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第7章 リスタート
カミングアウト
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次の日、結局朝一は間に合わないから、家の解約や車の処分を済ませ、午後に東京に帰ることになった。車はちょっともったいない気もしたけど、鹿児島から車で帰るのは遠すぎるし、中古車だから良しとしよう。
羽田から直接実家に向かった。何故か二人も付いてきた。
「母ちゃんただいま」
「忠敏」
そう言って抱き着かれた。絶対藤越のせいだと思った。昔母ちゃんにそんなことを言っていたから。
「ずっと帰って来ない気かと思ったよ」
「ごめん」
「何で鹿児島なんか行ってたんだい」
「なんとなく。そんなことより俺一人じゃないって。客だよ」
「ん?」
二人が目に入ってなかったのか、今頃気付いた。
「おやまあ」
「藤越とその妹愛良ちゃん」
「知ってるよ」
そういえば二人が鹿児島に来る前に寄ったって言ってたっけ。
「本当に連れて帰ってきたんだね」
「約束ですから」
藤越はそんなことを言う。約束とか勝手にしてるんじゃねえよと思った。
「忠敏なんかほっときゃ良かったのに」
俺は苦笑するしかない。
「行く前にも言いましたが、忠敏が鹿児島なんかに行ったのは俺のせいですから。それに、俺の側にいてほしいんですよ」
藤越はこれだから困る。
「母ちゃん、俺この家出てくから」
「また鹿児島にでも行くのかい?」
「違うよ」
俺は藤越に言った。
「ちょっとあっち行ってろ」
藤越を追い出して母ちゃんに言おうとした。
「何客追い出してるんだい」
「母ちゃん、俺あいつが好きなんだよ」
「あいつってあの妹かい?」
「違うよ。透馬の方」
「あら。やだよ」
何故か母ちゃんは顔を赤らめた。
「俺がおかしいのはわかってる。ずっと母ちゃんに結婚しないって言ってたのも。だから」
「忠敏?」
「あいつの側にいるって決めたんだ。俺が家出てくの許して」
「勝敏はさっさと出て行っちゃったし、私にはあんたしか残ってないんだよ。それが男を好きになるなんて。一体いつから」
「二十歳ぐらいの時からずっとだよ」
初めてのカミングアウトだった。
「それであんたはどうしたいんだい?」
「だから側にいるって」
「あんたそれでいいのかい? あの二人は兄弟でも愛しあっているんだろ」
「いいんだよ」
俺がそう決めたんだから。母ちゃんに何を言われても。
「あんたまさか邪魔する気じゃないだろうね」
「しないよ。それに二世帯とか、分かれて住むつもりだから。そうだ。母ちゃんも一緒に」
「私はこの家を動かないよ」
やっぱり母ちゃんはそうくるかと思った。
「あんたホントにそれでいいのかい? つらくなるんじゃないのかい?」
「それでも側にいるって決めたから」
「あんたがそんな風に言うなんてよっぽどなんだね。何にも執着がない子だと思ったけど」
確かに、どんなことにも執着は薄かった。母ちゃんには見透かされていたみたいだ。
「私はあんたがそうしたいなら止めないよ。ただ、途中で投げ出すんじゃないよ」
「うん。ありがとう」
「礼を言うようなことじゃないよ。あんたの人生だろ」
母ちゃんに背中を押され、藤越と一緒に暮らすことになった。最後に余計なことを言われたけど。
「あんたの部屋にあるいかがわしい本やビデオはちゃんと処分するんだよ」
ばれてたのかと思った。さすが母ちゃんだ。
「つらくなったら帰ってきていいからね。あんたの部屋そのままにしとくから」
「ああ。わかったよ」
家の外で二人は待ってた。
「もういいの?」
「ちゃんと言ったから、大丈夫だよ」
「何を?」
わかってるくせに聞くなよと思った。俺は耳打ちした。
「お前が好きって言ったんだよ」
藤越は無視して言った。
「愛良、行こう」
「うん」
無視するぐらいなら最初から聞くなと思った。
羽田から直接実家に向かった。何故か二人も付いてきた。
「母ちゃんただいま」
「忠敏」
そう言って抱き着かれた。絶対藤越のせいだと思った。昔母ちゃんにそんなことを言っていたから。
「ずっと帰って来ない気かと思ったよ」
「ごめん」
「何で鹿児島なんか行ってたんだい」
「なんとなく。そんなことより俺一人じゃないって。客だよ」
「ん?」
二人が目に入ってなかったのか、今頃気付いた。
「おやまあ」
「藤越とその妹愛良ちゃん」
「知ってるよ」
そういえば二人が鹿児島に来る前に寄ったって言ってたっけ。
「本当に連れて帰ってきたんだね」
「約束ですから」
藤越はそんなことを言う。約束とか勝手にしてるんじゃねえよと思った。
「忠敏なんかほっときゃ良かったのに」
俺は苦笑するしかない。
「行く前にも言いましたが、忠敏が鹿児島なんかに行ったのは俺のせいですから。それに、俺の側にいてほしいんですよ」
藤越はこれだから困る。
「母ちゃん、俺この家出てくから」
「また鹿児島にでも行くのかい?」
「違うよ」
俺は藤越に言った。
「ちょっとあっち行ってろ」
藤越を追い出して母ちゃんに言おうとした。
「何客追い出してるんだい」
「母ちゃん、俺あいつが好きなんだよ」
「あいつってあの妹かい?」
「違うよ。透馬の方」
「あら。やだよ」
何故か母ちゃんは顔を赤らめた。
「俺がおかしいのはわかってる。ずっと母ちゃんに結婚しないって言ってたのも。だから」
「忠敏?」
「あいつの側にいるって決めたんだ。俺が家出てくの許して」
「勝敏はさっさと出て行っちゃったし、私にはあんたしか残ってないんだよ。それが男を好きになるなんて。一体いつから」
「二十歳ぐらいの時からずっとだよ」
初めてのカミングアウトだった。
「それであんたはどうしたいんだい?」
「だから側にいるって」
「あんたそれでいいのかい? あの二人は兄弟でも愛しあっているんだろ」
「いいんだよ」
俺がそう決めたんだから。母ちゃんに何を言われても。
「あんたまさか邪魔する気じゃないだろうね」
「しないよ。それに二世帯とか、分かれて住むつもりだから。そうだ。母ちゃんも一緒に」
「私はこの家を動かないよ」
やっぱり母ちゃんはそうくるかと思った。
「あんたホントにそれでいいのかい? つらくなるんじゃないのかい?」
「それでも側にいるって決めたから」
「あんたがそんな風に言うなんてよっぽどなんだね。何にも執着がない子だと思ったけど」
確かに、どんなことにも執着は薄かった。母ちゃんには見透かされていたみたいだ。
「私はあんたがそうしたいなら止めないよ。ただ、途中で投げ出すんじゃないよ」
「うん。ありがとう」
「礼を言うようなことじゃないよ。あんたの人生だろ」
母ちゃんに背中を押され、藤越と一緒に暮らすことになった。最後に余計なことを言われたけど。
「あんたの部屋にあるいかがわしい本やビデオはちゃんと処分するんだよ」
ばれてたのかと思った。さすが母ちゃんだ。
「つらくなったら帰ってきていいからね。あんたの部屋そのままにしとくから」
「ああ。わかったよ」
家の外で二人は待ってた。
「もういいの?」
「ちゃんと言ったから、大丈夫だよ」
「何を?」
わかってるくせに聞くなよと思った。俺は耳打ちした。
「お前が好きって言ったんだよ」
藤越は無視して言った。
「愛良、行こう」
「うん」
無視するぐらいなら最初から聞くなと思った。
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