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第4章 藤越の妹「愛良ちゃん」
愛良ちゃん(1)
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ある時、中島が藤越の妹に会いたくないかとメールを送ってきて、俺は「は?」と思った。
以前に藤越が言っていたことを思い出した。妹、愛良ちゃんを置いてきた罪悪感からぼたんさんの店での源氏名にその名を使っていたという話を。
愛良ちゃんは藤越の十歳下だった。ちょうど愛良ちゃんが高校生になった頃、俺が二十六になった頃だった。
あまり気乗りはしなかったが、中島がしつこく誘うので、行ってみようかと思った。場所は藤越の家でというが、2DKほどの部屋にそんなに人数入るのだろうかと思った。
物を隣の部屋にどけたらしく、すっきりとしたダイニングの真ん中にちゃぶ台だけ置いてあった。俺が行った時はもうすでにキャパオーバーなぐらい人が集まっていた。
同居人の良和が一人せっせと働いていて、高校生ぐらいの女の子がそれを手伝っている。もしかしなくてもあれが愛良ちゃんだろう。愛良ちゃんは、藤越に結構びしっと言っていた。良和が働いているのに自分だけ座ったりなんてできないと。俺も何か手伝おうかと思ったが、家で母ちゃんの手伝いすらしたことがない俺には無理かもと思った。足手まといにしかならない。
さすがに運んだり調理している奴がいるのに先に食べたりはできなかった。酒は元々飲むつもりはなかった。他の奴らは気にせず飲み食いしていたが。
中島がこっちに来いと手招きしてくるので仕方なく近くに行くと、「愛良ちゃんって透馬さんに似てないよな」と言い出す。それがどうかしたのかと思った。
「残念だよな。正真正銘の女の子なのに」
俺は中島の意図に気付いて言った。
「消えろ」
「ちょっとそんな怒んなって。冗談だよ」
そう言われても全部無視した。愛良ちゃんが藤越に似てようが似てなかろうがどうでもいい。
人がもう開き直って、俺がいないところで勝手に生きててくれと思ってるのにそういう言い方をする奴とは話したくない。
俺が知らないうちに藤越は母親と和解し、妹と一緒に度々会うようになっていた。俺のいないところで勝手に変わっていくのは仕方がない。
飲み会の途中で藤越と愛良ちゃんが付き合っていると聞いた。冗談かと思った。妹と付き合ってるなんておかしいだろう。
愛良ちゃんが間違って酒を飲んで倒れた時、藤越はとても心配そうな顔をしていた。愛良ちゃんを愛おしそうに見つめていたのだ。藤越自身は無自覚だったのかもしれない。俺以外の周りも気付いて入るぐらいなのに。
あいつは普通の女を好きになれないんだろうか。元男とか、妹とかそんなのばっかで。俺も人のこと言えないけど、そう思った。
愛良ちゃんが目覚めず、終電の時間になったので、藤越は送っていくとおんぶして外に出た。
そこで俺も終電の時間だと気付いた。続けて外に出ようとすると中島に呼び止められる。
「今一緒に出たらまずいんじゃないか?」
「は?」
「ま、お前が邪魔したいなら止めないけど」
ただ単に終電に乗り遅れそうだから出ようとしただけなのに。
「知るかよ」
わざわざ二人と一緒に行動しようなんて考えていなかった。他の奴にも「馬に蹴られんなよ」とかなんとか言われた。それはきっと別の意味で言ったのだろうけど。
俺は全て無視して渋谷の二つ隣、駒場東大前に向かった。
以前に藤越が言っていたことを思い出した。妹、愛良ちゃんを置いてきた罪悪感からぼたんさんの店での源氏名にその名を使っていたという話を。
愛良ちゃんは藤越の十歳下だった。ちょうど愛良ちゃんが高校生になった頃、俺が二十六になった頃だった。
あまり気乗りはしなかったが、中島がしつこく誘うので、行ってみようかと思った。場所は藤越の家でというが、2DKほどの部屋にそんなに人数入るのだろうかと思った。
物を隣の部屋にどけたらしく、すっきりとしたダイニングの真ん中にちゃぶ台だけ置いてあった。俺が行った時はもうすでにキャパオーバーなぐらい人が集まっていた。
同居人の良和が一人せっせと働いていて、高校生ぐらいの女の子がそれを手伝っている。もしかしなくてもあれが愛良ちゃんだろう。愛良ちゃんは、藤越に結構びしっと言っていた。良和が働いているのに自分だけ座ったりなんてできないと。俺も何か手伝おうかと思ったが、家で母ちゃんの手伝いすらしたことがない俺には無理かもと思った。足手まといにしかならない。
さすがに運んだり調理している奴がいるのに先に食べたりはできなかった。酒は元々飲むつもりはなかった。他の奴らは気にせず飲み食いしていたが。
中島がこっちに来いと手招きしてくるので仕方なく近くに行くと、「愛良ちゃんって透馬さんに似てないよな」と言い出す。それがどうかしたのかと思った。
「残念だよな。正真正銘の女の子なのに」
俺は中島の意図に気付いて言った。
「消えろ」
「ちょっとそんな怒んなって。冗談だよ」
そう言われても全部無視した。愛良ちゃんが藤越に似てようが似てなかろうがどうでもいい。
人がもう開き直って、俺がいないところで勝手に生きててくれと思ってるのにそういう言い方をする奴とは話したくない。
俺が知らないうちに藤越は母親と和解し、妹と一緒に度々会うようになっていた。俺のいないところで勝手に変わっていくのは仕方がない。
飲み会の途中で藤越と愛良ちゃんが付き合っていると聞いた。冗談かと思った。妹と付き合ってるなんておかしいだろう。
愛良ちゃんが間違って酒を飲んで倒れた時、藤越はとても心配そうな顔をしていた。愛良ちゃんを愛おしそうに見つめていたのだ。藤越自身は無自覚だったのかもしれない。俺以外の周りも気付いて入るぐらいなのに。
あいつは普通の女を好きになれないんだろうか。元男とか、妹とかそんなのばっかで。俺も人のこと言えないけど、そう思った。
愛良ちゃんが目覚めず、終電の時間になったので、藤越は送っていくとおんぶして外に出た。
そこで俺も終電の時間だと気付いた。続けて外に出ようとすると中島に呼び止められる。
「今一緒に出たらまずいんじゃないか?」
「は?」
「ま、お前が邪魔したいなら止めないけど」
ただ単に終電に乗り遅れそうだから出ようとしただけなのに。
「知るかよ」
わざわざ二人と一緒に行動しようなんて考えていなかった。他の奴にも「馬に蹴られんなよ」とかなんとか言われた。それはきっと別の意味で言ったのだろうけど。
俺は全て無視して渋谷の二つ隣、駒場東大前に向かった。
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