほしそうだったから」
「それあり得ないだろ」
「そう? 宮田っち忠敏のこと好きなんじゃない」
「そんなことあるわけない」
そもそもあいつは透馬ちゃんちょうだいとか言ってたぞ。
「むしろお前が惚れられたんじゃないのか?」
「もしかして妬いてる?」
「微妙」
俺はキスを返した。
「ねえ忠敏」
「言いたいことはいっぱいあるよ。でも、別にもういいだろ。俺は黙って出て行ったのが気に入らないだけだ。お前の行動縛る気ない」
「そういう所が重いんだけどね」
「重い?」
「俺が何言っても、何しても、犯罪犯したとしても忠敏は側にいそうだから」
それの何が悪いのか俺にはわからない。
「プレッシャーってわかる? 何をしても許されるなら、むしろすることは厳選しなきゃいけない」
「お前が今までやってきたことと何が違うんだよ」
「全然違うよ。まあ元々忠敏はそうだっんだろうけど、甘やかされるのに慣れすぎちゃうでしょ」
「ごちゃごちゃと考えてないでさ、どうでもよくないか」
俺が抱きしめようとすると、立ち上がってすり抜ける。
「俺の話聞きたくない?」
「そういうわけじゃなくて」
ただまどろっこしく感じる。何故かいつもと違う饒舌な透馬に違和感を感じるのだった。
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