33 / 46
第十一章
11-2
しおりを挟む
帰ろうとしたら、託に止められた。
「今日は泊まってきな」
僕は迷った。
「明日俺が会社ついてく」
「い、いいよ」
「あいつ多分懲りてないよ」
そんなのわかってたけど、託にこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない。
「仕事やめるから」
「何で簡単にそんなこと決めるの?」
だって目を付けられてしまったら逆らえるわけないから。
「鈴也の会社うちとも取引あるし、うちの方が大きいから、交渉できるって」
「交渉?」
そんなこと思いつきもしなかった。
「あんな男に鈴也がいいようにされるなんて我慢できない」
「でも」
託の立場だって悪くなるんじゃないかと思った。
「何でいつもそうなの? 鈴也のことなんだから、もっと怒ったら?」
「託にはわかんないよ。支配される側の気持ちなんて。Subになったことないんだから」
言ってしまった。こんな八つ当たりみたいなこと言いたくなかったのに。
「鈴也?」
「ご、ごめん」
こんなこと言うつもりじゃなかったのに。
「確かにそうだね」
「た、託」
怒られると思った。
「だから俺をいじめてたの?」
「え、あ」
託の目をそらすことができない。
「支配される側の気持ちをわからせようとした?」
「違う」
ただ怖かった。何も抵抗できずに支配されてしまうと思うと怖かったのだ。
「ごめん。ごめんなさい」
「謝ってほしいわけじゃない」
射貫くような目で見つめられた。再会した時みたいだった。
「Subのことちゃんと理解したいから」
「教えて」
託はそのつもりなかったんだろうけど、少しグレアがもれていた。
「支配される側だなんて認めたくなくて、託にだけは支配されたくなかった」
口から勝手に漏れる言葉に驚いた。言葉が止まらない。どうしよう。
「逆に託を支配したかった。僕は託が」
「黙って」
託の命令に僕の言葉が止まった。
僕、今何を言おうとしてた?
「鈴也、ごめん」
託が謝り、我に返った。
「言わせる気だったわけじゃないんだ」
黙れと言われたから何も言えない。
「いい子」
頭を撫でられた。
「楽にしていいよ。もうコマンドは終わり」
ふわっと力が抜けた。
「託?」
「ただ知りたかったんだ。鈴也が何を考えてたか。でも、無理矢理言わせるもんじゃないね。ごめん」
謝る必要なんかないのに。
本当は言ってしまいたかった。命令で言わせられたら言い訳できるから。
僕は自分の卑怯な考えに愕然とした。
「とにかく今日は泊まってきな。もうだいぶ遅いし」
そういえば、託の家に泊まるかどうかって話から発展したのだと思い出した。
「うん」
泊まることに抵抗はない。ただ、会社に着いてきてもらうなんて子供みたいだと思った。社会人3年目で、とっくに自立した大人なのに。
「今日は泊まってきな」
僕は迷った。
「明日俺が会社ついてく」
「い、いいよ」
「あいつ多分懲りてないよ」
そんなのわかってたけど、託にこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない。
「仕事やめるから」
「何で簡単にそんなこと決めるの?」
だって目を付けられてしまったら逆らえるわけないから。
「鈴也の会社うちとも取引あるし、うちの方が大きいから、交渉できるって」
「交渉?」
そんなこと思いつきもしなかった。
「あんな男に鈴也がいいようにされるなんて我慢できない」
「でも」
託の立場だって悪くなるんじゃないかと思った。
「何でいつもそうなの? 鈴也のことなんだから、もっと怒ったら?」
「託にはわかんないよ。支配される側の気持ちなんて。Subになったことないんだから」
言ってしまった。こんな八つ当たりみたいなこと言いたくなかったのに。
「鈴也?」
「ご、ごめん」
こんなこと言うつもりじゃなかったのに。
「確かにそうだね」
「た、託」
怒られると思った。
「だから俺をいじめてたの?」
「え、あ」
託の目をそらすことができない。
「支配される側の気持ちをわからせようとした?」
「違う」
ただ怖かった。何も抵抗できずに支配されてしまうと思うと怖かったのだ。
「ごめん。ごめんなさい」
「謝ってほしいわけじゃない」
射貫くような目で見つめられた。再会した時みたいだった。
「Subのことちゃんと理解したいから」
「教えて」
託はそのつもりなかったんだろうけど、少しグレアがもれていた。
「支配される側だなんて認めたくなくて、託にだけは支配されたくなかった」
口から勝手に漏れる言葉に驚いた。言葉が止まらない。どうしよう。
「逆に託を支配したかった。僕は託が」
「黙って」
託の命令に僕の言葉が止まった。
僕、今何を言おうとしてた?
「鈴也、ごめん」
託が謝り、我に返った。
「言わせる気だったわけじゃないんだ」
黙れと言われたから何も言えない。
「いい子」
頭を撫でられた。
「楽にしていいよ。もうコマンドは終わり」
ふわっと力が抜けた。
「託?」
「ただ知りたかったんだ。鈴也が何を考えてたか。でも、無理矢理言わせるもんじゃないね。ごめん」
謝る必要なんかないのに。
本当は言ってしまいたかった。命令で言わせられたら言い訳できるから。
僕は自分の卑怯な考えに愕然とした。
「とにかく今日は泊まってきな。もうだいぶ遅いし」
そういえば、託の家に泊まるかどうかって話から発展したのだと思い出した。
「うん」
泊まることに抵抗はない。ただ、会社に着いてきてもらうなんて子供みたいだと思った。社会人3年目で、とっくに自立した大人なのに。
0
お気に入りに追加
224
あなたにおすすめの小説

こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

待てって言われたから…
ふみ
BL
Dom/Subユニバースの設定をお借りしてます。
//今日は久しぶりに津川とprayする日だ。久しぶりのcomandに気持ち良くなっていたのに。急に電話がかかってきた。終わるまでstayしててと言われて、30分ほど待っている間に雪人はトイレに行きたくなっていた。行かせてと言おうと思ったのだが、会社に戻るからそれまでstayと言われて…
がっつり小スカです。
投稿不定期です🙇表紙は自筆です。
華奢な上司(sub)×がっしりめな後輩(dom)

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

お兄ちゃんはお医者さん!?
すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。
如月 陽菜(きさらぎ ひな)
病院が苦手。
如月 陽菜の主治医。25歳。
高橋 翔平(たかはし しょうへい)
内科医の医師。
※このお話に出てくるものは
現実とは何の関係もございません。
※治療法、病名など
ほぼ知識なしで書かせて頂きました。
お楽しみください♪♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる