15 / 46
第六章
6-1
しおりを挟む
その週の週末の金曜日。プレイの後託に泊まっていくかと聞かれて、答に窮した。
もちろん泊まりたい。だけど、託に迷惑をかけたらと思うと簡単に頷けない。
せめて何か役に立ちたい。
「朝ごはん作ってもいい?」
「いいけど」
託の家の冷蔵庫の中身を確認した。
食パンと牛乳と卵があった。
フレンチトーストでも作ろう。
「風呂入る?」
そういえばいつも帰ってからシャワーを浴びていたから、託の家で入るのは初めてだった。
「先どうぞ」
と託に告げると、
「一緒に入る?」
と聞かれて焦った。
「え? 何言って」
自分の顔がみるみるほてり出したのを感じる。託に見られてうつむいた。
「僕後でいいから、先入って」
託を無理矢理風呂に押しやってため息をついた。
託がそんなこと言うなんて。僕をからかっているのだろうか。
そこで重大なことに気付いた。ベッドは1つしかない。一緒に寝るなんて絶対無理。眠れないに決まってる。
この家にソファーはないが、リクライニングの椅子が1つあった。今日はそこで寝ようと思った。
風呂を借りた後、託に恐る恐る告げた。
「僕、椅子でいいから」
「体痛くなるよ」
「だってそんな」
一緒に寝るなんて恥ずかし過ぎる。
託のベッドは普通のシングルよりちょっとだけ広いけど、だからといって近付かずには寝られない。
「床とかでも別に」
そう言ったら託に聞かれてしまった。
「そんなに嫌なの?」
僕は焦った。今度こそちゃんと言わないと。
「違う」
「鈴也?」
「嫌じゃない」
嫌じゃないけど、色々な意味でやばいんだって。
「じゃあベッドで寝よう」
あっさり言われて二の句が継げない。託は何で平気なんだろう。意識してるのは自分だけだと思うとそれも悲しかった。
押し切られて仕方なく一緒にベッドに入った。
託と向き合って横になると、とたん意識してしまう。心臓の音がうるさい。聞かれたらやばいのに。
「鈴也?」
「託の方こそ嫌じゃないの?」
「何で?」
俺たちってどういう関係? パートナーでもない。ただプレイをするだけだ。なのに泊まったりして。
「どうして僕とプレイしてくれるの?」
僕はつい聞いてしまった。
「嫌なの?」
「そうじゃなくて」
「他にいないんでしょ?」
「うん」
いないんじゃなくて、託がいいんだ。
「託は?」
「嫌じゃないよ」
そうじゃなくて、他にいるの? なんて聞けなかった。
心臓の音が鳴り止まない。そのうちに託は僕と逆の方を向いた。僕はほっとしながらも、寂しい気持ちになった。
側にいられるだけでいいと思ったのに、もっと欲張りになる自分に困惑した。
うっすら目を閉じ、うるさい心臓を落ち着かせようと深く息を吸って吐く。
うとうとして気付いたら眠っていた。
もちろん泊まりたい。だけど、託に迷惑をかけたらと思うと簡単に頷けない。
せめて何か役に立ちたい。
「朝ごはん作ってもいい?」
「いいけど」
託の家の冷蔵庫の中身を確認した。
食パンと牛乳と卵があった。
フレンチトーストでも作ろう。
「風呂入る?」
そういえばいつも帰ってからシャワーを浴びていたから、託の家で入るのは初めてだった。
「先どうぞ」
と託に告げると、
「一緒に入る?」
と聞かれて焦った。
「え? 何言って」
自分の顔がみるみるほてり出したのを感じる。託に見られてうつむいた。
「僕後でいいから、先入って」
託を無理矢理風呂に押しやってため息をついた。
託がそんなこと言うなんて。僕をからかっているのだろうか。
そこで重大なことに気付いた。ベッドは1つしかない。一緒に寝るなんて絶対無理。眠れないに決まってる。
この家にソファーはないが、リクライニングの椅子が1つあった。今日はそこで寝ようと思った。
風呂を借りた後、託に恐る恐る告げた。
「僕、椅子でいいから」
「体痛くなるよ」
「だってそんな」
一緒に寝るなんて恥ずかし過ぎる。
託のベッドは普通のシングルよりちょっとだけ広いけど、だからといって近付かずには寝られない。
「床とかでも別に」
そう言ったら託に聞かれてしまった。
「そんなに嫌なの?」
僕は焦った。今度こそちゃんと言わないと。
「違う」
「鈴也?」
「嫌じゃない」
嫌じゃないけど、色々な意味でやばいんだって。
「じゃあベッドで寝よう」
あっさり言われて二の句が継げない。託は何で平気なんだろう。意識してるのは自分だけだと思うとそれも悲しかった。
押し切られて仕方なく一緒にベッドに入った。
託と向き合って横になると、とたん意識してしまう。心臓の音がうるさい。聞かれたらやばいのに。
「鈴也?」
「託の方こそ嫌じゃないの?」
「何で?」
俺たちってどういう関係? パートナーでもない。ただプレイをするだけだ。なのに泊まったりして。
「どうして僕とプレイしてくれるの?」
僕はつい聞いてしまった。
「嫌なの?」
「そうじゃなくて」
「他にいないんでしょ?」
「うん」
いないんじゃなくて、託がいいんだ。
「託は?」
「嫌じゃないよ」
そうじゃなくて、他にいるの? なんて聞けなかった。
心臓の音が鳴り止まない。そのうちに託は僕と逆の方を向いた。僕はほっとしながらも、寂しい気持ちになった。
側にいられるだけでいいと思ったのに、もっと欲張りになる自分に困惑した。
うっすら目を閉じ、うるさい心臓を落ち着かせようと深く息を吸って吐く。
うとうとして気付いたら眠っていた。
0
お気に入りに追加
221
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる