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第七章
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公園を出て歩いていたら、ふと前の方を歩いている人影が気になった。まさか託? 後ろ姿が似ている。
中学校の方に向かって歩いているようだ。つい後を付けてしまった。
その人影は、中学校の入口で止まり、しばらく校舎を見ていた。
その後、突然踵を返して僕の方に向かって来た。やっぱり託だ。
やばい。気付かれる。そう思って急いで歩くが、焦って少し躓いてしまった。
相手との距離を確認しようと後ろを振り向くと、
「鈴也?」
と声をかけられてしまった。
仕事だと言っていたのに。嘘をついたのがバレてしまう。
託は僕の前に近付いてきた。
「何でいるの?」
「その、つまり、」
言ったら嫌な思いをさせるかと思って黙っていたが、こんなとこで偶然会うなら最初から言えば良かったと後悔した。
「ごめん」
託は僕を見てため息をついた。
「帰ってたの?」
「託の方こそ」
用事としか聞いていないのだから、実家に帰るなんて知らなかった。
「俺に気遣って言わなかった?」
「うっ。ごめん」
「謝るなって言ったよね」
また墓穴を掘ってしまい、無意識で後ずさった。
「何でここ来たの?」
託が自ら中学校に来るなんておかしいと思って聞いてみた。
「中学校嫌じゃないの?」
そしたら聞き返された。
「鈴也は?」
答えられるわけなくて、うつむいてしまった。
「罪悪感とか、懺悔とか、そんな理由でプレイしてるわけ?」
顔を上げられない。託の言うことはいつも頭の片隅にあったから。
「答えないんだ」
「託」
いざとなったらコマンドで口を割らせることもできるのに。それをしない。いっそそうしてくれた方が……。
そう思って愕然とした。そんな考えはずるい。
「託はどうして。恨んでないの?」
「恨んで、蔑んで、蹂躙してほしいの?」
唇に唇が近付いてきて、軽く噛まれた。
「託」
痛いけど、それより心が苦しい。
「それで罪悪感をごまかそうとしてるわけ?」
「違う」
違うんだ。もちろんゼロじゃないけど、ただ一緒に、側にいたいだけで。
口にすることができない。拒絶されたら、断られたらそこで終わってしまう。
「託じゃないと、他の奴嫌だ」
そんなこと言っても仕方ないのに。
「鈴也」
つい託に抱きついてしまい、涙まで出てきた。
お願い。見捨てないで。
口にできない言葉が涙となって流れていく。
背中をポンポンやられた。
中学校の方に向かって歩いているようだ。つい後を付けてしまった。
その人影は、中学校の入口で止まり、しばらく校舎を見ていた。
その後、突然踵を返して僕の方に向かって来た。やっぱり託だ。
やばい。気付かれる。そう思って急いで歩くが、焦って少し躓いてしまった。
相手との距離を確認しようと後ろを振り向くと、
「鈴也?」
と声をかけられてしまった。
仕事だと言っていたのに。嘘をついたのがバレてしまう。
託は僕の前に近付いてきた。
「何でいるの?」
「その、つまり、」
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「ごめん」
託は僕を見てため息をついた。
「帰ってたの?」
「託の方こそ」
用事としか聞いていないのだから、実家に帰るなんて知らなかった。
「俺に気遣って言わなかった?」
「うっ。ごめん」
「謝るなって言ったよね」
また墓穴を掘ってしまい、無意識で後ずさった。
「何でここ来たの?」
託が自ら中学校に来るなんておかしいと思って聞いてみた。
「中学校嫌じゃないの?」
そしたら聞き返された。
「鈴也は?」
答えられるわけなくて、うつむいてしまった。
「罪悪感とか、懺悔とか、そんな理由でプレイしてるわけ?」
顔を上げられない。託の言うことはいつも頭の片隅にあったから。
「答えないんだ」
「託」
いざとなったらコマンドで口を割らせることもできるのに。それをしない。いっそそうしてくれた方が……。
そう思って愕然とした。そんな考えはずるい。
「託はどうして。恨んでないの?」
「恨んで、蔑んで、蹂躙してほしいの?」
唇に唇が近付いてきて、軽く噛まれた。
「託」
痛いけど、それより心が苦しい。
「それで罪悪感をごまかそうとしてるわけ?」
「違う」
違うんだ。もちろんゼロじゃないけど、ただ一緒に、側にいたいだけで。
口にすることができない。拒絶されたら、断られたらそこで終わってしまう。
「託じゃないと、他の奴嫌だ」
そんなこと言っても仕方ないのに。
「鈴也」
つい託に抱きついてしまい、涙まで出てきた。
お願い。見捨てないで。
口にできない言葉が涙となって流れていく。
背中をポンポンやられた。
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