俺の人生を捧ぐ人

宮部ネコ

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第8章 子育てと寄り道

寄り道(1)

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 二人の子供は男の子で、二人は秀範という名前をつけた。俺は度々子供の様子を見に隣の家に行った。そのうち愛良ちゃんが大変な時、子育てを手伝わされたりした。比較的藤越より俺の仕事の方が楽だったせいもある。
 半年ぐらい経って引っ越すことが本格的になった。俺は今度こそ子供ともお別れかと思ったのに、藤越だけでなく愛良ちゃんまで一緒に暮らそうと誘ってきた。藤越のお母さんとの約束もあったから、俺は結局二人と離れられなくなった。
 三人で一軒家を購入し、俺にも一室が与えられた。ローンの半額を払うことになった。本当は三分の一でいいと言われたのだけど、愛良ちゃんは仕事してないし、藤越の負担になっても嫌なので強引に払うことにしたのだ。

 藤越の子供が小さいし、帰るのが遅くなるのも嫌なので職場の飲み会はほぼ断っていたのだが、ある時どうしてもと言われて参加した。
 俺の職場は男の方が多かったが、付き合いがある会社の女子も交えての飲み会だった。学生時代の合コンとはちょっと違うが、出会いを求める男女としては同じようなものだった。俺は場違いなところに来てしまったなと思っていた。
 俺を気に入ったという強引な女性に、連絡先を無理矢理交換させられた。
「彼女はいないんですよね?」
 と聞かれた時、「いないけど」と言ったのが悪かったかもしれない。嘘でもいると言っておけば良かったと後悔した。
 仕事帰りにお茶でもしないかと何度も誘われることになった。俺は毎回断っていたのだが、ある時仕事の帰りに直接会社まで来られたため、仕方なく少しの時間だけ付き合うことにした。
 その彼女は大西つぐみさんと言った。つぐみさんは、どうして何度も断るのかと言ってきた。彼女がいないなら、別にお茶ぐらい構わないじゃないかと。
 俺は仕方ないので正直に「好きな人がいるんだ」と言った。
「好きな人?」
「ああ」
「同じ職場とか?」
「違うけど」
 そもそも本当のことなんて言えるわけがない。
「もしかして迷惑だった?」
「迷惑ってわけじゃないけど」
 この時、はっきりと迷惑だって言えば良かったのかもしれない。俺の性格が煮え切らないため、面倒なことを避けられない性質なのかもしれない。
「じゃあ、食事ぐらいいいでしょ?」
 と言われて、断る手段が思いつかなかった。仕方なく愛良ちゃんに今日の夕食はいらないと連絡し、食事に付き合うことにした。
「誰?」と聞かれたので、実家とごまかした。
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